20 / 76
20
しおりを挟む
「木本君、起きてるか?」
「え? アスカさん!?」
廊下からはアスカさんの声。真夜中の来客は魔王の刺客ではなかった。
僕は飛び起き、急いでドアを開ける。
「すまない、こんな遅くに」
「い、いえ……!」
ドアを開けると、湯上り姿であろうアスカさんが立っていた。美しい……。
「あのチビスケは?」
部屋を見渡すアスカさん。
「チビスケ? ああ、ガイドなら寝ちゃいました」
「ふふ、しょうもない精霊だな」
笑うアスカさん。さっきまで追いかけまわしていたが嫌いではないようで安心した。
「今日はお疲れ様。無事にダンジョンクリアできてよかった」
「そ、そんな、大したことしてませんよ……」
レベル0のスライムを一撃で倒したことを思い出す。
うん、ホントに大したことしてないな……
「慌ただしい一日だったな……」
「はい……信じられないことばかりで……」
人間界に魔王がいる事、ダンジョン出現の理由……驚くことばかりだった。
僕たちは今日の新情報を整理してみた。
・人間界のダンジョンやモンスターは、精霊界でやられた傷の治療のために魔王が作った
・その時に人間にも魔力が宿るようになった
・魔王の傷はほぼ治っている。近いうちにこの世界を滅ぼして精霊界も再び滅ぼしに行くだろう
・精霊は魔力の無い、レベル0の人間とだけ契約できる。契約しないと消滅してしまう
・ガイドは契約した人間にだけ(キモオタ)、レベルアップする方法を教えることができる
・僕が魔王を倒せるレベルまで成長して、魔王を滅ぼす!
うーん、あらためて見ると、この世界の重大な秘密を知ってしまったな。
「そんなわけで、ガイドは木本君を成長させて、魔王を倒すように考えているようだが……本当にいいのか? 危険な目にもあうだろう」
心配してくれるアスカさん。
「はい! ビックリはしましたけど……冒険者は僕の夢だったんです! 望むところです!」
「……そうか! なら全力でサポートさせてもらうからな!」
「はい!」
勇者パーティーには美人剣士は必須だ。アスカさんの美貌なら文句なしだ。
「それでな……木本君……」
アスカさんの表情が曇る。
「はい?」
「今回のダンジョンの報酬の件なんだが……」
「あっ!」
バタバタしてすっかり忘れていた!
「そうだ! アイドルの白野サクラちゃんとデートさせてくれるって!」
僕は満面の笑みになる。
「……覚えていたか……」
残念そうなアスカさん。忘れるものか!
「もちろん! そのために死闘を繰り広げたんですから!」
「死闘……?」
「くぅーッ! 楽しみだなぁ! サクラちゃん、可愛いんだろうなぁ」
テンション最高潮の僕に対して、どこか暗いアスカさん。
「実は……その件で謝らないといけないことがあってな……」
「え!?」
嫌な予感しかしないセリフだ。
「じつは……サクラには今は会えないんだ……すまない!」
アスカさんは僕に頭を下げる。
「はぁ……そんな気がしてましたけど……ん? サクラ?」
大人気アイドルの白野サクラちゃんをサクラ呼びなんて……
「もしや? アスカさんもサクラちゃんのファンですか?」
「……妹なんだ」
「……え?」
僕は耳を疑った。
「アイドルの白野サクラは私の妹なんだ……」
アスカさんはどこか恥ずかしそうに驚くべきことを言う。
「えぇぇ!? 姉妹? ってことは……白野アスカさん!?」
「ま、まあそうなるが……そこ気にするか?」
「に、似てる……言われてみれば……サクラちゃんに似た美しいフェイスライン! キリっとした目元!」
「黙っていてすまなかった」
「いえ、気にしないでくださいよ……お義姉さん!」
「……お義姉さんはやめてくれ……」
本気で嫌な顔をするアスカさんであった。
衝撃的なカミングアウトに驚く僕。
確かにソックリだ。どうして今まで気づかなかったのだろうか……
「え? アスカさん!?」
廊下からはアスカさんの声。真夜中の来客は魔王の刺客ではなかった。
僕は飛び起き、急いでドアを開ける。
「すまない、こんな遅くに」
「い、いえ……!」
ドアを開けると、湯上り姿であろうアスカさんが立っていた。美しい……。
「あのチビスケは?」
部屋を見渡すアスカさん。
「チビスケ? ああ、ガイドなら寝ちゃいました」
「ふふ、しょうもない精霊だな」
笑うアスカさん。さっきまで追いかけまわしていたが嫌いではないようで安心した。
「今日はお疲れ様。無事にダンジョンクリアできてよかった」
「そ、そんな、大したことしてませんよ……」
レベル0のスライムを一撃で倒したことを思い出す。
うん、ホントに大したことしてないな……
「慌ただしい一日だったな……」
「はい……信じられないことばかりで……」
人間界に魔王がいる事、ダンジョン出現の理由……驚くことばかりだった。
僕たちは今日の新情報を整理してみた。
・人間界のダンジョンやモンスターは、精霊界でやられた傷の治療のために魔王が作った
・その時に人間にも魔力が宿るようになった
・魔王の傷はほぼ治っている。近いうちにこの世界を滅ぼして精霊界も再び滅ぼしに行くだろう
・精霊は魔力の無い、レベル0の人間とだけ契約できる。契約しないと消滅してしまう
・ガイドは契約した人間にだけ(キモオタ)、レベルアップする方法を教えることができる
・僕が魔王を倒せるレベルまで成長して、魔王を滅ぼす!
うーん、あらためて見ると、この世界の重大な秘密を知ってしまったな。
「そんなわけで、ガイドは木本君を成長させて、魔王を倒すように考えているようだが……本当にいいのか? 危険な目にもあうだろう」
心配してくれるアスカさん。
「はい! ビックリはしましたけど……冒険者は僕の夢だったんです! 望むところです!」
「……そうか! なら全力でサポートさせてもらうからな!」
「はい!」
勇者パーティーには美人剣士は必須だ。アスカさんの美貌なら文句なしだ。
「それでな……木本君……」
アスカさんの表情が曇る。
「はい?」
「今回のダンジョンの報酬の件なんだが……」
「あっ!」
バタバタしてすっかり忘れていた!
「そうだ! アイドルの白野サクラちゃんとデートさせてくれるって!」
僕は満面の笑みになる。
「……覚えていたか……」
残念そうなアスカさん。忘れるものか!
「もちろん! そのために死闘を繰り広げたんですから!」
「死闘……?」
「くぅーッ! 楽しみだなぁ! サクラちゃん、可愛いんだろうなぁ」
テンション最高潮の僕に対して、どこか暗いアスカさん。
「実は……その件で謝らないといけないことがあってな……」
「え!?」
嫌な予感しかしないセリフだ。
「じつは……サクラには今は会えないんだ……すまない!」
アスカさんは僕に頭を下げる。
「はぁ……そんな気がしてましたけど……ん? サクラ?」
大人気アイドルの白野サクラちゃんをサクラ呼びなんて……
「もしや? アスカさんもサクラちゃんのファンですか?」
「……妹なんだ」
「……え?」
僕は耳を疑った。
「アイドルの白野サクラは私の妹なんだ……」
アスカさんはどこか恥ずかしそうに驚くべきことを言う。
「えぇぇ!? 姉妹? ってことは……白野アスカさん!?」
「ま、まあそうなるが……そこ気にするか?」
「に、似てる……言われてみれば……サクラちゃんに似た美しいフェイスライン! キリっとした目元!」
「黙っていてすまなかった」
「いえ、気にしないでくださいよ……お義姉さん!」
「……お義姉さんはやめてくれ……」
本気で嫌な顔をするアスカさんであった。
衝撃的なカミングアウトに驚く僕。
確かにソックリだ。どうして今まで気づかなかったのだろうか……
1
お気に入りに追加
112
あなたにおすすめの小説

