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♡もふもふショタっ子と第1回イベント1日目♡
私の友人はサイコパス!
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◇ ◆ ◇
「VRゲームの世界でさ。こう、ギュンギュンって流れるように動くって、どうすればいいのかなー? やっぱり、リアルで運動とか……しないといけないのかなー?」
――翌日
私は放課後、隣の席の栗木(くりき) 枇奈(ひな)ちゃんになんとなく話しかけた。彼女は私と隣の席っていうだけで話すようになった関係で、見た目は……黒い前髪を目にかかりそうなほど伸ばしているしどこか近寄り難いオーラを放っているのでちょっと怖い。
でも、話してみたら割といい子で、どこか放っておけない感じがする――保護欲を掻き立てられる女の子だった。
なので、休み時間とか放課後とか、希歩(のあ)ちゃんがいない時にはちょくちょく話すようになって、気づいたらヒナちゃんが得意なゲームの話とかもするようになった。今では『ヒナちゃん』『ココちゃん』と呼び合う仲だ。
「うーん、そうやって反射神経を鍛える人もいるけど……ココちゃんは後衛職だったらあまり気にしなくてもいいと思う……」
「そうも言ってられないんだよね……特にPvPとかだと、相手の動きが追えないと対応が遅れることもあるし」
私は昨日の1回戦の後、2回戦3回戦と、ミルクちゃんに【変身】で相手を倒してもらって勝利した。弱体化しているとはいえ『邪龍』のミルクちゃんに敵う初心者はなかなかいないようで、私は結局1回戦目で恥を晒しただけで、ほとんど何もせずにイベント1日目は終了した。
でもそれは対戦相手が『戦士』や『魔法使い』みたいなあまり素早さの高くないジョブで、かつ二人ともミルクちゃんにばかり気を取られていたので勝てたというラッキーな部分があって……例えば『アサシン』みたいなジョブの人が真っ直ぐ私を狙ってきたら……絶対に勝てない。だから、ゲーム内の素早さのステータスをリアルの反射神経とかでカバーできたらなって思ったんだけど……。
「反射神経だけ鍛えても、どうにもならないこともあるしね。例えば――」
ヒナちゃんの前髪で半分隠れた表情に、意味深な笑みが浮かぶ。
「――っ!?」
「はい、ココちゃん今死にましたー」
気づいたら私の首筋に冷たい感触があって、私は瞬時に硬直してしまった。息すらもできないほどの殺気が、ブワッとヒナちゃんから溢れ――スーッと引いていく。
まるで『アサシン』だ……そう思った。
「――て感じで、人間は意識を向けていないところで起こっていることはなかなか対応できないの」
「……」
首筋の冷たい感触がジリジリと移動していき、私の喉元からそのまま下に下がって胸元の辺りで円を描く。見下ろすと、ヒナちゃんは右手で金属製の高そうなシャープペンシルを持ち、その尻の部分で私の頂点付近を突っついていた。怖いと思ったらこういう変態的なことをすることもあるし――ヒナちゃんの事はまだまだよく分からない。
私はヒナちゃんのシャープペンシルを左手で払いのけると、お返しとばかりに右手に持った自分のシャープペンシルで彼女の胸を突っついてやろうとした。
――パシッ
しかし、私の攻撃は呆気なくヒナちゃんの左手の人差し指と中指で白刃取りの要領で防がれてしまった。――やっぱり『アサシン』だ。
「予測していればこうやって防げる。――要は慣れなんだよ」
「慣れ?」
「自分がこう動いたら相手はこう動くだろうな、とか。そういうことをある程度予測して戦うの。――慣れるには場数を踏むしかないから、たくさん戦って、たくさん負けて強くなるんだよ……」
「……うん」
慣れかぁ……昨日のホムラちゃんやセレナちゃんの動きは一朝一夕で身につくものではないらしい。確かに言われてみればあの二人も次に相手がどう動くのか予測しながら動いていたような気もするし、その上でホムラちゃんの予測を上回ったセレナちゃんが勝利したような……私の最強への道はまだまだ遠そうだ。
「『トロイメ杯』、勝ち残ってるんでしょ……? わたしもPN(プレイヤーネーム)は明かさないけど初心者枠で参加してるから、どこかで会ったらお手柔らかに……ね?」
ヒナちゃんはバイバイと手を振るとスクールバッグを肩に担ぐ。その拍子に彼女の袖が捲れて、何本もの赤い線が入った華奢な手首が露わになる。
そう、私がヒナちゃんを放っておけない理由は――怖いけど、適度に構ってあげないと彼女が何かとんでもない過ちを犯しそうで……そんな感じ危なっかしさなのだった。
袖を直して傷だらけの手首を隠すと、ヒナちゃんは私にニコッと笑いかけて教室を出ていく。
「……ふぅ、さぁ帰ろう帰ろう」
帰り支度をしながら、私は手や背中が冷や汗でびっしょりになっていることに気づいた。
……ヒナちゃん。
これは対戦することになったら絶対勝てないな……。
どうか当たりませんように。
◇ ◆ ◇
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【トロイメ杯】優勝者予想スレ
54.名無しさん
ベータテスター枠は、ホムラちゃんが負けたなら、セレナちゃん、たろうまる、サキ、ソラニキあたりが本命じゃねwww
57.名無しさん
>>54
わかりみ
58.名無しさん
初心者枠、ココアちゃそ快進撃の模様www
59.名無しさん
>>58
でも優勝は難しいと思われ
61.名無しさん
>>59
初心者の中にも他のゲームでPvPを鍛えたエセ初心者とか、ベータテスターとパーティを組んでガンガンレベル上げてるやつらいるしなwww
