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第一章
艶めかしい雰囲気
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「ふふっ、よかった」
そんなセレニアの様子を見つめ、ジュードはにっこりと笑ってそう声をかけてくる。その笑みが何処となく輝かしく見えてしまって、セレニアの胸の中にどうしようもない感情が芽生えていく。
しかし、それを押し殺すように首をゆるゆると横に振っていれば、不意にジュードの顔がセレニアの目の前にある。驚いて小さく「きゃっ」と声を上げれば、ジュードはそのままセレニアの顔に自身の顔を近づけて――唇の端を舌で舐める。
「っつ!」
驚いてジュードから逃げようとするものの、ジュードの手はセレニアの後頭部を掴む。そして、そのまま彼はセレニアに触れるだけの口づけを数回落としてくる。
「んんっ」
角度を変えて行われる口づけに、脳内がくらくらする。そう思い身体から力を抜けば、セレニアの後頭部を掴んでいたジュードの手がいつの間にかセレニアの腰に添えられている。
セレニアがソファーの背もたれに頭を預け、うっとりとしたような目でジュードのことを見上げれば、彼はくすくすと声を上げて笑っていた。
「セレニアは可愛らしいね」
その後、耳元で告げられるそんな甘ったるい言葉。その言葉に心臓がドクンと大きな音を立てる。鼓動が駆け足になり、身体の芯が熱くなっていくような感覚に襲われた。
「唇の端にジャムが付いていたから、ちょっと悪戯したんだけれど……うん、やっぱり俺も我慢できそうにないかも」
ジュードは何でもない風にそう告げると、立ち上がりセレニアのことを横抱きにする。突然宙に浮いた身体に驚いていれば、彼は何でもない風にセレニアの身体を寝台に運んでいく。
「ちょ、まっ!」
待って。そう言おうとしたのに、ジュードは「セレニアが可愛らしいのが悪い」という見事な責任転嫁を披露し、セレニアの身体を寝台に優しく寝かせる。その後、彼はセレニアの身体に覆いかぶさるように寝台に乗り上げてきた。巨大な寝台は、大人二人が乗ったところでびくともいない。
「……」
じっとセレニアがジュードの漆黒色の目を見つめていれば、彼は「……見つめられるの、結構ぐっとくるものがあるね」と言いながらセレニアの唇にもう一度口づけてくる。
もう一度触れるだけの口づけを繰り返したかと思えば、今度はセレニアのうっすらと開いた唇にジュードの舌が差し込まれる。その舌は甘ったるい味がするようであり、きっと先ほど食べたクッキーの味なのだろう。
「んんっ、んぅ……」
ぼんやりとする脳内でそう思っていても、意識は口づけに引っ張り戻される。口蓋を舐められたかと思えば、その舌はセレニアの歯列を舐める。頬の内側をつつかれ、舌を吸われる。
抵抗する気力も徐々に失われ、セレニアは腕をシーツの上に投げ出した。
(ぁ)
口づけされていると、身体の奥がゾクゾクとする。どうしようもない感覚が背筋を伝って、どうしようもなく身体が熱くなる。ジュードの指がセレニアの身体をなぞるように伝い、触れられた箇所がじんじんと熱を持つような感覚だった。
(……おかしい)
どうして、自分の身体はこんな口づけだけで反応しているのだろうか。セレニアはそんなことを思ってしまうが、口元から聞こえてくるぐちゅぐちゅという水音がひどく淫靡に聞こえてしまい、耳をふさぎたい衝動に襲われてしまった。けれど、そんなことをするわけにはいかない。そんな気持ちだけでジュードの口づけを受け入れていく。
「んんっ、んぅ……」
他人の舌が口内にあるというのはひどく不思議な感覚だった。それに翻弄されながらセレニアが身を震わせていれば、ようやくジュードの唇がセレニアから離れていく。体感時間で一時間以上に感じられた口づけは、セレニアの脳内から冷静な判断力を奪っていた。
「……セレニア」
セレニアのナイトドレスに垂れた唾液を指で拭いながら、ジュードが名前を呼んでくれる。先ほどまで仲良く食事をしていたとは思えないほどの雰囲気の艶っぽさに、セレニアは息を呑んだ。
(……これから)
これから、形式的な初夜が始まるのだ。それを実感しセレニアが息を呑めば、ジュードの手がセレニアのナイトドレスにかけられる。
その手はボタンをぷつり、ぷつりと外していく。こういう際に使用されるナイトドレスは前をボタンで留めただけのシンプルなものだ。だから、とても脱がせやすい構造をしている。その所為で、セレニアはあっという間に身体をジュードの眼下に晒してしまった。
「きれいな身体、しているね」
セレニアの身体を見下ろし、ジュードはそんな感想を零す。その感想がどうしようもないほどくすぐったく感じられて、セレニアが身をよじる。しかし、ジュードは「隠さないでね」と言ってセレニアの身体をそっと元の体勢に戻してしまった。
「……み、みな、いで……」
先ほどまで食事をしていたということもあり、まだ灯りがともっている。それを指摘すれば、ジュードは「じゃあ、消そうか」と言って灯りをあっさりと消してしまった。
