Sランクの男は如何でしょうか?【R18】※番外編更新中

キミノ

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第8章

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 車は静かに進んでいた。


「・・・どうして一年もほおっておいて、今更なんですか」

 沙也加はむくれた顔でじとりと貴臣をにらんだ。”どうして早く迎えに来てくれなかったの”とは言えずに。そんな沙也加を見て貴臣は楽しそうに右の口角を吊り上げて笑った。


「そんな顔するな。___どうしても守らなければならない、男同士・・・の約束があったんだ」






*****

「貴兄、さや姉は本当の家に帰ったよ」

「あぁ。全ての手配は済んでいる」

「・・・僕らと姉弟になるという覚悟で」

「・・・」

「泣いてたよ。__その意味が貴兄にはわかる? 聞いたよ、お父さんから。結婚の許可は貰ってるんだって。それなら、なんで直ぐに追いかけなかったの? さや姉が離れるはずないって思ってたの?」

「・・・」

「___一年。さや姉の一年を僕にください。貴兄よりもずっと傍にいて、優しく大切にする。絶対。・・・その時にさや姉が僕を選んでくれたら、僕が彼女をさらうから」

「もし、あいつがお前を選ばなかったら?」

「その時は___姉弟として、祝福する」

「わかった。負けても泣くんじゃないぞ」


*****





「なんで急に笑っているんですか?」

「他愛のない事だ」

 話してくれる様子のない貴臣に、沙也加は首をひねることしか出来なかった。まだ知らされていない事がたくさんあるのだろう。


 改めて貴臣さんを見た。センターで分けられた髪は黒く、白髪なんて一本も見当たらない。相変わらずのキャットアイはギラリと光り、薄い唇は弧を描き色気を垂れ流している。何だか変わらないというよりは若返った気がする。変わったのは・・・

「なんだか表情が豊かになった気がします」

「___もう、誰にも憤りを感じていないからな。この一年、お前をどう驚かそうかばかり考えていた」

「っ・・・なんだか破壊力が、__パワーアップしてます」

 歯を見せて綺麗に笑う姿は沙也加の胸を大きく弾ませた。この一年で変わりゆく貴臣の姿を一番近くで見て居たかった。時間よ戻れと強く、強く願う。



「パワーアップしていないと困るんだが」

「な、なんでですか?」

「もし、お前が匠を選んでしまったら」

「そんなこと「お前に・・・」

「・・・」






「お前にもう一度振り向いて貰える私で居なければならないと思ったから」

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