62.名無しさん
ココアちゃんがんばえーwww
63.名無しさん
またココアちゃんの自爆が見れるといいな
65.名無しさん
>>63
それなwww
「VRゲームの世界でさ。こう、ギュンギュンって流れるように動くって、どうすればいいのかなー? やっぱり、リアルで運動とか……しないといけないのかなー?」
――翌日
私は放課後、隣の席の栗木(くりき) 枇奈(ひな)ちゃんになんとなく話しかけた。彼女は私と隣の席っていうだけで話すようになった関係で、見た目は……黒い前髪を目にかかりそうなほど伸ばしているしどこか近寄り難いオーラを放っているのでちょっと怖い。
でも、話してみたら割といい子で、どこか放っておけない感じがする――保護欲を掻き立てられる女の子だった。
なので、休み時間とか放課後とか、希歩(のあ)ちゃんがいない時にはちょくちょく話すようになって、気づいたらヒナちゃんが得意なゲームの話とかもするようになった。今では『ヒナちゃん』『ココちゃん』と呼び合う仲だ。
「うーん、そうやって反射神経を鍛える人もいるけど……ココちゃんは後衛職だったらあまり気にしなくてもいいと思う……」
「そうも言ってられないんだよね……特にPvPとかだと、相手の動きが追えないと対応が遅れることもあるし」
私は昨日の1回戦の後、2回戦3回戦と、ミルクちゃんに【変身】で相手を倒してもらって勝利した。弱体化しているとはいえ『邪龍』のミルクちゃんに敵う初心者はなかなかいないようで、私は結局1回戦目で恥を晒しただけで、ほとんど何もせずにイベント1日目は終了した。
でもそれは対戦相手が『戦士』や『魔法使い』みたいなあまり素早さの高くないジョブで、かつ二人ともミルクちゃんにばかり気を取られていたので勝てたというラッキーな部分があって……例えば『アサシン』みたいなジョブの人が真っ直ぐ私を狙ってきたら……絶対に勝てない。だから、ゲーム内の素早さのステータスをリアルの反射神経とかでカバーできたらなって思ったんだけど……。
「反射神経だけ鍛えても、どうにもならないこともあるしね。例えば――」
ヒナちゃんの前髪で半分隠れた表情に、意味深な笑みが浮かぶ。
「――っ!?」
「はい、ココちゃん今死にましたー」
気づいたら私の首筋に冷たい感触があって、私は瞬時に硬直してしまった。息すらもできないほどの殺気が、ブワッとヒナちゃんから溢れ――スーッと引いていく。
まるで『アサシン』だ……そう思った。
「――て感じで、人間は意識を向けていないところで起こっていることはなかなか対応できないの」
「……」
首筋の冷たい感触がジリジリと移動していき、私の喉元からそのまま下に下がって胸元の辺りで円を描く。見下ろすと、ヒナちゃんは右手で金属製の高そうなシャープペンシルを持ち、その尻の部分で私の頂点付近を突っついていた。怖いと思ったらこういう変態的なことをすることもあるし――ヒナちゃんの事はまだまだよく分からない。
私はヒナちゃんのシャープペンシルを左手で払いのけると、お返しとばかりに右手に持った自分のシャープペンシルで彼女の胸を突っついてやろうとした。
――パシッ
しかし、私の攻撃は呆気なくヒナちゃんの左手の人差し指と中指で白刃取りの要領で防がれてしまった。――やっぱり『アサシン』だ。
「予測していればこうやって防げる。――要は慣れなんだよ」
「慣れ?」
「自分がこう動いたら相手はこう動くだろうな、とか。そういうことをある程度予測して戦うの。――慣れるには場数を踏むしかないから、たくさん戦って、たくさん負けて強くなるんだよ……」
「……うん」
慣れかぁ……昨日のホムラちゃんやセレナちゃんの動きは一朝一夕で身につくものではないらしい。確かに言われてみればあの二人も次に相手がどう動くのか予測しながら動いていたような気もするし、その上でホムラちゃんの予測を上回ったセレナちゃんが勝利したような……私の最強への道はまだまだ遠そうだ。
「『トロイメ杯』、勝ち残ってるんでしょ……? わたしもPN(プレイヤーネーム)は明かさないけど初心者枠で参加してるから、どこかで会ったらお手柔らかに……ね?」
ヒナちゃんはバイバイと手を振るとスクールバッグを肩に担ぐ。その拍子に彼女の袖が捲れて、何本もの赤い線が入った華奢な手首が露わになる。
そう、私がヒナちゃんを放っておけない理由は――怖いけど、適度に構ってあげないと彼女が何かとんでもない過ちを犯しそうで……そんな感じ危なっかしさなのだった。
袖を直して傷だらけの手首を隠すと、ヒナちゃんは私にニコッと笑いかけて教室を出ていく。
「……ふぅ、さぁ帰ろう帰ろう」
帰り支度をしながら、私は手や背中が冷や汗でびっしょりになっていることに気づいた。
……ヒナちゃん。
これは対戦することになったら絶対勝てないな……。
どうか当たりませんように。
◇ ◆ ◇
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57.名無しさん
>>54
わかりみ
58.名無しさん
初心者枠、ココアちゃそ快進撃の模様www
59.名無しさん
>>58
でも優勝は難しいと思われ
61.名無しさん
>>59
初心者の中にも他のゲームでPvPを鍛えたエセ初心者とか、ベータテスターとパーティを組んでガンガンレベル上げてるやつらいるしなwww
62.名無しさん
ココアちゃんがんばえーwww
63.名無しさん
またココアちゃんの自爆が見れるといいな
65.名無しさん
>>63
それなwww
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