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50話 油断と襲撃 二
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馬車に乗り帝国ポステーロス城へ向かう。
「なにも盗らなかったのが気になるわね」
「すぐに見つかったと聞きましたが」
「大体の貴族の邸宅には魔法がかかってる。マジア侯爵邸ももれなくね。だから侵入者はすぐ分かるはずよ。となると強盗は魔石持って入ってきた可能性があるわね?」
最後まで言わなくてもエールは成程と頷いた。説明の手間省けていいわ。
「魔石を持っているのなら、それを使って応戦もできたはず。なのに何もしなかったのには意図があると?」
「そう。ついでに言うなら入った玄関に金目のものはたくさんあるのよ。調度品はどれも一級品だから、見つかった時点で逃げるとしても手の届く小さな彫刻とか花瓶を掴んで逃げてもいいじゃない。少し不自然なのよ」
「これは下見で後に本番があると?」
「けど警備を強化されたらあっちが不利でしょ……今の段階じゃ二度目があるか微妙だわ」
その時、がたんと大きく揺れ馬車が止まった。大きな声も聞こえる。
「ああ、成程」
「エール?」
「我々が目的ですね」
「!」
国家連合設立に絡む面子狙いだ。
その中でも私やエールは年も若く王族でもないから狙いやすい。しかも今回護衛は最低限……これを狙っていたということね。
「……フラル!」
「え?」
エールが急に腰を抱いた。そしてそのまま抱えあげて外に転がるように出る。
「うっそ……」
「さすが過激派ですね」
馬車が燃えていた。簡単に大きく燃える様を見るに魔法を使っている。
同時、多くの視線を感じて周囲を見渡すとざっと三十人程に囲まれていた。いや、茂みの奥にもいるから五十ぐらい。こっちは総勢十人程度なのに。
「私から離れないで下さい」
「私も戦うわよ」
「駄目です」
「ふん、私を見くびらないで。魔石があれば威力マシマシで……ってないんだった」
魔石はもれなく新人三人にあげちゃってた。間が悪い。
まさかわざと? あの子達に悪意はなかった。それにお守りと称しているけど、私が持つ石は人を選ぶ。私に対して某かの悪意があるなら砕けるはずだ。つまり今回の魔石なしは偶然とみていい?
「そうですね。そこまで考えていたとは思えません」
私の考えてることを相変わらず察したエールが囁く。
「単純に手薄になるとこ狙ったってわけ」
「ええ、恐らく」
剣を持った。
授業で数える程しか持ったことがない。私は戦力にはならないだろう。けど、自分の身ぐらい自分で守らないと。
既に争いは始まっている。そこかしこで剣のぶつかる音がした。
「防御の魔法はできますね?」
「そのぐらいはね」
そこにエールが私に魔法の重ねがけをしているのを知っている。そのおかげか私たちへの直接的な魔法による攻撃は見られない。
けど魔石は持ってるわね。茂みから出てきた輩とその手前のいくらか。十人程度というところか。
「フラル?」
「不完全な方ね」
目を凝らして見ればすぐ分かる。奴らが使っているのは完全な魔石じゃない。すぐ壊れる代物だ。馬車を燃やすので使ったのならあと一度使えるかどうか。だからこそ私たちの防御の魔法を魔石で解除できない。
「魔石さえなければ、そこまで驚異ではないわね」
剣がさして扱えないなら、やれることをやるか。
もう、呪(まじな)い師ってばやっぱりみえてたんじゃない。
「エール」
「はい」
「私を守ってくれる?」
拍子抜けな顔をされた。けど察しのいい彼はすぐに気づく。
「元からそのつもりです」
「ありがと」
魔術にしろ魔法にしろ時間がかかるものとそうでないものがある。今回ここにいる敵の持つ粗悪な魔石を同時に砕く魔術には時間がかかった。
まずすべての魔石を把握し存在を認識しないといけない。そして魔石同士の力を繋げる。路を作る。
後は術式を通せば連動して壊れるはず。完成された魔石ならともかく不完全なものなら私が使う魔術程度でやれる。そう教わったのだから。
「……」
純粋に剣の実力ならこちらが上だ。エール以外の護衛だって帝国で腕を磨いている。
エールが指示を出して茂みにあった気配がなくなり全ての敵が出てきた。
そうなれば後は簡単。魔術の起動はいつでもできる程度の時間はあったのだから。
あたりで魔石が割れる音が響く。魔石で身体強化している者もいたから勢いが変わる。誰かが後退しろと叫んだ。
「やれたわね」
この時、私は完全に油断していた。
西側に出て十年以上経っていたから、どこかでゆるんでいたんだと思う。
「!」
背後にいた男が剣を振り上げている。
持っていた剣でなんとか受けるも力の差で尻餅をついてしまった。
「まず、」
剣はおりてこなかった。
男の手には剣がなくったのが見えた瞬間、私の目の前には見慣れた背中が見える。
「エー、」
隙間から男が笑うのが見えた。
次に見えたのは魔石。
