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Part3 The year of 2000
Chapter_10.Dr. Uemaの悲惨な一日 L.A.編(3)のぞき部屋
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At Los Angeles, California; November 23, from 4:33PM to 7:17PM PST, 2000.
The narrator of this story is Tsutomu Uema.
これはやっぱりR15指定なのでしょうか。英語の勉強を兼ねてPG12ってことにしませんか(爆)
ロサンゼルスの日没は早い。午後五時には日が沈んですっかり薄暗くなり、気温も十四、五度くらいになってしまう。
パーティーなのでちょっとおしゃれをしようと、真新しいドレスシャツに、師匠から渡米祝いに貰ったネクタイを締めてみた。そしてトレンチコートを引っ掛けると、パーティーのお宅へちょっとした手土産を買いにミッドタウンにあるビバリー・センターまで車を走らせた。ここにはデパートが三つと映画館が十三も入っている。ブランド品の店もあるし、ちょっとしたショッピングをするには便利な場所だ。
がたついた眼鏡を修理してもらい、その足で手土産を探す。たしかお子さんがいらしたから、日持ちしそうなドライフルーツとクッキー類にしておくか。ついでに、シママースを入れる容器を探してみる。いくつか候補はあったけど、ちょっと値が張るな。ま、慌てる必要も無いし、また今度にしよう。
会場へ着くと、僕と同じOverseas Resident組のFrankとAl、UCLAのメディカルスクール出身のRoyが寄ってきた。フランクはチリ人、アルはフランス系ガーナ人、ロイはメキシコ系アメリカ人だ。ロサンゼルスに来て三ヶ月目。黒人でも白人でもない僕らが仲良しになったのは自然な流れだった。
立食形式なのでご馳走が並んだテーブルへ行ってみたが、並んでいるのは見事にカレーばかりだ。ああ、そうだよ。この家の奥様はインドのご出身なのでした。カレーが苦手な僕は、ひたすらナンとサモサとヨーグルトを食べ歩くしかなかった。
少しお腹が落ち着いたところで、ロイが僕に声を掛けた。
“We'll go to an another place. Won't you join us ?”
(ちょっと違う場所へ行くけど、君もどう?)
確かに招待客は総じて僕らより上の年代の方が多かったし、僕も彼らも明日はLongだ。一緒に抜け出す方が都合がよかった。
僕は彼ら三名を車に乗せた。アルコールに弱い僕は最初から飲む気がなかったが、三名ともちょっとビールを引っ掛けたらしく、なー銘々好き勝手に歌い始めた。音やリズムがあまりにもちぐはくで、僕は運転しながらも頭がどうにかなりそうだった。
やがてダウンタウンまで出ると、助手席のフランクが駐車場へ車を止めるように言った。
“Where are we going? I won't have any drink.”
(何処へ行くんだ? 俺、飲まないよ)
“I know, I know.”
(わかってるって)
フランクはニヤニヤ笑いながら僕にウィンクを投げると、車を降りてリトルトーキョー方面の路地へと向かった。アルとロイも続く。
此達、何処んかい行ちゅる肝ぇーやが?
不審に思ってついていくと、派手なネオンサインに落書きの目立つ古い建物がある。げっ、これって、いわゆる「覗き部屋」じゃないか!
考えてみれば、今日は朝から散々な目にあったのだ。中年男の直腸診に始まり、患者さんに理由もなく殴られ、そして、頼みの綱のガールフレンドは、電話の向こうで笑い転げているだけだった。
慰めてくれなかったんだから、自分で慰めるしかないだろ? いいや、ちょっとぐらい。覗くだけだ。
僕は自分にそう言い聞かせ、軽く胸を張って彼らの後についていった。
アメリカの随所にある「覗き部屋」については、有名なマンガ『課長 島耕作』にも取り上げられたからご存知の方も多いだろう。入り口で小銭を払ってトークンを買うと、個室へと案内される。椅子に座ってトークンを投入すれば、目の前にある小窓が開いて、女性の乳房があらわに映し出される。触れたりしつつしばらく眺めていると、女性の手が出てきてチップをねだる。払う金額によってより長く乳房に触れることができる仕組みだ。
僕も小銭を払って個室へ入り、トークンを投入した。だが、小窓が開いて若い白人女性と思われる乳房が姿を現すのとほぼ同時に、耳元で、MDに収められたあの声が響いた。
「勉ー、気をつけてアメリカ行っといでねー。言っとくけど、浮気したら、すぐ殴るよ!」
瞬く間に、罪悪感が興味本位な探究心を蹴散らした。どうやら僕のケツの穴は、僕が思っている以上に小さいらしい。
目の前から女性の両腕がにゅっと出てきて、しきりに人差し指を前後させている。チップを要求しているのだ。僕は頭を医者モードに切り替えた。相手の顔色がチェックできないから正確な診断は下せないが、こうなったら乳がん検診の練習でもするか。
財布から一ドル札を取り出して握らせながら、しげしげと目の前の乳房を眺める。ちょっと照明が暗くてよく見えないけど、べつにこれといって異常な所見はみられないな。
両手を伸ばし、女性の左乳房の上内側へ指の腹を乗せて、満遍なく数回滑らせる。しこりは無いみたいだけど、うーん、なんか全体的に張ってるなー。生理前なのかも。いくつか質問したかったが、客と女性との会話は許されていない。今度は指を外側に移動して、再び内側へ滑らせる。異常はなさそうだ。
“Hey, Mr.”
