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“私一升瓶も1人で空けられる女ですから!!
それも数時間で飲み干すことが出来ますから!!”



美鼓ちゃんがそんなにお酒を飲めることは初めて知った。
初めて知ったけれど、“飲める”と“酔わない”は全くの別物で。



甘いお酒ばかりを頼んでいたけれど、どこをどう見ても酔っ払ってきている。



「毎回飲み干して、何度も何度も捨てたんですけどね。
私は“元気”を何度も何度も捨てたんですけどね。」



「そっか・・・。」



フワフワとした顔で笑いながらそう言われ、そんな返事しか出来なかった。



捨てられてしまった・・・。



忘れるでもなく、なかったことにするでもなく、捨てられてしまった・・・。



この子と再会してからのことを思い出すとそれは仕方のないことで。
それくらいのことをしてしまっていたから、それは仕方のないことで。



「約束守れなくてごめんね・・・。」



どうしようもなく苦しい中、その言葉は伝えた。



1年後に一緒にご飯を食べに行こうと約束をしていた。
1年後に一緒に帰ろうと約束をしていた。



そして、1年後に美鼓ちゃんが約束を覚えていたら付き合おうと約束をしていた。



でも、守れなかった・・・。



俺が約束を守ることが出来なかった・・・。



深く深く後悔をしながら、目の前にいるフワフワとしているこの子の姿を見詰める。



こんな姿も可愛いなと思いながら・・・。



社食ではなく2人で一緒にご飯を食べるとことが出来き嬉しいと思いながら・・・。



1年後の約束を守ることは出来なかったけど、こうして目の前でフワフワと笑っているこの子の姿を見詰めながら・・・。



この子が先に進めることをやっぱり願わずにはいられなかった。



俺がこの子に出来ることは、もうそれくらいしかないから・・・。
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