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第二話【D/S合コン】後
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こっちの気持ちも知らずに馴れ馴れしく近寄ってくる男から視線を逸らす。相手も見つからないパーティでも食事がうまいから気に入っているんだ。
ここで下手に噂になったら参加しづらくなる。
「嘘、本人だよね。それとも俺のことわからない?」
料理へと視線を移した俺の顔を覗き込むように、腰をかがめてくる奴に毛が逆立つ。本来SubはDomに強くでられると逆らえないものだと思われているが、そんなことはない。
意に沿わない支配にあらがうための防衛反応はちゃんとある。俺はSubとしてのランクも高く抵抗力も防衛反応も強めだ。
飼い主を探す野良犬どころか、野犬だと言われているのは伊達じゃない。
「そう言えばしっかり自己紹介してなかったね。俺は鍵山冬真、冬真って呼んでいいから」
「……何度も言うけど、人違いです。それと、一応ここでは本名は明かさないのがマナーです。誰と間違えているのか知らないけど、失礼します」
料理はあきらめ、押しのけるようにその場を移動しようとしたその瞬間、相手の瞳からグレアが放たれたのがわかった。
参加者のSubを守るため、又余計な諍いを無くすため、この会場でのグレアの使用は禁止されていた。もし使う場合は、Sudの許可を得て個室に行ってからとされている。
その個室も、完全な個室ではなく仕切りがあるテーブル席だ。他人の目があることで、Subの人権を守り、もしもの時はDomを強制的に追い出す。そのぐらいここは管理されていた。
それだけではなく、Domにはグレアを防ぐための薄めの色付きのサングラスをつけることも決められていた。気休めにすぎないが、それをかけていることで多くのDomはこの店のルールを忘れないでいられる。
それなのに、そのサングラスをずらし、男はグレアを放ってきた。
(なんだこいつ)
高ランクなのはわかったが強引すぎる態度に不快感を感じ、グレアを跳ね返しそのままその場を離れようとした俺に今度はコマンドが飛んできた。
「Kneell」【お座り】
一番よくつかわれるそのコマンドに、身体が動かなくなり足から力が抜けるのがわかった。パーティ用にSub寄りの気分にもっていっていたのが災いした。
(耐え切れない)
そう思った俺が膝をつくよりも早く、近くにいたSubの参加者たちがそれに当てられ次々にその場に膝をついた。途端に会場中がざわめきに変わる。
「誰だ!」
「あいつだ!」
「取り押さえろ!!」
その場にいたDom達の多くが一斉に、奴を囲み抑え込んだ。いくら高ランクだとしても、大勢に囲まれてしまえば抵抗ができるはずもなく、奴は取り押さえられた。
「君はこっちへ」
駆け寄ってきてくれたスタップに誘導され、俺は奴から引き離された。
俺の前にはスタッフと参加者のDomが立ち、他のSubたちも多くがDomの影へと庇われている。皆この場所を無くしてはいけないと思っているのだろう。
「お客様、当会場での同意のないグレアは禁止されています。Sudの方々のコマンドによる強制も同意が必要です。ご自分の力をコントロールできない方はこの会場に入る資格はありません」
責任者がそう言うと、取り押さえたDomたちに押さえつけられながら奴は会場の外へと追い出された。おそらくもう二度と参加することはできないだろう。
「Subの皆さまには怖い想いをさせてしまい申し訳ありません。今回はSubの皆様の参加費はお返しいたします。これに懲りずまた参加してくださるとうれしく思います」
責任者の男が優しく微笑みながら、奴が放ったグレアを消し去るようにグレアを放った。
「立てるか?」
「大丈夫か?」
座ったままだったSub達へと、Dom達が手を差し伸べ次々に立たせている。中には未だ動きが取れないSubにコマンドを使うDomもいるようで耳元に直接囁き立たせる者もいる。
直接くらったのにかろうじて抵抗できた俺にも、Dom達が声をかけてくれた。
「ひどい目にあったな」
「よく頑張ったな」
労わるように声をかけてくれるDom達は口々に俺を褒めてくれて、こんなことがなければもらえないだろう関心に少しだけ嬉しくなった。
結果的にその日のパーティは大成功だった。それと言うのも守ってくれたDomに信頼感と安心感を覚え、多くのカップルが誕生したのだ。
顔なじみのユイも相手が見つかったらしく、穏やかそうなDomに寄り添っていた。
俺も数人のDomから連絡先の書かれた名刺をもらった。こんなの初めてだった。
Subらしくない俺を希望してくれる人がいるということに嬉しくなった。
吊り橋効果だろうが、奇跡的にうまくいってしまったことにスタッフや責任者たちは微妙な顔をしていた。これに味をしめハプニングを起こすように仕込むようなら困るが、あの様子なら大丈夫だろう。
それにあんまりうまくいきすぎて参加者が減るのも、それはそれで困るだろうし。
とはいえ、そんなので奴のやったことがチャラになるわけはない。
おそらく出入り禁止、下手をすると他のパーティからも出入り禁止になるかもしれない。この界隈は広いようで狭いからな。
「って言っても、現場で会うんだよな。めんどくせー」
