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最小限の魔力、最低限の魔法
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「とりあえず言われるがままグラウンド来たけどよ、ここで何すんだっけ?」
「ちゃんと話聞いとけよ……クラス分けをする選定会? とかいうのをするから、グラウンドに用意されてる魔法試験場に向かえって言われたろ。 もう忘れたのか?」
「おお、そういえばそうだった! すっかり忘れてたぜ、はっはっは!」
ほんの数分前の事を忘れるとか、よく入学試験をパス出来たな、こいつ。
まあでも試験自体は中学生でも解けるレベルだったから、落ちる方がおかしいか。
それはそれとして、あれが魔法試験場だな。
グラウンドの中央に佇む二メートルほどのゴーレムを、試験官数人が囲んでいる。
鑑定。
「ヴァーラゴーレム。 ミスリルを含む事で魔法耐性を上げた対魔法師用のゴーレム、か」
……なるほど、つまりあれに魔法をぶつけて壊すのが、この試験の内容なんだな。
思ったより楽勝そうだ。
「うおおっ、すげえ! 本物のヴァーラゴーレムじゃん! 初めて見たぜ!」
「あれ、そんな珍しいもんなの?」
「そりゃそうだろ、なんたって時価で金貨500枚はくだらない高級ゴーレムだからな。 レオール学園ぐらいの名門校じゃねえと、そうそうお目にかかれない代物だぞ」
え……?
「ちょっと待って。 試験の目的ってあれを壊す事じゃないのか? 俺はてっきり……」
「はあ? お前、何言ってんだ? んなもん……おっ、始まるみたいだぜ!」
どうやら早速クラス分け試験が開始されるらしく、一人目の生徒が魔法を放つ所だった。
「炎よ、焼き尽くせ! ファイアーボール!」
火の粉かな。
「おし、当たった!」
しょぼ……ゴーレムの表面を煤けさせただけで終わってしまった。
「はい。 では次の方、前へ」
「よろしくお願いします! 風の刃よ、切り裂け! ブルームカッター!」
そよ風かな。
一応は当たったが、切り傷一つ付いていない。
まさかとは思うが、こいつら……。
「行きます! 水よ、射ち貫け! アクアショット!」
やっぱりそうだ。
こいつら全員、魔法の質が低すぎる!
嘘だろ、なんだこの低レベルの魔法の数々は。
お遊戯会じゃないんだぞ。
もっとこう、あるだろ!
強烈な一撃を放てる魔法が!
しかしその後の生徒もみな同じレベルばかりで、見るに堪えないものばかりだった。
それでも試験はつつがなく進み、遂に終盤に差し掛かる。
「次! マーク=オルガ!」
「頑張ってください、マーク様!」
「応援してます!」
「ああ」
なんだ……?
いかにもお坊ちゃまって感じのオールバックの男が出てきたら、ザワザワし始めたぞ。
有名な奴なのか?
「ダスティ、あいつは?」
「なんだよ、知らねえのか? リュートって結構世間知らずなんだな」
ほっとけ。
「あいつはマーク。 生まれも育ちも王都出身の、上流貴族のお坊ちゃんだ。 かなりデカイ家柄らしくてよ、ああやって取り巻きを連れ歩いてるんだが、素行が悪いもんで周囲からは怖がられてんだ」
「へぇ……」
こりゃまためんどくさそうな奴が……。
「……大地よ、穿て! アースグレイブ!」
ほう、地面から土の槍を突き刺す魔法か。
なかなかどうして悪くない。
俺の砂鉄を固めた鉄の槍に比べたらだいぶ見劣りはするが、今までの奴らに比べたら雲泥の差だろう。
「へっ、どうだ俺の魔法は! てめえら凡人とはちげえんだよ!」
「流石です、マーク様!」
「お見それしました!」
が、そこまで誉める程でもないと思う。
下手に誉めすぎると増長するからやめた方が良いんじゃないかな。
「次! フィオ=ノート! 前へ!」
「はい!」
「……ふむ、珍しいですね。 剣を用いての魔法ですか」
フィオは剣を構えると、刀身に魔力を流していく。
「行きますよ、イフリート。 いつもみたいに力を貸してください。 ……業火の憐憫、魁獄の腕! 破邪顕正を纒いし紅蓮の刃! 出でよ、魔法剣フラムベルジュ!」
そうして出来上がったのは、燃え盛る剣、フラムベルジュ。
ゲームなんかで有名な、あの魔法の剣である。
「魔法剣!? 何者だよ、あいつ! なんであんな高度な魔法なんか……!」
「噂には聞いたことあるけど、実物は初めて見た……」
「はああっ!」
野次馬が騒ぎ立てるも、集中して誰の声も耳に入っていないフィオは、ただゴーレムのみを見据えフランベルジュの一撃をお見舞いする。
「マジかよ……ゴーレムに傷を付けやがった……」
やるな、誰も傷つけられなかったゴーレムに斬り傷を残したか。
だが、アリンに比べたらまだまだ。
あいつの刻印剣なら間違いなく、ゴーレムを一刀両断していただろう。
なにせあいつは俺が鍛えた、アルヴィン様をも越える逸材だからな。
そのくらいアリンならお茶の子さいさいだ。
「ふぅ……」
「お見事でした、フィオ=ノート」
「ありがとうございました」
フィオはお辞儀をすると、こっちに向かって歩いてきた。
「どうでしたか、リュート。 わたしの剣は」
「良かったんじゃないか? アリンには程遠いけど」
「は、はは……そうですか……」
「……チッ」
ん……?
