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49話 油断と襲撃
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油断した。
十年以上経っていたから、どこかでゆるんでいたんだと思う。
それは数刻前に遡る。
「フィクタ」
「フィクタ」
「フリーゴス、カロル」
マジア侯爵家に強盗が入った。強盗とは言いつつも何も盗られてないらしい。護衛が気づいて現場に向かうと強盗はすぐ逃げ去ったという。
城で働く身として親族としてマジア侯爵家に行くと、先見隊として国際平和騎士団の数名が向かったと聞いていた。そこに双子がいて、すぐに私のところへ駆けてくる。
「お仕事お疲れ様」
「フィクタ、大丈夫?」
「なにか変なこと起きてない?」
「ないわよ」
相変わらず心配性ね。まあ目下国家連合反対派には睨まれている身だから危険だけど、守りの固いウニバーシタス帝国ポステーロス城にいるのだから安全は確保されている。というか隣のエールが過保護なので問題ない。
「ところでどう? 国際平和騎士団は機能してる?」
「騎士団長と副団長がいるから大丈夫」
「働きやすい」
「そう、よかったわ」
第二皇子ヴォックスとユースティーツィアが手掛けているから問題はない。二人はまだ帝国の騎士団もやってるけど、帝国の騎士団を国際平和騎士団に吸収する予定だ。国家連合が目の前に来ている。
「あら、あっちの子は集落の子?」
「うん」
「今年は三人入った」
双子が呼んでこちらに来るいかにも新人な騎士三人。同郷の、双子と同じ集落にいた子で、騎士学院入ってその後双子に憧れて騎士団に入ったとか。いい傾向ね。自立できる力を持つことは今後も必要だ。
緊張気味に挨拶され、同郷だから気さくにと返してもガチガチのまま。どうやら市場に出回っている私の印象はなんだかすごいことした人になっているらしい。
「そうだ。貴方たち、お守り持ってる?」
お守りとは魔石のことで集落を出る時は一人一つ持つはずのものだ。
なのに三人は首を横に振る。
「どうして?」
「違法にとろうとする人間が出てきて制限かかった」
「ああ」
サクがやってくれたやつか。仕方ない、変な男の手に渡っても困る。
「なら私の持ってるのあげるわ」
「そんな」
「滅相もない」
「いいのよ。城に戻ればたくさんあるし」
けど手持ちが二個しかなかった。するとエールがするりと一つだした。
「なら私のものを」
「いいの?」
「ええ。あなたの大切な同郷の子達ですので」
渡して触れても砕けないから大丈夫ね。私の待つ魔石、私が誰かに渡した魔石は私に対して悪意や後ろめたいことがあると砕けるよう魔術を施している。この子たちは問題ないわね。エールからのものも砕けないし。
「エール、城に戻ったら一つ渡すわ」
「ありがとうございます」
三人の新人騎士は嬉しそうに笑って持ち場に戻る。双子とも別れを告げる時、妙に真剣な顔立ちで双子が口を開いた。
「フィクタ、最近大陸でよくない動きがある」
「注意してほしい」
「詳しく聞かせて下さい」
エールがのってきた。双子は嫌がる素振りを見せない。ということはそこそこ重度な話ね。
「プレケスで逃れた蛮族と一部の過激派が手を組んで大きな組織になったって」
「近い内に帝国に攻撃するか、プレケス付近で襲撃があるかもしれないって」
「……なるほどね」
いくらプレケスの英雄が大成功を納めても全てを攻略できているわけがない。元々それぞれの族が集まった集団、状況が不利になればすぐに場を離れる人間もいるだろう。そして戦争で利益を得ているところもあるから、蛮族にとっても国家連合は目障りだ。争いが起きている方が儲けるから。
「商人たちの情報だから」
「大陸規模ってことね」
あちこちの国を行き来する商人たちのネットワークであれば正しいだろう。彼らは儲け主義だ。それが損なわれることがあれば防ごうとこちら側にリークされて当然。
「面倒なことになってきたわね」
「大丈夫です。私が守ります」
「そこじゃないわよ」
「いいえ。フィクタは自身を蔑ろにして他人を守ろうとするでしょう?」
そんなことないと言おうとしたら双子が頷いた。エールのことあんなに敵視したのにそういうとこ仲良くなる必要ある?
