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3、もう、ムリなんだって
おばちゃんたちの追求
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「瞬ちゃーん、昨日のあれって『彼氏』?」
「は?」
とぼけてはみたが、きっとムダだと知っていた。
Aチームの一周目からのシフト。更衣室で白衣を着こんでいた瞬は、同じAチームのメンバーに囲まれた。
「仕事終わりに迎えにきてくれるなんて、優しい~」
「瞬ちゃんなんて通勤時間何分でもないんでしょ? よほど早く会いたかったのね」
「えー、ヤだあ。ラブラブじゃん」
「瞬ちゃんカワイイから、彼氏さんもぞっこんなんじゃない?」
「瞬ちゃんよりちょっと歳上? いつからつき合ってんの」
矢継ぎ早に質問されて、瞬はその場に固まるしかなかった。
(どうしよう。ごまかせる? それとも『別に彼氏じゃない』ってホントのことを説明する?)
別に彼氏じゃない。本当のことだ。
伸幸は、ただの居候。
昨日一度くらい身体を触らせたからって。
「やだカワイイ! 瞬ちゃん顔真っ赤」
(え? え? 嘘!)
瞬は拳で頬をこすった。
「キャー!」
三十代から六十代の女性が一斉に叫ぶ。
トントントン。
武藤華が開いたドアを拳で叩いていた。
「時間ですよ。そろそろみなさん、出ましょうか」
瞬を囲んでキャーキャー言っていたメンバーは、「はーい」と返事してぞろぞろと更衣室を出ていった。
「うるさくして、すみませんでした」
別に瞬が謝るところじゃないが、この辺は社会で覚えた処世術だ。
「別に」
華はくるりときびすを返した。
スタスタと廊下を進む華に続き、瞬も作業場へ移動する。
「で?」
唐突に、華は足を止めた。
「彼氏なの?」
「ええ……?」
まさか追求されるとは。
(助けてくれたんじゃなかったの?)
瞬はどう答えようか迷った。
この弁当屋はただの腰かけだ。住むのに金が要るので、近所でバイトしてみただけだ。
一生この仕事をするわけじゃないし、もっと何かやりたいことが見つかったら出ていく、この街から。
じゃあ、誤解されても、別にいい。
面倒が少ない方がラクだ。
そう思ったはずなのに。
「はあ……まあ……。まだ『つき合ってる』とは言えないんですけど、大体そんなもんかもしれません」
口をついて出た言葉は、どんな嘘より瞬の気持ちに合っていた。
「そう」
華は瞬を見上げた。
「上手くいくといいわね」
優しいキレイな笑顔だった。
「ありがとうございます」
つられて、瞬も素直にそう答えてしまった。
「は?」
とぼけてはみたが、きっとムダだと知っていた。
Aチームの一周目からのシフト。更衣室で白衣を着こんでいた瞬は、同じAチームのメンバーに囲まれた。
「仕事終わりに迎えにきてくれるなんて、優しい~」
「瞬ちゃんなんて通勤時間何分でもないんでしょ? よほど早く会いたかったのね」
「えー、ヤだあ。ラブラブじゃん」
「瞬ちゃんカワイイから、彼氏さんもぞっこんなんじゃない?」
「瞬ちゃんよりちょっと歳上? いつからつき合ってんの」
矢継ぎ早に質問されて、瞬はその場に固まるしかなかった。
(どうしよう。ごまかせる? それとも『別に彼氏じゃない』ってホントのことを説明する?)
別に彼氏じゃない。本当のことだ。
伸幸は、ただの居候。
昨日一度くらい身体を触らせたからって。
「やだカワイイ! 瞬ちゃん顔真っ赤」
(え? え? 嘘!)
瞬は拳で頬をこすった。
「キャー!」
三十代から六十代の女性が一斉に叫ぶ。
トントントン。
武藤華が開いたドアを拳で叩いていた。
「時間ですよ。そろそろみなさん、出ましょうか」
瞬を囲んでキャーキャー言っていたメンバーは、「はーい」と返事してぞろぞろと更衣室を出ていった。
「うるさくして、すみませんでした」
別に瞬が謝るところじゃないが、この辺は社会で覚えた処世術だ。
「別に」
華はくるりときびすを返した。
スタスタと廊下を進む華に続き、瞬も作業場へ移動する。
「で?」
唐突に、華は足を止めた。
「彼氏なの?」
「ええ……?」
まさか追求されるとは。
(助けてくれたんじゃなかったの?)
瞬はどう答えようか迷った。
この弁当屋はただの腰かけだ。住むのに金が要るので、近所でバイトしてみただけだ。
一生この仕事をするわけじゃないし、もっと何かやりたいことが見つかったら出ていく、この街から。
じゃあ、誤解されても、別にいい。
面倒が少ない方がラクだ。
そう思ったはずなのに。
「はあ……まあ……。まだ『つき合ってる』とは言えないんですけど、大体そんなもんかもしれません」
口をついて出た言葉は、どんな嘘より瞬の気持ちに合っていた。
「そう」
華は瞬を見上げた。
「上手くいくといいわね」
優しいキレイな笑顔だった。
「ありがとうございます」
つられて、瞬も素直にそう答えてしまった。
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