奴が出ているAVを見ていた時にはあんなに気持ちがよかったのに、今は会うのも嫌だと思い始めている。ちょっとしたマナー違反をみただけで気持ちが冷めるなんて、俺は本当にSubとしてダメだなと感じた。
ここで下手に噂になったら参加しづらくなる。
「嘘、本人だよね。それとも俺のことわからない?」
料理へと視線を移した俺の顔を覗き込むように、腰をかがめてくる奴に毛が逆立つ。本来SubはDomに強くでられると逆らえないものだと思われているが、そんなことはない。
意に沿わない支配にあらがうための防衛反応はちゃんとある。俺はSubとしてのランクも高く抵抗力も防衛反応も強めだ。
飼い主を探す野良犬どころか、野犬だと言われているのは伊達じゃない。
「そう言えばしっかり自己紹介してなかったね。俺は鍵山冬真、冬真って呼んでいいから」
「……何度も言うけど、人違いです。それと、一応ここでは本名は明かさないのがマナーです。誰と間違えているのか知らないけど、失礼します」
料理はあきらめ、押しのけるようにその場を移動しようとしたその瞬間、相手の瞳からグレアが放たれたのがわかった。
参加者のSubを守るため、又余計な諍いを無くすため、この会場でのグレアの使用は禁止されていた。もし使う場合は、Sudの許可を得て個室に行ってからとされている。
その個室も、完全な個室ではなく仕切りがあるテーブル席だ。他人の目があることで、Subの人権を守り、もしもの時はDomを強制的に追い出す。そのぐらいここは管理されていた。
それだけではなく、Domにはグレアを防ぐための薄めの色付きのサングラスをつけることも決められていた。気休めにすぎないが、それをかけていることで多くのDomはこの店のルールを忘れないでいられる。
それなのに、そのサングラスをずらし、男はグレアを放ってきた。
(なんだこいつ)
高ランクなのはわかったが強引すぎる態度に不快感を感じ、グレアを跳ね返しそのままその場を離れようとした俺に今度はコマンドが飛んできた。
「Kneell」【お座り】
一番よくつかわれるそのコマンドに、身体が動かなくなり足から力が抜けるのがわかった。パーティ用にSub寄りの気分にもっていっていたのが災いした。
(耐え切れない)
そう思った俺が膝をつくよりも早く、近くにいたSubの参加者たちがそれに当てられ次々にその場に膝をついた。途端に会場中がざわめきに変わる。
「誰だ!」
「あいつだ!」
「取り押さえろ!!」
その場にいたDom達の多くが一斉に、奴を囲み抑え込んだ。いくら高ランクだとしても、大勢に囲まれてしまえば抵抗ができるはずもなく、奴は取り押さえられた。
「君はこっちへ」
駆け寄ってきてくれたスタップに誘導され、俺は奴から引き離された。
俺の前にはスタッフと参加者のDomが立ち、他のSubたちも多くがDomの影へと庇われている。皆この場所を無くしてはいけないと思っているのだろう。
「お客様、当会場での同意のないグレアは禁止されています。Sudの方々のコマンドによる強制も同意が必要です。ご自分の力をコントロールできない方はこの会場に入る資格はありません」
責任者がそう言うと、取り押さえたDomたちに押さえつけられながら奴は会場の外へと追い出された。おそらくもう二度と参加することはできないだろう。
「Subの皆さまには怖い想いをさせてしまい申し訳ありません。今回はSubの皆様の参加費はお返しいたします。これに懲りずまた参加してくださるとうれしく思います」
責任者の男が優しく微笑みながら、奴が放ったグレアを消し去るようにグレアを放った。
「立てるか?」
「大丈夫か?」
座ったままだったSub達へと、Dom達が手を差し伸べ次々に立たせている。中には未だ動きが取れないSubにコマンドを使うDomもいるようで耳元に直接囁き立たせる者もいる。
直接くらったのにかろうじて抵抗できた俺にも、Dom達が声をかけてくれた。
「ひどい目にあったな」
「よく頑張ったな」
労わるように声をかけてくれるDom達は口々に俺を褒めてくれて、こんなことがなければもらえないだろう関心に少しだけ嬉しくなった。
結果的にその日のパーティは大成功だった。それと言うのも守ってくれたDomに信頼感と安心感を覚え、多くのカップルが誕生したのだ。
顔なじみのユイも相手が見つかったらしく、穏やかそうなDomに寄り添っていた。
俺も数人のDomから連絡先の書かれた名刺をもらった。こんなの初めてだった。
Subらしくない俺を希望してくれる人がいるということに嬉しくなった。
吊り橋効果だろうが、奇跡的にうまくいってしまったことにスタッフや責任者たちは微妙な顔をしていた。これに味をしめハプニングを起こすように仕込むようなら困るが、あの様子なら大丈夫だろう。
それにあんまりうまくいきすぎて参加者が減るのも、それはそれで困るだろうし。
とはいえ、そんなので奴のやったことがチャラになるわけはない。
おそらく出入り禁止、下手をすると他のパーティからも出入り禁止になるかもしれない。この界隈は広いようで狭いからな。
「って言っても、現場で会うんだよな。めんどくせー」
奴が出ているAVを見ていた時にはあんなに気持ちがよかったのに、今は会うのも嫌だと思い始めている。ちょっとしたマナー違反をみただけで気持ちが冷めるなんて、俺は本当にSubとしてダメだなと感じた。
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