「フィクタはこの問題をどうにかしようとする」
「で、無理する。それなら僕達が大きな事件にしなければいい」
「そして私がフィクタを近い悪意から守れば問題は解決します」
「なによ、貴方たち」
三人がガシっと握手し始めた。解せぬ。
エールってば双子の国際平和騎士団加入にあたってなにか吹き込んだわね。こんなすぐに仲良くなれるなんておかしいもの。
「いいわ。ここは貴方たち騎士団に任せる」
「うん」
「帰るわ」
「うん」
侯爵夫妻にも挨拶して帰る。幸い侯爵はこうしたことに慣れていた。慣れないでほしいことだけど、長年生きてると貴族というだけで狙われることも多い。当面国際平和騎士団が定期的に見回ることと侯爵家での護衛強化を行うという。帝国重鎮なだけあり、保持武力は中々のもの。今回の侵入でプライドを傷つけられた侯爵家の面々がやる気になっているから大丈夫ね。
十年以上経っていたから、どこかでゆるんでいたんだと思う。
それは数刻前に遡る。
「フィクタ」
「フィクタ」
「フリーゴス、カロル」
マジア侯爵家に強盗が入った。強盗とは言いつつも何も盗られてないらしい。護衛が気づいて現場に向かうと強盗はすぐ逃げ去ったという。
城で働く身として親族としてマジア侯爵家に行くと、先見隊として国際平和騎士団の数名が向かったと聞いていた。そこに双子がいて、すぐに私のところへ駆けてくる。
「お仕事お疲れ様」
「フィクタ、大丈夫?」
「なにか変なこと起きてない?」
「ないわよ」
相変わらず心配性ね。まあ目下国家連合反対派には睨まれている身だから危険だけど、守りの固いウニバーシタス帝国ポステーロス城にいるのだから安全は確保されている。というか隣のエールが過保護なので問題ない。
「ところでどう? 国際平和騎士団は機能してる?」
「騎士団長と副団長がいるから大丈夫」
「働きやすい」
「そう、よかったわ」
第二皇子ヴォックスとユースティーツィアが手掛けているから問題はない。二人はまだ帝国の騎士団もやってるけど、帝国の騎士団を国際平和騎士団に吸収する予定だ。国家連合が目の前に来ている。
「あら、あっちの子は集落の子?」
「うん」
「今年は三人入った」
双子が呼んでこちらに来るいかにも新人な騎士三人。同郷の、双子と同じ集落にいた子で、騎士学院入ってその後双子に憧れて騎士団に入ったとか。いい傾向ね。自立できる力を持つことは今後も必要だ。
緊張気味に挨拶され、同郷だから気さくにと返してもガチガチのまま。どうやら市場に出回っている私の印象はなんだかすごいことした人になっているらしい。
「そうだ。貴方たち、お守り持ってる?」
お守りとは魔石のことで集落を出る時は一人一つ持つはずのものだ。
なのに三人は首を横に振る。
「どうして?」
「違法にとろうとする人間が出てきて制限かかった」
「ああ」
サクがやってくれたやつか。仕方ない、変な男の手に渡っても困る。
「なら私の持ってるのあげるわ」
「そんな」
「滅相もない」
「いいのよ。城に戻ればたくさんあるし」
けど手持ちが二個しかなかった。するとエールがするりと一つだした。
「なら私のものを」
「いいの?」
「ええ。あなたの大切な同郷の子達ですので」
渡して触れても砕けないから大丈夫ね。私の待つ魔石、私が誰かに渡した魔石は私に対して悪意や後ろめたいことがあると砕けるよう魔術を施している。この子たちは問題ないわね。エールからのものも砕けないし。
「エール、城に戻ったら一つ渡すわ」
「ありがとうございます」
三人の新人騎士は嬉しそうに笑って持ち場に戻る。双子とも別れを告げる時、妙に真剣な顔立ちで双子が口を開いた。
「フィクタ、最近大陸でよくない動きがある」
「注意してほしい」
「詳しく聞かせて下さい」
エールがのってきた。双子は嫌がる素振りを見せない。ということはそこそこ重度な話ね。
「プレケスで逃れた蛮族と一部の過激派が手を組んで大きな組織になったって」
「近い内に帝国に攻撃するか、プレケス付近で襲撃があるかもしれないって」
「……なるほどね」
いくらプレケスの英雄が大成功を納めても全てを攻略できているわけがない。元々それぞれの族が集まった集団、状況が不利になればすぐに場を離れる人間もいるだろう。そして戦争で利益を得ているところもあるから、蛮族にとっても国家連合は目障りだ。争いが起きている方が儲けるから。
「商人たちの情報だから」
「大陸規模ってことね」
あちこちの国を行き来する商人たちのネットワークであれば正しいだろう。彼らは儲け主義だ。それが損なわれることがあれば防ごうとこちら側にリークされて当然。
「面倒なことになってきたわね」
「大丈夫です。私が守ります」
「そこじゃないわよ」
「いいえ。フィクタは自身を蔑ろにして他人を守ろうとするでしょう?」
そんなことないと言おうとしたら双子が頷いた。エールのことあんなに敵視したのにそういうとこ仲良くなる必要ある?
「フィクタはこの問題をどうにかしようとする」
「で、無理する。それなら僕達が大きな事件にしなければいい」
「そして私がフィクタを近い悪意から守れば問題は解決します」
「なによ、貴方たち」
三人がガシっと握手し始めた。解せぬ。
エールってば双子の国際平和騎士団加入にあたってなにか吹き込んだわね。こんなすぐに仲良くなれるなんておかしいもの。
「いいわ。ここは貴方たち騎士団に任せる」
「うん」
「帰るわ」
「うん」
侯爵夫妻にも挨拶して帰る。幸い侯爵はこうしたことに慣れていた。慣れないでほしいことだけど、長年生きてると貴族というだけで狙われることも多い。当面国際平和騎士団が定期的に見回ることと侯爵家での護衛強化を行うという。帝国重鎮なだけあり、保持武力は中々のもの。今回の侵入でプライドを傷つけられた侯爵家の面々がやる気になっているから大丈夫ね。
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