舌打ちが聞こえてきた方角を見ると、マークがフィオを睨んでいた。
こりゃあ余計な不興を買っちまったかな。
何も起こらなきゃ良いが。
「んじゃ、俺も行ってくるわ! 見てろよ、リュート! 活躍してくっからよ!」
「はいよ」
適当に返事をしてやると、ダスティはサムズアップしてゴーレムの元へと走っていった。
「あの方はお友達ですか?」
「うん、まあね。 さっき知り合った」
「さっき……なんというか、リュートは人付き合いが上手くて羨ましいです。 わたしはその、人付き合いがどうも苦手で」
そんな感じはする。
距離感もちょっとおかしい時あるし。
「なあ、あいつってもしかしてダスティじゃね? ほら、将軍の息子の」
「ほんとだ。 レオールに入学してたのか、知らなかったわ」
ダスティって、将軍の息子だったのか。
俺も知らなかったな。
まあまだ知り合ったばっかりだし、わざわざ教える義理はないか。
教えてくれるまで知らん振りしておこう。
「おっしゃ、やってやるぜ! さっさとてめえはぶっ倒れてろよ、木偶の坊! これが俺の固有魔法……!」
おおっ、固有魔法!
この世界にはそんなのもあるのか!
「グランドスラム! どらあっ!」
「ッ! ゴーレムにヒビが!」
「今何が起きたんだ!? ダスティがゴーレムを殴った瞬間、亀裂が入ったぞ!」
「あれって本当に魔法なのか? 殴っただけにしか見えなかったけど」
普通に観察していたら、確かに殴ったようにしか見えない。
しかし、ステータスがカンストしている俺には、ダスティが何をしたのか手に取るようにわかる。
恐らくダスティは、二つの魔法を同時に放てるのだろう。
まず、あいつがしたのは魔力によるステータスの大幅強化。
そして次にやったのは、その強化された拳から放たれた威力と衝撃波を数倍に跳ね上がらせる、放出魔法。
ダスティはこの二つを同時に繰り出していた。
多分、あいつの固有魔法はグランドスラムじゃない。
グランドスラムはただの技名で、本当の名はダブルキャスト。
同時詠唱だと思われる。
しかも、肉弾戦に特化した魔法を組み合わせ、超至近距離を得意とする、特化型魔法。
それがダスティの魔法の正体だ。
あくまで推測に過ぎないが。
「そこまで! ダスティ=ストレングス、もう十分です。 下がりなさい」
「うっす! あざっした!」
まったく、フィオと良いダスティと良い、粒揃いだな、俺の友達は。
お陰で入学早々幸先が良いスタートが切れそうだ。
この二人と一緒に居れば、俺が目立つ事はそう……。
「次! リュート=ヴェルエスタ! 前へ!」
「やれやれ、やっと俺の番か。 それじゃ行ってくるよ、二人とも。 応援よろしく」
「気楽にやれよー! 無茶しなくて良いからな!」
「怪我だけはしないようにー!」
もちろん、無茶はしない。
壊さなくて良いのなら、存分に手を抜かせて貰うさ。
目指せ、中堅!
「よろしくお願いしまっす!」
「来ましたね、リュート=ヴェルエスタ。 学園長から貴方にはヴァーラゴーレムの最新型。 ミスリルゴーレムを使うよう、指示が下っております。 少しそこで待っていなさい」
「へ……?」
ヴァーラゴーレムが何処かに持ってかれたと思ったら、入れ替わりに水晶のゴーレムがやってきた。
「ミ……ミスリルゴーレム!? 冗談だろ……」
「あれに比べたらヴァーラゴーレムなんかオモチャ同然だぞ」
「学園長からの指示って、あいつ何者だよ」
「ごくり……こいつは見逃せねえ……」
めっちゃ注目されてるぅぅぅ!
なーにしてくれてんですか、学園長!
これじゃあ折角立てた、三年間ひっそりと学園生活を終える計画がパーじゃねえか!
「でもさ、あいつも俺らと同じ学生なんだろ? ならミスリルゴーレムを傷つけるなんて、土台無理じゃね?」
……お?
「だよな、俺もそう思う」
「ミスリルゴーレムって、魔力完全耐性持ちなんでしょ? なら絶対無理じゃん」
「なーんだ、期待して損したー」
これはもしや、チャンス到来では?
誰も彼もが無理だと思っているってことは、別に失敗してもなんら問題ないってことだよね。
ホッ、これならなんとかなりそうだ。
軽く炎魔法でもやっときゃ、後はなあなあになるだろ。
あー、よかったよかった。
「準備は良いですか、リュート=ヴェルエスタ」
「はい! いつでもどうぞ!」
「では……始め!」
「いきます! ファイアーボール!」
よし!
最小限の魔力かつ、最も威力の低い魔法を撃つことに成功した!
これなら……!
────ドオオオオオン!
「え……」
「きゃああああ!」
「いいっ!?」
……脆っ!
脆い、脆すぎるよ、ミスリルゴーレムくん!
爆散しちゃったよ、おい!
「ちょ、なんなのよ、この爆発! あいつが撃ったのってファイアーボールだったわよね! ファイアーボールってこんな威力だった!?」
「しかも無詠唱だったぞ、あいつ!」
「私知らない! こんなファイアーボール、私知らない!」
「あああああ……ミスリルゴーレムが粉々に…………金貨700枚が……」
あれだけ目立つなって色んな人に注意されてたのに、結局目立っちゃった……。
これからどうしよう。
「ちゃんと話聞いとけよ……クラス分けをする選定会? とかいうのをするから、グラウンドに用意されてる魔法試験場に向かえって言われたろ。 もう忘れたのか?」
「おお、そういえばそうだった! すっかり忘れてたぜ、はっはっは!」
ほんの数分前の事を忘れるとか、よく入学試験をパス出来たな、こいつ。
まあでも試験自体は中学生でも解けるレベルだったから、落ちる方がおかしいか。
それはそれとして、あれが魔法試験場だな。
グラウンドの中央に佇む二メートルほどのゴーレムを、試験官数人が囲んでいる。
鑑定。
「ヴァーラゴーレム。 ミスリルを含む事で魔法耐性を上げた対魔法師用のゴーレム、か」
……なるほど、つまりあれに魔法をぶつけて壊すのが、この試験の内容なんだな。
思ったより楽勝そうだ。
「うおおっ、すげえ! 本物のヴァーラゴーレムじゃん! 初めて見たぜ!」
「あれ、そんな珍しいもんなの?」
「そりゃそうだろ、なんたって時価で金貨500枚はくだらない高級ゴーレムだからな。 レオール学園ぐらいの名門校じゃねえと、そうそうお目にかかれない代物だぞ」
え……?
「ちょっと待って。 試験の目的ってあれを壊す事じゃないのか? 俺はてっきり……」
「はあ? お前、何言ってんだ? んなもん……おっ、始まるみたいだぜ!」
どうやら早速クラス分け試験が開始されるらしく、一人目の生徒が魔法を放つ所だった。
「炎よ、焼き尽くせ! ファイアーボール!」
火の粉かな。
「おし、当たった!」
しょぼ……ゴーレムの表面を煤けさせただけで終わってしまった。
「はい。 では次の方、前へ」
「よろしくお願いします! 風の刃よ、切り裂け! ブルームカッター!」
そよ風かな。
一応は当たったが、切り傷一つ付いていない。
まさかとは思うが、こいつら……。
「行きます! 水よ、射ち貫け! アクアショット!」
やっぱりそうだ。
こいつら全員、魔法の質が低すぎる!
