解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流

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第1章 守護龍の謎

第4話 ドラゴンスレイヤー

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「フラウ、大丈夫か?」
「はい……ありがとうございます……」

 フラウは呆然としていたが、やがてハッとした様子になり慌てて立ち上がろうとした。だが、やはり足元が覚束おぼつかないようで、すぐに座り込んで。

「す、すみません。私のせいで……」
「いや、これは俺の問題だったからな」
「あの人はロイの知り合いですか?」
「知り合いというか……なんというか」

 俺はフラウに、洞窟に放置された経緯けいいを話した。解呪の能力を持つ俺がSランクパーティーに勧誘されたこと。宝箱を解呪した瞬間に彼らから追放を宣告され、フラウの元に迷い込んでしまったこと。ちなみにフラウが邪龍の姿をしていたことは伏せた。
 優しい彼女のことだから、きっと自分が邪龍として暴れていたことを知ったらショックを受けるだろう。

「なるほど、そんなことが……ロイも辛い思いをしているのですね」
「まあそういうわけだから、あいつらにはもう会いたくないし、できれば早くここから離れたいな」
「わかりました。では宿を探しましょう」
「ああ」

 俺はフラウを背負って宿探しを続けた。幸いすぐに見つかって、部屋を取ることができた。俺はフラウをベッドに寝かせると、彼女に尋ねた。

「なあ、これからどうする? とりあえず誰かいいプリーストにでも診てもらって、怪我治してもらうか?」
「いえ、治療を受けるということは私がドラゴンであることを明かさなければいけません。……それは危険でしょう?」
「確かに、世の中じゃあドラゴンっていったら凶悪で危険な存在っていうのが一般認識だからなぁ」

 俺が腕組みしながら言うと、フラウも同意するように深くうなずいた。

「それに、私は何故人々がドラゴンライダーの存在を忘れ去っているのか知りたい。……それまではできるだけ人間の姿でいようと思います」
「そうか」

 俺が納得するとフラウはなにか期待するような目をしながら問いかけてきた。

「ロイはどうしますか?」
「そうだな。正直、俺はさっきのやつに仕返しできて満足したから今は特に考えてないな。……またどこかのパーティーに入るか」
「私と一緒にいてくれないんですか……?」

 懇願するように俺を見つめてくるフラウは、弱っているせいか妙に色っぽく、不覚にもドキッとしてしまった。

「……ドラゴンライダーとドラゴンは一緒にいるものなんだろ?」
「はい!」

 俺の言葉にフラウはパッと顔を輝かせた。

「そんな顔されたら断れないっての。まあ、契約した時からそのつもりだったさ。どうせやりたいこともないし、お前に酷いことした奴に物申したい気もするし。俺もフラウを手伝うよ」
「やっぱり、ロイを契約相手に選んでよかったです!」

 いいように利用されている気もしたが、フラウが満面の笑みを浮かべるので、こんなに喜んで貰えるなら別に利用されてもいいかなと思ってしまうのだった。


 ***


 ここは王宮。絢爛豪華けんらんごうか謁見えっけんの間に、国王のヨアヒム1世が座していた。彼は立派な体格に立派な口ひげをたくわえた中年男であり、威厳いげんのある風貌ふうぼうをしている。

 玉座の前には鎧を着た青年が立っていた。そして、何かを小声で国王に報告しているようである。

「──ほう、大司教がそう申しているのか」
「はい、女神様のお告げによると、邪龍の封印が解かれたと……」

 青年の言葉を聞いて、ヨアヒムは眉を上げた。

「預言書のとおりだな。だが、こちらも準備は整えてある。──すぐに彼を、『龍殺しドラゴンスレイヤー』を呼べ。封印では生ぬるい、今度こそわしの手で邪龍をほうむってくれようぞ」
「承知いたしました」

 青年はうやうやしく頭を下げると、きびすを返して去っていった。その後ろ姿を見ながら、ヨアヒムはほくそ笑んだ。

「ふっ、これでやっと我ら王家の長年の悲願が達成される時が来たようだ。あの忌々いまいまししい邪龍め、この世界に災厄さいやくをもたらした報いを受けさせてくれる……」

 しばらくして、謁見の間に冒険者風の大男が現れた。皮の鎧は年季が入っていて貧相だったが、その厚い胸板とスキンヘッド、そして背中に担いだ恐ろしいほど大きな大剣が目を引く。

「お呼びですかな? 国王陛下?」

 大男はヨアヒムに向けて頭を垂れた。

「現れたか『龍殺しドラゴンスレイヤー』──シドニウス・クロネッカーよ」
「オレが呼ばれたということは、邪龍が復活したということですな?」
「うむ。貴様には早速その邪龍の討伐を頼みたい。幸いまだ封印が解けて間もないとのこと。本調子には程遠ほどとおいだろう。──見つけ出して殺せ。契約者がいた場合はそいつも殺して良い」
「はっ、このシドニウスにお任せ下さい。必ずやかの悪逆非道にして残虐無比たる邪龍を、この退龍剣『アスカロン』で討ち果たしてくれましょうぞ」

 シドニウスは巨大な剣を掲げて高々と宣言する。その姿はまさに英雄と呼ぶに相応しい堂々たるものだった。

「頼もしいな。期待しているぞ、シドニウス。報酬は弾もう」
「はっ、ありがたき幸せ! では行って参ります!」

 シドニウスはもう一度深々く礼をしてその場を後にした。

「さて、これで然るべき後にシドニウスを始末してしまえば、晴れて儂は国を救った英雄。王国は安泰あんたいというわけだ」

 ヨアヒムは独り言のように呟いた後、邪悪な笑みを浮かべたのだった。

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