銀鎖

見覚えがあるのは、橋と、古びたいくつかの建物だけ。だが、川とこの臭いだけは何も変わらない。

村上遼一は三十歳を過ぎて、二度と足を踏み入れることはないと誓った、故郷の街へと戻ってきた。川辺の遊歩道を歩いていると、子供たちの声を耳にする。数人に囲まれ暴力を振るわれている子供を助けてやると、その子供は――。
悟と名乗ったその少年は、ガラス玉のように透き通った瞳をしていた。思い出すこともなくなって久しい、過去の亡霊が遼一の脳裏に蘇る。

望みを絶たれること。生きる意味が見つからないこと。
温もりに有頂天になること。誰かのために生きること。

絶望と隣り合わせの何かを、北国を舞台に描き出します。

※運営ガイドラインに沿って「R15」表示しておりますが、性的表現は少なめかつ控えめです。
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