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5話 誘拐監禁だって? 皆が黙認すれば大丈夫!
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「主人! なんてことを!」
「え、ヴァン、そんな怒ること?」
「他の聖女の精霊を奪うのも御法度ですが、瘴気を帯びた精霊を消滅させずに生かしてることも問題です!」
「えーかたいこと言わないで」
私の言葉にヴァンはさらに目を吊り上げた。
あ、これお母さん怒ったわよモードだ、だめなやつ。
「誘拐に加えて監禁してるんですよ!? わかってます!?」
「皆が黙認すれば大丈夫!」
「馬鹿言うんじゃありません! 大聖女様達が黙っていませんよ?!」
「私さあ、堅苦しい組織の決まり好きじゃないんだよね」
「そういうことを問うているのではありません!」
一応この聖女の世界、最低限のルールがある。他人の精霊を奪うのだめとか、聖女同士で争うなとかそういうやつ。
「私達聖女は瘴気を浄化出来るんだよ」
「知ってるよー?」
フーが人差し指を口元に添えて小首を傾げている。この子はいつだって分かってやってるけど、その所作可愛いなもう。中学生アイドル、これがフーちゃんにはふさわしい。
「フーちゃん、つまりだね、私はサリュークレから溢れる瘴気を浄化するつもりなのだよ、キリッ」
「待てよ、エクラ」
「なに、フルール」
見た目は中学生なのに、所作がイケメンで男前だな。実に素晴らしい。
これで花の精霊とか、世界の法則バグってるんじゃないって思える。花の精霊ってきいたら、少女漫画顔負けの可愛い女の子のイメージだったよ。
「迎え入れるのか?」
「ご名答ご明察だね、好き」
察したフルールの発言に周囲がざわつく。ヴァンやオールみたく分かっているのもいたけど。
「私はサリュークレを助ける」
「おま、馬鹿か? あの婆達はそいつ消せって言うぞ?」
「優しいねええ、ルル。分かってるよ、でもやる」
見た目ヤンキーなのに優しいよねえ、リュミエール。これで光の精霊だって言うんだから、こっちもこっちでイメージとは違うよ、全然オッケー。ヤンキーが優しいとかそれだけで胸が熱い。
「てか私、精霊に恵まれすぎてない? あ、これが祝福とかそういうやつ?」
「エクラ、戻ってきて」
「おっと、ごめんシュリ」
「いつものことだからねー」
困ったように笑う。
そして、屋敷の奥から一際長身でガタイのいいイケメンが静かに声をあげた。これで座敷童とかいうんだから、常識ひっくり返るわ。ちなみに座敷童という言葉は私しか使っていない。
そう、彼はメゾン。家に宿る精霊だ。
「主、言いたいことはわかるよ? けど経緯がよくわからない。そこも話してくれると嬉しいな?」
「はあああイケメンは発言もイケメンだね、いいよ話す!」
師匠が亡くなったこと。師匠んとこの精霊も恐らくサリュークレにやられたこと。師匠の遺言まで全部話した。
「お前が見たのって、全部終わった後のことじゃねえか。本当にそいつがやったんだろうな?」
「それならサリュークレを起こして訊けば分かるだろう?」
「えー? 瘴気持ちでしょ? 襲ってこない?」
「俺達がエクラを守ればいい。エクラさえ無事なら俺達の傷なんてすぐ治るさ」
「フルール、男前すぎて痺れる」
「おう、ありがとな」
待てと、ルルがさらに口を挟む。
「俺達と魔の区別をどこでしてると思ってんだ?」
「瘴気の有無でしょ」
「なら、お前わかんだろ」
「それでも助ける」
「俺達はいつどこでどうなるかしんねえ。そいつに影響されて俺達が魔に堕ちたらお前が危ねえだろうが」
「優しすぎかよ、好き」
「からかうんじゃねえ! 真面目な話してんだぞ!」
魔なるものの正体は精霊だ。
精霊の成れの果て。
なんらかの要因で瘴気を帯び、それを深く取り込むことによって異形となる。
つまり私達聖女は、精霊に同士討ち、共食い的なことをさせている。
なかなかえぐい。
「私は真面目に言ってる。サリュークレを助けるんだって」
「おま」
「ごめんね、リュミエール。エクラもう譲らないわ」
「シュリエ、お前がいんのに何してんだよ」
「いや、旦那。シュリエだから止めなかったんだろう」
というよりもここの精霊達、私のこと止めないし。やりたいということをいつも許して応援してくれる。そういう人たちしかいないじゃない。
「くそ、無鉄砲なお前を守る身にもなれって」
「それでも守ってくれるルル格好よすぎだよ、今度デートしよ」
「ああ、買い出しか? わかった」
「違う」
言葉を発しなかった子達も頷いたから、ひとまず周囲の了承は得た。
ここまでは簡単だろう。
問題は起こした後。サリュークレがどうでるかだ。
「じゃ、やるね」
掌に転がした翡翠に一息かける。
瘴気が翡翠からあふれ出てくる。幸い、私の結界内で一定の瘴気を浄化しているから、皆が瘴気にあてられる事はなさそう。
「……」
見た目はあまり変化がないけど、周囲が僅かに力を入れて構えた。受け入れてはいるけど、やっぱり緊張はするか。
徐々に姿が現れ、輪郭がはっきりしたサリュークレは瘴気を纏っていて、着る服もよく見れば黒く染まっている部分がある。見た目に影響が出ているということは結構重症ね。
「サリュークレ」
「……」
