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第十三話【足りない言葉】後
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次の日、ベッドに寝ていた冬真は目が覚めた瞬間跳ね起きた。昨夜、傷口を下にしないようにと細心の注意を払いながら一緒に眠りについた力也の姿が目が覚めるとなかった。
「力也!?」
「あ、起きた?」
声を上げれば、台所から力也が顔をだした。髪も服も整えられた力也は、ひょいっとベッドの横を指さした。
「今日の服、選んどいた」
「ああ」
ベッドの横に置かれた段ボールの上に服がだしてあった。
「あと、この辺勝手に漁ったんだけど冬真なんもねぇな。普段何食べてんだよ?」
「弁当とか買ってる」
「あーなるほど。で、そこゴミ溢れかけてんのか」
そういう力也は料理もできるらしい、何かを煮ている音がする。
「味噌とかある?」
「ラーメンなら」
「そっちじゃない」
可笑しそうに笑う声が聞こえ、続いてドアを開ける音が聞こえる。
「力也?」
いきなり出ていった力也に、戸惑いつつドアを開ければ隣の家の住人の女性と話す力也の姿があった。
「いいんですか!?ありがとうございます!」
「賞味期限切れで申し訳ないんだけど」
「全然大丈夫です!助かりました!」
初めて会ったばかりの人とはきはきと話していた力也は、冬真の姿を見つけると軽く合図した。
「なんか色々くれた!」
(コミュ力高すぎだろ)
「ありがとうございます」
見覚えのある女性に軽く頭を下げれば、おどおどした様子で下げ返された。隣の女性が引っ込むとすぐに力也は部屋へと戻ってきた。
「何貰ったんだ」
「えーと、卵と納豆あと青菜と味噌」
「お前すごいな」
感嘆とも呆れとも言えない言葉を聞きながら、力也は手際よく鍋へと入れ、みそ汁をつくっていった。
数分後、テーブルの上には、冬真が買ってあったレトルトのご飯とラーメン用についてたワカメとネギと青菜が入ったみそ汁、それに納豆と卵、挙句に晩酌用の焼き鳥が並んでいた。
「「いただきます」」
確かに、どれを作ったとも言えない食事だったが、一通りの物が並べられているのは冬真にとっては衝撃的だった。
「お隣さんが優しい人でよかった」
「変な奴だったらどうするつもりだったんだよ」
「そしたら、ごめんなさいして諦めた。でも、女性で多分子供がいることもわかってたし、大丈夫かなって」
「俺話してねぇのになんで?」
「朝ちょっと子供の声聞こえたし、後隣の庭見たら野菜が植えられてたし」
「探偵かよ」
「忍者だよ」
知っている人にしか通じない冗談に笑い合いながらも、朝食を食べる。
「あと、多分だけど隣の人近々引っ越すかも」
「え?」
「丁度見えた部屋の中、冬真の部屋みたいになってたから」
要は段ボールが沢山置かれていたと言いたいんだろう。
「お前な」
「だから、お礼するなら早めにね」
「わかった。…そっか隣開くのか…なあ、お前」
「嫌だ」
「まだ何にも言ってねぇだろ」
「俺は今の部屋結構気に入ってるから引っ越さない」
隣に引っ越して来いと言おうとした冬真の言葉を遮り、力也はきっぱりと断った。
「なんだよ。つめてぇ奴」
「また泊まるから」
「…そんときは、食材も持ってこいよ」
「えー」
「何買っていいかわかんねぇもん」
不満げな力也へと我儘を言えば、仕方ないと笑い返された。
「傷どう?」
「大丈夫」
返答をわかっていながら尋ねれば、予想通りの言葉と笑顔を返された。
「ちゃんと病院行けよ」
「はーい」
「あと、しばらく無茶すんなよ」
「わかってるって…心配いらないから、冬真は仕事頑張って」
「ああ、わかってる」
「応援してるから」
そう言うと、朝食の食器の片づけまでした力也は、仕事で送ることもできない冬真に軽く手を振り帰って行った。
「イケメンすぎる」
帰れるかと心配する冬真へと返されたお礼も、痛みを感じさせない笑顔もすべて冬真を気遣ったものだった。
その日の昼頃、L●NEを開いた冬真は、そこに力也から送られてきたメッセージにより、男の名前と顔を知った。
寝る前に、あんなことをしたDomについて店の子たちに聞いて送るように言ったのをちゃんと実行した力也に“Good Boy”と送る。
