階層

海豹

文字の大きさ
26 / 42
階層

26 再会

しおりを挟む


 少し歩くと、三つに枝分かれした通路に出た。
構成員の男は左右に曲がることなく真っ直ぐに通路を突き進む。
それに続き、大衆が進んでいく。
それまで壁に掛けられていたいくつもの抽象画が、分かれ道を越えると具象画へと変化した。
それも、ある一定の並び方がある。
単体の天使が描かれた明るい絵と、単体の悪魔が描かれた暗い絵が交互に、等間隔で通路に掛けられている。
 しかし、一つ不可解な点があった。
それは、描かれた全ての天使に眼球がないのだ。
それも、悪魔には必ず描かれている眼球が、天使だけはくり抜かれたように描かれている。
皆、そのことに気づいたのか、険しい表情で、少し離れて絵を観覧しながら歩いている。
ただ、描かれた天使は全て、笑みを浮かべており一つとして暗い表情のものはいない。
自分は、そんな奇妙な絵にきみ悪く感じたためあまり見ないよう、下を向いて歩いた。
 数分間歩くと、大きな扉が左右離れた位置に二つ見えてきた。
金属でできており、薔薇の彫刻が見事に施されている。
構成員の男が左側の重い扉を力ずくで開けると、広い部屋が現れた。
そこには人工芝が敷かれ、いくつもの背の高い観葉植物が花壇に生い茂っている。
遠くを見ると疎らに金属の机と椅子が配置されており、幾つもの石膏彫刻が飾られている。
更に、中央には噴水が設置されており、透明の水が光り輝いている。
そして、天井はドーム型になっていて、日の光がまるで神降臨の如し差し込んでいるのだった。
「うぉー」「うわー」
その光景は、憂鬱な表情をしていた者たちが歓声の声を上げるほど神秘的であった。
男女共に目を輝かせ、頭の中でロマンティックな結婚式場のようだと、心躍らせているように見える。
どうやら、ここがコミュニティールームらしい。
 さっきの枝分かれ通路で人々を分散したらしく、現在このコミュニティールームには三百人ほどが待機していた。
自分は不意に巫さんのことが気になり、辺りを探し回った。
思っていたよりも広く、背の高い観葉植物のせいで、小さな迷路のようになっている。
一通り探したが、巫さんは見つからず残念に思い落ち込んでいると高く張りのある声が聞こえた。
「ねえ、ねえ、ちょっと!」
瞬時に後ろを振り向くと、何とそこにはバスで後ろの席にいた女子高生が、驚いた様子で立っていた。
「あ、!」
「君か!」
「あ!」
「やっぱりあんたなんだ!」
「無事だったか?」
「ええ、私はバスであんたが走り出すから、戸惑ってたら気づいた時にはベットで寝てたわ。」
「そうか、どうせなら最後まで優勝したかったよな、」
「まぁそうだけど、お互い無事なのが何よりよ。」
女子高生は頬を赤め、目を背けた。
強い日光が女子高生の茶髪を眩しいくらい照らす。
目元など、顔の濃い化粧が無くなっており、その素顔は新鮮な感じであった。
「化粧無い方がピュアで似合うと思うぞ。」
「余計なお世話よ。」
「今は、仕方なくなんだから。」
照れた様子で気取った態度を取る女子高生。
どうやら典型的なツンデレのようだ。
「立って話すのも疲れるし、椅子にでも座らないか?」
「そうね。」
そして、二人で噴水の近くにあったベンチに座る。
「あなた、何故あれほどの速さで状況を見抜いたの?」
「いや、あれは何と言ったらいいか。」
「自分も最近知ったんだけど、どうやら肉を食べると知能や筋力などの身体的能力が上がるらしいんだ。」
「え、何それ、どういうこと?」
「いや、自分もまだわからない。」
「なら、あなた肉をバスに持ち込んでたの?」
「いや、持ち込んでいたのは自分じゃなくて、、、」
「待てよ、持ち込むと言えば、」
「ねえ、君、スマホ持ってたよね今どこにある?」
「ああ、目が覚めた時にはまだポケットの中に入っていたわ。」
「え、じゃあ」
「いいえ、それはできなかった。」
「どうやらここは圏外らしく、どうやっても連絡はつかなかったわ。」
「そうか、」
「で、今スマホはどこに?」
「私のベットに敷かれたシーツの下よ。」
「そうか、」
「あの、あんた名前で呼んでほしくないの?」
「え、?」
「いや、自分はどっちでもいいけど。」
「え、そうじゃなくて、名前で呼び合うのが普通でしょ、」
「だから、名前何か聞きなさいよ、」
「君が名前で呼んで欲しいんじゃないの?」
「違うわよ、私はただ、君って言われるのが嫌なだけだから、」
またもや、顔を赤くして目を逸らす女子高生。
「分かったよ、自分は佐海功治。」
「君は?」
「えっと、私は、日向朝陽。」
「そっか、日向よろしく!」
「いや、あの」
「ん?どうした?」
「苗字より、名前で呼ばない?」
「何か、そっちのが何となくいいような」
「分かったよ、じゃ、朝陽」
その瞬間、朝陽の小さい猫のような顔が真っ赤に火照り、目が少し潤んだ。
それに、手を重ね指をもじもじさせている。
「大丈夫?」
「え、え、何が、?」
「いや、耳が真っ赤だよ。」
「え!うわ、ちょっと何よ、少し暑いだけだし」
これ以上赤面させると、可哀想だと思いいじるのを辞めた。
「楽しそうですね。」
まさかと思い、後ろを振り返ると巫さんが観葉植物の間から顔を出していた。
「うわ、巫さん!」
「何してるんですか!」
「いや、少し功治くんを驚かそうと隠れていたんですけど、朝陽さんがいらっしゃったので出るタイミングを逃してしまいました。」
質問に笑顔で答える巫さん。
「あの、巫さんは日向でいいです。」
巫さんの前で、突然尖り出す朝陽。
「なぜですか?」
「まさか、功治くんに好意を抱いていて、特別感を求めているのですか?」
「いや、そういうわけじゃ」
「なら、私が朝陽と呼んでも問題ないですよね。」
「何か問題でも?」
巫さんの目が漆黒のように暗くなる。
「いや、問題ないです、」
「そうですか、じゃ、よろしくお願いします、あ・さ・ひさん」
「ええ、よろしく巫さん、、」
落ち込む様子が隠しきれず、顔に出る朝陽。
どうやら巫さんが言っていることも一理あるのかもしれない。

















しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)

MisakiNonagase
現代文学
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ

朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】  戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。  永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。  信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。  この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。 *ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

愛しているなら拘束してほしい

守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。

処理中です...