嘘だろ、なんだこの低レベルの魔法の数々は。
お遊戯会じゃないんだぞ。
もっとこう、あるだろ!
強烈な一撃を放てる魔法が!
しかしその後の生徒もみな同じレベルばかりで、見るに堪えないものばかりだった。
それでも試験はつつがなく進み、遂に終盤に差し掛かる。
「次! マーク=オルガ!」
「頑張ってください、マーク様!」
「応援してます!」
「ああ」
なんだ……?
いかにもお坊ちゃまって感じのオールバックの男が出てきたら、ザワザワし始めたぞ。
有名な奴なのか?
「ダスティ、あいつは?」
「なんだよ、知らねえのか? リュートって結構世間知らずなんだな」
ほっとけ。
「あいつはマーク。 生まれも育ちも王都出身の、上流貴族のお坊ちゃんだ。 かなりデカイ家柄らしくてよ、ああやって取り巻きを連れ歩いてるんだが、素行が悪いもんで周囲からは怖がられてんだ」
「へぇ……」
こりゃまためんどくさそうな奴が……。
「……大地よ、穿て! アースグレイブ!」
ほう、地面から土の槍を突き刺す魔法か。
なかなかどうして悪くない。
俺の砂鉄を固めた鉄の槍に比べたらだいぶ見劣りはするが、今までの奴らに比べたら雲泥の差だろう。
「へっ、どうだ俺の魔法は! てめえら凡人とはちげえんだよ!」
「流石です、マーク様!」
「お見それしました!」
が、そこまで誉める程でもないと思う。
下手に誉めすぎると増長するからやめた方が良いんじゃないかな。
「次! フィオ=ノート! 前へ!」
「はい!」
「……ふむ、珍しいですね。 剣を用いての魔法ですか」
フィオは剣を構えると、刀身に魔力を流していく。
「行きますよ、イフリート。 いつもみたいに力を貸してください。 ……業火の憐憫、魁獄の腕! 破邪顕正を纒いし紅蓮の刃! 出でよ、魔法剣フラムベルジュ!」
そうして出来上がったのは、燃え盛る剣、フラムベルジュ。
ゲームなんかで有名な、あの魔法の剣である。
「魔法剣!? 何者だよ、あいつ! なんであんな高度な魔法なんか……!」
「噂には聞いたことあるけど、実物は初めて見た……」
「はああっ!」
野次馬が騒ぎ立てるも、集中して誰の声も耳に入っていないフィオは、ただゴーレムのみを見据えフランベルジュの一撃をお見舞いする。
「マジかよ……ゴーレムに傷を付けやがった……」
やるな、誰も傷つけられなかったゴーレムに斬り傷を残したか。
だが、アリンに比べたらまだまだ。
あいつの刻印剣なら間違いなく、ゴーレムを一刀両断していただろう。
なにせあいつは俺が鍛えた、アルヴィン様をも越える逸材だからな。
そのくらいアリンならお茶の子さいさいだ。
「ふぅ……」
「お見事でした、フィオ=ノート」
「ありがとうございました」
フィオはお辞儀をすると、こっちに向かって歩いてきた。
「どうでしたか、リュート。 わたしの剣は」
「良かったんじゃないか? アリンには程遠いけど」
「は、はは……そうですか……」
「……チッ」
ん……?
舌打ちが聞こえてきた方角を見ると、マークがフィオを睨んでいた。
こりゃあ余計な不興を買っちまったかな。
何も起こらなきゃ良いが。
「んじゃ、俺も行ってくるわ! 見てろよ、リュート! 活躍してくっからよ!」
「はいよ」
適当に返事をしてやると、ダスティはサムズアップしてゴーレムの元へと走っていった。
「あの方はお友達ですか?」
「うん、まあね。 さっき知り合った」
「さっき……なんというか、リュートは人付き合いが上手くて羨ましいです。 わたしはその、人付き合いがどうも苦手で」
そんな感じはする。
距離感もちょっとおかしい時あるし。
「なあ、あいつってもしかしてダスティじゃね? ほら、将軍の息子の」
「ほんとだ。 レオールに入学してたのか、知らなかったわ」
ダスティって、将軍の息子だったのか。
俺も知らなかったな。
まあまだ知り合ったばっかりだし、わざわざ教える義理はないか。
教えてくれるまで知らん振りしておこう。
「おっしゃ、やってやるぜ! さっさとてめえはぶっ倒れてろよ、木偶の坊! これが俺の固有魔法……!」
おおっ、固有魔法!