ともっているのはオレンジ色の小さな灯りだけ。それに満足気に頷くと、ジュードはセレニアの首筋に舌を這わせてくる。
そんなセレニアの様子を見つめ、ジュードはにっこりと笑ってそう声をかけてくる。その笑みが何処となく輝かしく見えてしまって、セレニアの胸の中にどうしようもない感情が芽生えていく。
しかし、それを押し殺すように首をゆるゆると横に振っていれば、不意にジュードの顔がセレニアの目の前にある。驚いて小さく「きゃっ」と声を上げれば、ジュードはそのままセレニアの顔に自身の顔を近づけて――唇の端を舌で舐める。
「っつ!」
驚いてジュードから逃げようとするものの、ジュードの手はセレニアの後頭部を掴む。そして、そのまま彼はセレニアに触れるだけの口づけを数回落としてくる。
「んんっ」
角度を変えて行われる口づけに、脳内がくらくらする。そう思い身体から力を抜けば、セレニアの後頭部を掴んでいたジュードの手がいつの間にかセレニアの腰に添えられている。
セレニアがソファーの背もたれに頭を預け、うっとりとしたような目でジュードのことを見上げれば、彼はくすくすと声を上げて笑っていた。
「セレニアは可愛らしいね」
その後、耳元で告げられるそんな甘ったるい言葉。その言葉に心臓がドクンと大きな音を立てる。鼓動が駆け足になり、身体の芯が熱くなっていくような感覚に襲われた。
「唇の端にジャムが付いていたから、ちょっと悪戯したんだけれど……うん、やっぱり俺も我慢できそうにないかも」
ジュードは何でもない風にそう告げると、立ち上がりセレニアのことを横抱きにする。突然宙に浮いた身体に驚いていれば、彼は何でもない風にセレニアの身体を寝台に運んでいく。
「ちょ、まっ!」
待って。そう言おうとしたのに、ジュードは「セレニアが可愛らしいのが悪い」という見事な責任転嫁を披露し、セレニアの身体を寝台に優しく寝かせる。その後、彼はセレニアの身体に覆いかぶさるように寝台に乗り上げてきた。巨大な寝台は、大人二人が乗ったところでびくともいない。
「……」
じっとセレニアがジュードの漆黒色の目を見つめていれば、彼は「……見つめられるの、結構ぐっとくるものがあるね」と言いながらセレニアの唇にもう一度口づけてくる。
もう一度触れるだけの口づけを繰り返したかと思えば、今度はセレニアのうっすらと開いた唇にジュードの舌が差し込まれる。その舌は甘ったるい味がするようであり、きっと先ほど食べたクッキーの味なのだろう。
「んんっ、んぅ……」
ぼんやりとする脳内でそう思っていても、意識は口づけに引っ張り戻される。口蓋を舐められたかと思えば、その舌はセレニアの歯列を舐める。頬の内側をつつかれ、舌を吸われる。
抵抗する気力も徐々に失われ、セレニアは腕をシーツの上に投げ出した。
(ぁ)
口づけされていると、身体の奥がゾクゾクとする。どうしようもない感覚が背筋を伝って、どうしようもなく身体が熱くなる。ジュードの指がセレニアの身体をなぞるように伝い、触れられた箇所がじんじんと熱を持つような感覚だった。
(……おかしい)
どうして、自分の身体はこんな口づけだけで反応しているのだろうか。セレニアはそんなことを思ってしまうが、口元から聞こえてくるぐちゅぐちゅという水音がひどく淫靡に聞こえてしまい、耳をふさぎたい衝動に襲われてしまった。けれど、そんなことをするわけにはいかない。そんな気持ちだけでジュードの口づけを受け入れていく。
「んんっ、んぅ……」
他人の舌が口内にあるというのはひどく不思議な感覚だった。それに翻弄されながらセレニアが身を震わせていれば、ようやくジュードの唇がセレニアから離れていく。体感時間で一時間以上に感じられた口づけは、セレニアの脳内から冷静な判断力を奪っていた。
「……セレニア」
セレニアのナイトドレスに垂れた唾液を指で拭いながら、ジュードが名前を呼んでくれる。先ほどまで仲良く食事をしていたとは思えないほどの雰囲気の艶っぽさに、セレニアは息を呑んだ。
(……これから)
これから、形式的な初夜が始まるのだ。それを実感しセレニアが息を呑めば、ジュードの手がセレニアのナイトドレスにかけられる。
その手はボタンをぷつり、ぷつりと外していく。こういう際に使用されるナイトドレスは前をボタンで留めただけのシンプルなものだ。だから、とても脱がせやすい構造をしている。その所為で、セレニアはあっという間に身体をジュードの眼下に晒してしまった。
「きれいな身体、しているね」
セレニアの身体を見下ろし、ジュードはそんな感想を零す。その感想がどうしようもないほどくすぐったく感じられて、セレニアが身をよじる。しかし、ジュードは「隠さないでね」と言ってセレニアの身体をそっと元の体勢に戻してしまった。
「……み、みな、いで……」
先ほどまで食事をしていたということもあり、まだ灯りがともっている。それを指摘すれば、ジュードは「じゃあ、消そうか」と言って灯りをあっさりと消してしまった。
ともっているのはオレンジ色の小さな灯りだけ。それに満足気に頷くと、ジュードはセレニアの首筋に舌を這わせてくる。
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