ゆっくり瞼をあげる。瞳の片方は黒く染まり、記憶にある綺麗な金色はどこにもなかった。けど、影響のない片方は見知った金色で、そこに安心して息をついた。
「え、ヴァン、そんな怒ること?」
「他の聖女の精霊を奪うのも御法度ですが、瘴気を帯びた精霊を消滅させずに生かしてることも問題です!」
「えーかたいこと言わないで」
私の言葉にヴァンはさらに目を吊り上げた。
あ、これお母さん怒ったわよモードだ、だめなやつ。
「誘拐に加えて監禁してるんですよ!? わかってます!?」
「皆が黙認すれば大丈夫!」
「馬鹿言うんじゃありません! 大聖女様達が黙っていませんよ?!」
「私さあ、堅苦しい組織の決まり好きじゃないんだよね」
「そういうことを問うているのではありません!」
一応この聖女の世界、最低限のルールがある。他人の精霊を奪うのだめとか、聖女同士で争うなとかそういうやつ。
「私達聖女は瘴気を浄化出来るんだよ」
「知ってるよー?」
フーが人差し指を口元に添えて小首を傾げている。この子はいつだって分かってやってるけど、その所作可愛いなもう。中学生アイドル、これがフーちゃんにはふさわしい。
「フーちゃん、つまりだね、私はサリュークレから溢れる瘴気を浄化するつもりなのだよ、キリッ」
「待てよ、エクラ」
「なに、フルール」
見た目は中学生なのに、所作がイケメンで男前だな。実に素晴らしい。
これで花の精霊とか、世界の法則バグってるんじゃないって思える。花の精霊ってきいたら、少女漫画顔負けの可愛い女の子のイメージだったよ。
「迎え入れるのか?」
「ご名答ご明察だね、好き」
察したフルールの発言に周囲がざわつく。ヴァンやオールみたく分かっているのもいたけど。
「私はサリュークレを助ける」
「おま、馬鹿か? あの婆達はそいつ消せって言うぞ?」
「優しいねええ、ルル。分かってるよ、でもやる」
見た目ヤンキーなのに優しいよねえ、リュミエール。これで光の精霊だって言うんだから、こっちもこっちでイメージとは違うよ、全然オッケー。ヤンキーが優しいとかそれだけで胸が熱い。
「てか私、精霊に恵まれすぎてない? あ、これが祝福とかそういうやつ?」
「エクラ、戻ってきて」
「おっと、ごめんシュリ」
「いつものことだからねー」
困ったように笑う。
そして、屋敷の奥から一際長身でガタイのいいイケメンが静かに声をあげた。これで座敷童とかいうんだから、常識ひっくり返るわ。ちなみに座敷童という言葉は私しか使っていない。
そう、彼はメゾン。家に宿る精霊だ。
「主、言いたいことはわかるよ? けど経緯がよくわからない。そこも話してくれると嬉しいな?」
「はあああイケメンは発言もイケメンだね、いいよ話す!」
師匠が亡くなったこと。師匠んとこの精霊も恐らくサリュークレにやられたこと。師匠の遺言まで全部話した。
「お前が見たのって、全部終わった後のことじゃねえか。本当にそいつがやったんだろうな?」
「それならサリュークレを起こして訊けば分かるだろう?」
「えー? 瘴気持ちでしょ? 襲ってこない?」
「俺達がエクラを守ればいい。エクラさえ無事なら俺達の傷なんてすぐ治るさ」
「フルール、男前すぎて痺れる」
「おう、ありがとな」
待てと、ルルがさらに口を挟む。
「俺達と魔の区別をどこでしてると思ってんだ?」
「瘴気の有無でしょ」
「なら、お前わかんだろ」
「それでも助ける」
「俺達はいつどこでどうなるかしんねえ。そいつに影響されて俺達が魔に堕ちたらお前が危ねえだろうが」
「優しすぎかよ、好き」
「からかうんじゃねえ! 真面目な話してんだぞ!」
魔なるものの正体は精霊だ。
精霊の成れの果て。
なんらかの要因で瘴気を帯び、それを深く取り込むことによって異形となる。
つまり私達聖女は、精霊に同士討ち、共食い的なことをさせている。
なかなかえぐい。
「私は真面目に言ってる。サリュークレを助けるんだって」
「おま」
「ごめんね、リュミエール。エクラもう譲らないわ」
「シュリエ、お前がいんのに何してんだよ」
「いや、旦那。シュリエだから止めなかったんだろう」
というよりもここの精霊達、私のこと止めないし。やりたいということをいつも許して応援してくれる。そういう人たちしかいないじゃない。
「くそ、無鉄砲なお前を守る身にもなれって」
「それでも守ってくれるルル格好よすぎだよ、今度デートしよ」
「ああ、買い出しか? わかった」
「違う」
言葉を発しなかった子達も頷いたから、ひとまず周囲の了承は得た。
ここまでは簡単だろう。
問題は起こした後。サリュークレがどうでるかだ。
「じゃ、やるね」
掌に転がした翡翠に一息かける。
瘴気が翡翠からあふれ出てくる。幸い、私の結界内で一定の瘴気を浄化しているから、皆が瘴気にあてられる事はなさそう。
「……」
見た目はあまり変化がないけど、周囲が僅かに力を入れて構えた。受け入れてはいるけど、やっぱり緊張はするか。
徐々に姿が現れ、輪郭がはっきりしたサリュークレは瘴気を纏っていて、着る服もよく見れば黒く染まっている部分がある。見た目に影響が出ているということは結構重症ね。
「サリュークレ」
「……」
ゆっくり瞼をあげる。瞳の片方は黒く染まり、記憶にある綺麗な金色はどこにもなかった。けど、影響のない片方は見知った金色で、そこに安心して息をついた。
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