男女比の狂った世界で愛を振りまく
キョウキョウ
恋愛
男女比が1:10という、男性の数が少ない世界に転生した主人公の七沢直人(ななさわなおと)。
その世界の男性は無気力な人が多くて、異性その恋愛にも消極的。逆に、女性たちは恋愛に飢え続けていた。どうにかして男性と仲良くなりたい。イチャイチャしたい。
直人は他の男性たちと違って、欲求を強く感じていた。女性とイチャイチャしたいし、楽しく過ごしたい。
生まれた瞬間から愛され続けてきた七沢直人は、その愛を周りの女性に返そうと思った。
デートしたり、手料理を振る舞ったり、一緒に趣味を楽しんだりする。その他にも、色々と。
本作品は、男女比の異なる世界の女性たちと積極的に触れ合っていく様子を描く物語です。
※カクヨムにも掲載中の作品です。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!


異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第三章フェレスト王国エルフ編

高身長お姉さん達に囲まれてると思ったらここは貞操逆転世界でした。〜どうやら元の世界には帰れないので、今を謳歌しようと思います〜
水国 水
恋愛
ある日、阿宮 海(あみや かい)はバイト先から自転車で家へ帰っていた。
その時、快晴で雲一つ無い空が急変し、突如、周囲に濃い霧に包まれる。
危険を感じた阿宮は自転車を押して帰ることにした。そして徒歩で歩き、喉も乾いてきた時、運良く喫茶店の看板を発見する。
彼は霧が晴れるまでそこで休憩しようと思い、扉を開く。そこには女性の店員が一人居るだけだった。
初めは男装だと考えていた女性の店員、阿宮と会話していくうちに彼が男性だということに気がついた。そして同時に阿宮も世界の常識がおかしいことに気がつく。
そして話していくうちに貞操逆転世界へ転移してしまったことを知る。
警察へ連れて行かれ、戸籍がないことも発覚し、家もない状況。先が不安ではあるが、戻れないだろうと考え新たな世界で生きていくことを決意した。
これはひょんなことから貞操逆転世界に転移してしまった阿宮が高身長女子と関わり、関係を深めながら貞操逆転世界を謳歌する話。

貞操逆転世界に無職20歳男で転生したので自由に生きます!
やまいし
ファンタジー
自分が書きたいことを詰めこみました。掲示板あり
目覚めると20歳無職だった主人公。
転生したのは男女の貞操観念が逆転&男女比が1:100の可笑しな世界だった。
”好きなことをしよう”と思ったは良いものの無一文。
これではまともな生活ができない。
――そうだ!えちえち自撮りでお金を稼ごう!
こうして彼の転生生活が幕を開けた。

元勇者のデブ男が愛されハーレムを築くまで
あれい
ファンタジー
田代学はデブ男である。家族には冷たくされ、学校ではいじめを受けてきた。高校入学を前に一人暮らしをするが、高校に行くのが憂鬱だ。引っ越し初日、学は異世界に勇者召喚され、魔王と戦うことになる。そして7年後、学は無事、魔王討伐を成し遂げ、異世界から帰還することになる。だが、学を召喚した女神アイリスは元の世界ではなく、男女比が1:20のパラレルワールドへの帰還を勧めてきて……。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる