【完】可哀想な皇太子殿下と没落ヒヒンソウ聖女は血の刻印で結ばれる

8

8-18

カルティーヌside.......




「それで、探してくることが出来たの？
黒髪持ちの皇子が国王になったとしても民を納得させる術を。」



ミランダがクラスト陛下にそんな口調で話し掛け、物凄く怒った顔をしている。
でもその目には涙が溜まっていて・・・。



「遅すぎ・・・！！！
それにクレドは王宮に忍び込んでたの・・・！？
それなら私に会いに来てよ・・・！！
クラスト陛下のことや夫のことや娘のことを教えに来てよ・・・！！
私がどんな想いで待ってたと思ってるの・・・！！」



ミランダが目から大量の涙を流しながらそう叫んだ。
感情的になっているミランダを見て驚いていると・・・



「強く強く強く、どこまでも強く想いながら、だろ？
俺達が戻る日を、最善を尽くして待ってたんだろ？」



チチが立ち上がり、意地悪な顔で笑いながらミランダの元に歩いてきた。



「お前には教えられないことだらけだからクレドには口止めをしていた。
悪いな、ミランダ、俺達の娘の命はケリーの息子の為に使わせた。」



「そんなことで私は怒ったりしない！！
ダンドリーだって私だってこの身体をケリーにあげた！！」



「それはそうだろうけどな、でも俺達は今でも生きている。」



「娘だって生きてた・・・！！
よかった・・・っステル殿下が現れた時、貴方と娘はインソルドにいるって分かったから・・・！！
“死の森”と同じくらい危険な場所だから・・・！！
貴方の心配はこれっぽっちもしていなかったけど、娘は女の子だし・・・本当に心配してた・・・！！」



「だろ？だからクレドに口止めをしていた。
1回死んだくらい、娘の命をケリーの息子の為に使わせてた。」



「聞きました・・・15歳の時に1度死に掛けた話を・・・。
魔獣が多く出る村ですし、娘が剣の使える子で良かったです。」



「いや、死に掛けたではなく、実際に死んだ。
俺達の娘、1回本当に死んだんだよ。」



チチがそう言いながら私のことを指差してきて・・・。



ミランダが・・・



チチから“俺達の娘”と言われた私のことを、ミランダがゆっくりと振り向いてきて・・・



「1回・・・1回、本当に死んだの？
言葉のあやではなくて？」



「ごめんごめん、言葉のあや！！
だって私生きてるし！！
急所が外れてたんじゃない？
それより・・・」



笑いながらチチを見上げた。



「え、ミランダって私のお母様なの？」



「そうだろ、何だよ改まって。」



「え～・・・顔なんて覚えてないし、名前も・・・“お母様”だったからな～・・・。
名前なんて気にしたことなかった。」



チチが物凄く驚いた顔で私のことを見て、それから物凄く怒っているミランダに視線を戻した。



「私だって分からないから！！
18年も会っていなくて、名前まで変わっていて！！
私だって分からない！！！
分からないでずっと・・・ずっと・・・カルティーヌ様の向こう側にいる5歳の娘を眺めていた・・・！！！
インソルドできっと女の子として生きている娘、カルティーを・・・カルベルを・・・！！！
こんなに美しくて可愛い女の子になって・・・よく考えたらカルティーヌという名だし、貴方の小さな頃に顔は似ているけど・・・。」



ミランダがそう言って、チチの胸にゆっくりとオデコを付けた。



「私・・・私・・・最善を尽くして待ってた・・・。
貴方が必ず戻ると言っていたから、ヒールズの家の名も残して・・・。
どんなことでもした・・・私・・・私・・・どんなことでもした・・・。
心は貴方にあげていたから・・・心は貴方と結ばれているのは分かっていたから・・・。
この身体はケリーのモノだから、この王国のモノだから・・・。
だから・・・だから・・・私・・・あの男に・・・私・・・」



ミランダがチチの胸にオデコを付けたまま、人差し指でゆっくりとジルゴバートのことを差した。
狂ったように笛を吹き続けているマルチネス王妃の隣で、目を真っ赤に充血させなら全身を震えさせ怒りで満ち溢れているジルゴバートのことを。



そんなジルゴバートのことをチチがバカにしたように笑い、ミランダの身体をグッと片手で抱き締めた。



そして・・・



「何度そいつに抱かれたとしてもお前の身体は綺麗に再生する。
お前のことを聖女にしたのはこの俺だぞ？」



そう言った。