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第3章
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しおりを挟むコンコン
「よろしいでしょうか?」
まさに受け入れる寸前だった。
びくりと肩を揺らして扉を見た横顔に、貴臣の熱い視線がチクチクと刺さる。慌てて衣類を正そうと動く両手を、大きな手がまとめて握りしめた。このまま止めてもいいのかと問う様に、濡れた入り口を刺激しながら。
このまま滾る欲望に身体を預けてしまいたかったが、再度聞こえる低いノック音に沙也加の倫理観がけたたましく警報を鳴らした。
「いけません、社長」
「・・・」
急いで膝から降りて身なりを正したが、貴臣は不服そうな表情をしたまま動こうとしない。外されたネクタイは卓上に乱雑に置かれたままで、シャツのボタンはかろうじて下二つが止まっているだけの状態だった。表情には雄が残ったままで、明らかに事後の雰囲気がそのままである。
「しゃちょっ、早くボタンを「入れ」・・・?!」
「___失礼致します」
即座に開かれた扉から入ってきたのは藤本だった。
貴臣の服装を正す時間も無く、距離を取るため咄嗟にデスク横に飛びのいた。
「・・・水谷さん。こちらにいらしたのですね」
「あ、あの「私が呼んだ。用件は?」
「___はい。◇〇△物産の蓑田社長がお見えです」
「わかった。五分後に八会議室で時間を取ろう」
「承知しました。___水谷は如何されますか?」
「さがっていい。君は残ってくれ」
置いてけぼりのまま話が進み、あれよあれよと部屋を追い出されてしまった。疎外感というよりは、自分の無力さを痛感した。身体は求められても、それ以外は何も彼の力になどなれないのだと。
その後秘書室に戻るも、メールで”帰るように”と指示されすごすごと帰宅した。
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