取りこぼした。
そう思った時、魔石は砕け散るのと同時に爆発した。
「っ!」
「なにも盗らなかったのが気になるわね」
「すぐに見つかったと聞きましたが」
「大体の貴族の邸宅には魔法がかかってる。マジア侯爵邸ももれなくね。だから侵入者はすぐ分かるはずよ。となると強盗は魔石持って入ってきた可能性があるわね?」
最後まで言わなくてもエールは成程と頷いた。説明の手間省けていいわ。
「魔石を持っているのなら、それを使って応戦もできたはず。なのに何もしなかったのには意図があると?」
「そう。ついでに言うなら入った玄関に金目のものはたくさんあるのよ。調度品はどれも一級品だから、見つかった時点で逃げるとしても手の届く小さな彫刻とか花瓶を掴んで逃げてもいいじゃない。少し不自然なのよ」
「これは下見で後に本番があると?」
「けど警備を強化されたらあっちが不利でしょ……今の段階じゃ二度目があるか微妙だわ」
その時、がたんと大きく揺れ馬車が止まった。大きな声も聞こえる。
「ああ、成程」
「エール?」
「我々が目的ですね」
「!」
国家連合設立に絡む面子狙いだ。
その中でも私やエールは年も若く王族でもないから狙いやすい。しかも今回護衛は最低限……これを狙っていたということね。
「……フラル!」
「え?」
エールが急に腰を抱いた。そしてそのまま抱えあげて外に転がるように出る。
「うっそ……」
「さすが過激派ですね」
馬車が燃えていた。簡単に大きく燃える様を見るに魔法を使っている。
同時、多くの視線を感じて周囲を見渡すとざっと三十人程に囲まれていた。いや、茂みの奥にもいるから五十ぐらい。こっちは総勢十人程度なのに。
「私から離れないで下さい」
「私も戦うわよ」
「駄目です」
「ふん、私を見くびらないで。魔石があれば威力マシマシで……ってないんだった」
魔石はもれなく新人三人にあげちゃってた。間が悪い。
まさかわざと? あの子達に悪意はなかった。それにお守りと称しているけど、私が持つ石は人を選ぶ。私に対して某かの悪意があるなら砕けるはずだ。つまり今回の魔石なしは偶然とみていい?
「そうですね。そこまで考えていたとは思えません」
私の考えてることを相変わらず察したエールが囁く。
「単純に手薄になるとこ狙ったってわけ」
「ええ、恐らく」
剣を持った。
授業で数える程しか持ったことがない。私は戦力にはならないだろう。けど、自分の身ぐらい自分で守らないと。
既に争いは始まっている。そこかしこで剣のぶつかる音がした。
「防御の魔法はできますね?」
「そのぐらいはね」
そこにエールが私に魔法の重ねがけをしているのを知っている。そのおかげか私たちへの直接的な魔法による攻撃は見られない。
けど魔石は持ってるわね。茂みから出てきた輩とその手前のいくらか。十人程度というところか。
「フラル?」
「不完全な方ね」
目を凝らして見ればすぐ分かる。奴らが使っているのは完全な魔石じゃない。すぐ壊れる代物だ。馬車を燃やすので使ったのならあと一度使えるかどうか。だからこそ私たちの防御の魔法を魔石で解除できない。
「魔石さえなければ、そこまで驚異ではないわね」
剣がさして扱えないなら、やれることをやるか。
もう、呪(まじな)い師ってばやっぱりみえてたんじゃない。
「エール」
「はい」
「私を守ってくれる?」
拍子抜けな顔をされた。けど察しのいい彼はすぐに気づく。
「元からそのつもりです」
「ありがと」
魔術にしろ魔法にしろ時間がかかるものとそうでないものがある。今回ここにいる敵の持つ粗悪な魔石を同時に砕く魔術には時間がかかった。
まずすべての魔石を把握し存在を認識しないといけない。そして魔石同士の力を繋げる。路を作る。
後は術式を通せば連動して壊れるはず。完成された魔石ならともかく不完全なものなら私が使う魔術程度でやれる。そう教わったのだから。
「……」
純粋に剣の実力ならこちらが上だ。エール以外の護衛だって帝国で腕を磨いている。
エールが指示を出して茂みにあった気配がなくなり全ての敵が出てきた。
そうなれば後は簡単。魔術の起動はいつでもできる程度の時間はあったのだから。
あたりで魔石が割れる音が響く。魔石で身体強化している者もいたから勢いが変わる。誰かが後退しろと叫んだ。
「やれたわね」
この時、私は完全に油断していた。
西側に出て十年以上経っていたから、どこかでゆるんでいたんだと思う。
「!」
背後にいた男が剣を振り上げている。
持っていた剣でなんとか受けるも力の差で尻餅をついてしまった。
「まず、」
剣はおりてこなかった。
男の手には剣がなくったのが見えた瞬間、私の目の前には見慣れた背中が見える。
「エー、」
隙間から男が笑うのが見えた。
次に見えたのは魔石。
取りこぼした。
そう思った時、魔石は砕け散るのと同時に爆発した。
「っ!」
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