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階層
26 再会
しおりを挟む少し歩くと、三つに枝分かれした通路に出た。
構成員の男は左右に曲がることなく真っ直ぐに通路を突き進む。
それに続き、大衆が進んでいく。
それまで壁に掛けられていたいくつもの抽象画が、分かれ道を越えると具象画へと変化した。
それも、ある一定の並び方がある。
単体の天使が描かれた明るい絵と、単体の悪魔が描かれた暗い絵が交互に、等間隔で通路に掛けられている。
しかし、一つ不可解な点があった。
それは、描かれた全ての天使に眼球がないのだ。
それも、悪魔には必ず描かれている眼球が、天使だけはくり抜かれたように描かれている。
皆、そのことに気づいたのか、険しい表情で、少し離れて絵を観覧しながら歩いている。
ただ、描かれた天使は全て、笑みを浮かべており一つとして暗い表情のものはいない。
自分は、そんな奇妙な絵にきみ悪く感じたためあまり見ないよう、下を向いて歩いた。
数分間歩くと、大きな扉が左右離れた位置に二つ見えてきた。
金属でできており、薔薇の彫刻が見事に施されている。
構成員の男が左側の重い扉を力ずくで開けると、広い部屋が現れた。
そこには人工芝が敷かれ、いくつもの背の高い観葉植物が花壇に生い茂っている。
遠くを見ると疎らに金属の机と椅子が配置されており、幾つもの石膏彫刻が飾られている。
更に、中央には噴水が設置されており、透明の水が光り輝いている。
そして、天井はドーム型になっていて、日の光がまるで神降臨の如し差し込んでいるのだった。
「うぉー」「うわー」
その光景は、憂鬱な表情をしていた者たちが歓声の声を上げるほど神秘的であった。
男女共に目を輝かせ、頭の中でロマンティックな結婚式場のようだと、心躍らせているように見える。
どうやら、ここがコミュニティールームらしい。
さっきの枝分かれ通路で人々を分散したらしく、現在このコミュニティールームには三百人ほどが待機していた。
自分は不意に巫さんのことが気になり、辺りを探し回った。
思っていたよりも広く、背の高い観葉植物のせいで、小さな迷路のようになっている。
一通り探したが、巫さんは見つからず残念に思い落ち込んでいると高く張りのある声が聞こえた。
「ねえ、ねえ、ちょっと!」
瞬時に後ろを振り向くと、何とそこにはバスで後ろの席にいた女子高生が、驚いた様子で立っていた。
「あ、!」
「君か!」
「あ!」
「やっぱりあんたなんだ!」
「無事だったか?」
「ええ、私はバスであんたが走り出すから、戸惑ってたら気づいた時にはベットで寝てたわ。」
「そうか、どうせなら最後まで優勝したかったよな、」
「まぁそうだけど、お互い無事なのが何よりよ。」
女子高生は頬を赤め、目を背けた。
強い日光が女子高生の茶髪を眩しいくらい照らす。
目元など、顔の濃い化粧が無くなっており、その素顔は新鮮な感じであった。
「化粧無い方がピュアで似合うと思うぞ。」
「余計なお世話よ。」
「今は、仕方なくなんだから。」
照れた様子で気取った態度を取る女子高生。
どうやら典型的なツンデレのようだ。
「立って話すのも疲れるし、椅子にでも座らないか?」
「そうね。」
そして、二人で噴水の近くにあったベンチに座る。
「あなた、何故あれほどの速さで状況を見抜いたの?」
「いや、あれは何と言ったらいいか。」
「自分も最近知ったんだけど、どうやら肉を食べると知能や筋力などの身体的能力が上がるらしいんだ。」
「え、何それ、どういうこと?」
「いや、自分もまだわからない。」
「なら、あなた肉をバスに持ち込んでたの?」
「いや、持ち込んでいたのは自分じゃなくて、、、」
「待てよ、持ち込むと言えば、」
「ねえ、君、スマホ持ってたよね今どこにある?」
「ああ、目が覚めた時にはまだポケットの中に入っていたわ。」
「え、じゃあ」
「いいえ、それはできなかった。」
「どうやらここは圏外らしく、どうやっても連絡はつかなかったわ。」
「そうか、」
「で、今スマホはどこに?」
「私のベットに敷かれたシーツの下よ。」
「そうか、」
「あの、あんた名前で呼んでほしくないの?」
「え、?」
「いや、自分はどっちでもいいけど。」
「え、そうじゃなくて、名前で呼び合うのが普通でしょ、」
「だから、名前何か聞きなさいよ、」
「君が名前で呼んで欲しいんじゃないの?」
「違うわよ、私はただ、君って言われるのが嫌なだけだから、」
またもや、顔を赤くして目を逸らす女子高生。
「分かったよ、自分は佐海功治。」
「君は?」
「えっと、私は、日向朝陽。」
「そっか、日向よろしく!」
「いや、あの」
「ん?どうした?」
「苗字より、名前で呼ばない?」
「何か、そっちのが何となくいいような」
「分かったよ、じゃ、朝陽」
その瞬間、朝陽の小さい猫のような顔が真っ赤に火照り、目が少し潤んだ。
それに、手を重ね指をもじもじさせている。
「大丈夫?」
「え、え、何が、?」
「いや、耳が真っ赤だよ。」
「え!うわ、ちょっと何よ、少し暑いだけだし」
これ以上赤面させると、可哀想だと思いいじるのを辞めた。
「楽しそうですね。」
まさかと思い、後ろを振り返ると巫さんが観葉植物の間から顔を出していた。
「うわ、巫さん!」
「何してるんですか!」
「いや、少し功治くんを驚かそうと隠れていたんですけど、朝陽さんがいらっしゃったので出るタイミングを逃してしまいました。」
質問に笑顔で答える巫さん。
「あの、巫さんは日向でいいです。」
巫さんの前で、突然尖り出す朝陽。
「なぜですか?」
「まさか、功治くんに好意を抱いていて、特別感を求めているのですか?」
「いや、そういうわけじゃ」
「なら、私が朝陽と呼んでも問題ないですよね。」
「何か問題でも?」
巫さんの目が漆黒のように暗くなる。
「いや、問題ないです、」
「そうですか、じゃ、よろしくお願いします、あ・さ・ひさん」
「ええ、よろしく巫さん、、」
落ち込む様子が隠しきれず、顔に出る朝陽。
どうやら巫さんが言っていることも一理あるのかもしれない。
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