この世界にはそんなのもあるのか!
「グランドスラム! どらあっ!」
「ッ! ゴーレムにヒビが!」
「今何が起きたんだ!? ダスティがゴーレムを殴った瞬間、亀裂が入ったぞ!」
「あれって本当に魔法なのか? 殴っただけにしか見えなかったけど」
普通に観察していたら、確かに殴ったようにしか見えない。
しかし、ステータスがカンストしている俺には、ダスティが何をしたのか手に取るようにわかる。
恐らくダスティは、二つの魔法を同時に放てるのだろう。
まず、あいつがしたのは魔力によるステータスの大幅強化。
そして次にやったのは、その強化された拳から放たれた威力と衝撃波を数倍に跳ね上がらせる、放出魔法。
ダスティはこの二つを同時に繰り出していた。
多分、あいつの固有魔法はグランドスラムじゃない。
グランドスラムはただの技名で、本当の名はダブルキャスト。
同時詠唱だと思われる。
しかも、肉弾戦に特化した魔法を組み合わせ、超至近距離を得意とする、特化型魔法。
それがダスティの魔法の正体だ。
あくまで推測に過ぎないが。
「そこまで! ダスティ=ストレングス、もう十分です。 下がりなさい」
「うっす! あざっした!」
まったく、フィオと良いダスティと良い、粒揃いだな、俺の友達は。
お陰で入学早々幸先が良いスタートが切れそうだ。
この二人と一緒に居れば、俺が目立つ事はそう……。
「次! リュート=ヴェルエスタ! 前へ!」
「やれやれ、やっと俺の番か。 それじゃ行ってくるよ、二人とも。 応援よろしく」
「気楽にやれよー! 無茶しなくて良いからな!」
「怪我だけはしないようにー!」
もちろん、無茶はしない。
壊さなくて良いのなら、存分に手を抜かせて貰うさ。
目指せ、中堅!
「よろしくお願いしまっす!」
「来ましたね、リュート=ヴェルエスタ。 学園長から貴方にはヴァーラゴーレムの最新型。 ミスリルゴーレムを使うよう、指示が下っております。 少しそこで待っていなさい」
「へ……?」
ヴァーラゴーレムが何処かに持ってかれたと思ったら、入れ替わりに水晶のゴーレムがやってきた。
「ミ……ミスリルゴーレム!? 冗談だろ……」
「あれに比べたらヴァーラゴーレムなんかオモチャ同然だぞ」
「学園長からの指示って、あいつ何者だよ」
「ごくり……こいつは見逃せねえ……」
めっちゃ注目されてるぅぅぅ!
なーにしてくれてんですか、学園長!
これじゃあ折角立てた、三年間ひっそりと学園生活を終える計画がパーじゃねえか!
「でもさ、あいつも俺らと同じ学生なんだろ? ならミスリルゴーレムを傷つけるなんて、土台無理じゃね?」
……お?
「だよな、俺もそう思う」
「ミスリルゴーレムって、魔力完全耐性持ちなんでしょ? なら絶対無理じゃん」
「なーんだ、期待して損したー」
これはもしや、チャンス到来では?
誰も彼もが無理だと思っているってことは、別に失敗してもなんら問題ないってことだよね。
ホッ、これならなんとかなりそうだ。
軽く炎魔法でもやっときゃ、後はなあなあになるだろ。
あー、よかったよかった。
「準備は良いですか、リュート=ヴェルエスタ」
「はい! いつでもどうぞ!」
「では……始め!」
「いきます! ファイアーボール!」
よし!
最小限の魔力かつ、最も威力の低い魔法を撃つことに成功した!
これなら……!
────ドオオオオオン!
「え……」
「きゃああああ!」
「いいっ!?」
……脆っ!
脆い、脆すぎるよ、ミスリルゴーレムくん!
爆散しちゃったよ、おい!
「ちょ、なんなのよ、この爆発! あいつが撃ったのってファイアーボールだったわよね! ファイアーボールってこんな威力だった!?」
「しかも無詠唱だったぞ、あいつ!」
「私知らない! こんなファイアーボール、私知らない!」
「あああああ……ミスリルゴーレムが粉々に…………金貨700枚が……」
あれだけ目立つなって色んな人に注意されてたのに、結局目立っちゃった……。
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