【ちょっと皆に頼みがあんだけど】
そうグループL●NEに送る冬真の瞳は力也に向けたものとは違い、怒りに満ちていた。
「力也!?」
「あ、起きた?」
声を上げれば、台所から力也が顔をだした。髪も服も整えられた力也は、ひょいっとベッドの横を指さした。
「今日の服、選んどいた」
「ああ」
ベッドの横に置かれた段ボールの上に服がだしてあった。
「あと、この辺勝手に漁ったんだけど冬真なんもねぇな。普段何食べてんだよ?」
「弁当とか買ってる」
「あーなるほど。で、そこゴミ溢れかけてんのか」
そういう力也は料理もできるらしい、何かを煮ている音がする。
「味噌とかある?」
「ラーメンなら」
「そっちじゃない」
可笑しそうに笑う声が聞こえ、続いてドアを開ける音が聞こえる。
「力也?」
いきなり出ていった力也に、戸惑いつつドアを開ければ隣の家の住人の女性と話す力也の姿があった。
「いいんですか!?ありがとうございます!」
「賞味期限切れで申し訳ないんだけど」
「全然大丈夫です!助かりました!」
初めて会ったばかりの人とはきはきと話していた力也は、冬真の姿を見つけると軽く合図した。
「なんか色々くれた!」
(コミュ力高すぎだろ)
「ありがとうございます」
見覚えのある女性に軽く頭を下げれば、おどおどした様子で下げ返された。隣の女性が引っ込むとすぐに力也は部屋へと戻ってきた。
「何貰ったんだ」
「えーと、卵と納豆あと青菜と味噌」
「お前すごいな」
感嘆とも呆れとも言えない言葉を聞きながら、力也は手際よく鍋へと入れ、みそ汁をつくっていった。
数分後、テーブルの上には、冬真が買ってあったレトルトのご飯とラーメン用についてたワカメとネギと青菜が入ったみそ汁、それに納豆と卵、挙句に晩酌用の焼き鳥が並んでいた。
「「いただきます」」
確かに、どれを作ったとも言えない食事だったが、一通りの物が並べられているのは冬真にとっては衝撃的だった。
「お隣さんが優しい人でよかった」
「変な奴だったらどうするつもりだったんだよ」
「そしたら、ごめんなさいして諦めた。でも、女性で多分子供がいることもわかってたし、大丈夫かなって」
「俺話してねぇのになんで?」
「朝ちょっと子供の声聞こえたし、後隣の庭見たら野菜が植えられてたし」
「探偵かよ」
「忍者だよ」
知っている人にしか通じない冗談に笑い合いながらも、朝食を食べる。
「あと、多分だけど隣の人近々引っ越すかも」
「え?」
「丁度見えた部屋の中、冬真の部屋みたいになってたから」
要は段ボールが沢山置かれていたと言いたいんだろう。
「お前な」
「だから、お礼するなら早めにね」
「わかった。…そっか隣開くのか…なあ、お前」
「嫌だ」
「まだ何にも言ってねぇだろ」
「俺は今の部屋結構気に入ってるから引っ越さない」
隣に引っ越して来いと言おうとした冬真の言葉を遮り、力也はきっぱりと断った。
「なんだよ。つめてぇ奴」
「また泊まるから」
「…そんときは、食材も持ってこいよ」
「えー」
「何買っていいかわかんねぇもん」
不満げな力也へと我儘を言えば、仕方ないと笑い返された。
「傷どう?」
「大丈夫」
返答をわかっていながら尋ねれば、予想通りの言葉と笑顔を返された。
「ちゃんと病院行けよ」
「はーい」
「あと、しばらく無茶すんなよ」
「わかってるって…心配いらないから、冬真は仕事頑張って」
「ああ、わかってる」
「応援してるから」
そう言うと、朝食の食器の片づけまでした力也は、仕事で送ることもできない冬真に軽く手を振り帰って行った。
「イケメンすぎる」
帰れるかと心配する冬真へと返されたお礼も、痛みを感じさせない笑顔もすべて冬真を気遣ったものだった。
その日の昼頃、L●NEを開いた冬真は、そこに力也から送られてきたメッセージにより、男の名前と顔を知った。
寝る前に、あんなことをしたDomについて店の子たちに聞いて送るように言ったのをちゃんと実行した力也に“Good Boy”と送る。
【ちょっと皆に頼みがあんだけど】
そうグループL●NEに送る冬真の瞳は力也に向けたものとは違い、怒りに満ちていた。
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