(ねえ旦那)
彼女が人差し指を上下に動かす。おいおい、延長金払えってか?
僕はしぶしぶ一ドル札を握らせ、触診を続けた。全く、本来なら僕が二十ドルくらいもらいたいところだぜ? でも診察を途中で止めると、医者として良心の呵責に耐えられそうもない。
結局、僕は一ドル札を五枚ほど彼女に握らせる羽目になった。馬鹿馬鹿しいが、特に異常は見られなかったからいいって事にしよう。
外に出ると、野郎三人が既に外で待機していた。
“Did you have a good time ?”
(楽しめたかい?)
彼らの意味深な笑顔を無視して、僕はスラックスのポケットに両手を突っ込んで夜空を眺めながら、日本語でぼそっとつぶやいた。
「ばーか。そんなんじゃねーよ」 ((4)へつづく)
The narrator of this story is Tsutomu Uema.
これはやっぱりR15指定なのでしょうか。英語の勉強を兼ねてPG12ってことにしませんか(爆)
ロサンゼルスの日没は早い。午後五時には日が沈んですっかり薄暗くなり、気温も十四、五度くらいになってしまう。
パーティーなのでちょっとおしゃれをしようと、真新しいドレスシャツに、師匠から渡米祝いに貰ったネクタイを締めてみた。そしてトレンチコートを引っ掛けると、パーティーのお宅へちょっとした手土産を買いにミッドタウンにあるビバリー・センターまで車を走らせた。ここにはデパートが三つと映画館が十三も入っている。ブランド品の店もあるし、ちょっとしたショッピングをするには便利な場所だ。
がたついた眼鏡を修理してもらい、その足で手土産を探す。たしかお子さんがいらしたから、日持ちしそうなドライフルーツとクッキー類にしておくか。ついでに、シママースを入れる容器を探してみる。いくつか候補はあったけど、ちょっと値が張るな。ま、慌てる必要も無いし、また今度にしよう。
会場へ着くと、僕と同じOverseas Resident組のFrankとAl、UCLAのメディカルスクール出身のRoyが寄ってきた。フランクはチリ人、アルはフランス系ガーナ人、ロイはメキシコ系アメリカ人だ。ロサンゼルスに来て三ヶ月目。黒人でも白人でもない僕らが仲良しになったのは自然な流れだった。
立食形式なのでご馳走が並んだテーブルへ行ってみたが、並んでいるのは見事にカレーばかりだ。ああ、そうだよ。この家の奥様はインドのご出身なのでした。カレーが苦手な僕は、ひたすらナンとサモサとヨーグルトを食べ歩くしかなかった。
少しお腹が落ち着いたところで、ロイが僕に声を掛けた。
“We'll go to an another place. Won't you join us ?”
(ちょっと違う場所へ行くけど、君もどう?)
確かに招待客は総じて僕らより上の年代の方が多かったし、僕も彼らも明日はLongだ。一緒に抜け出す方が都合がよかった。
僕は彼ら三名を車に乗せた。アルコールに弱い僕は最初から飲む気がなかったが、三名ともちょっとビールを引っ掛けたらしく、なー銘々好き勝手に歌い始めた。音やリズムがあまりにもちぐはくで、僕は運転しながらも頭がどうにかなりそうだった。
やがてダウンタウンまで出ると、助手席のフランクが駐車場へ車を止めるように言った。
“Where are we going? I won't have any drink.”
(何処へ行くんだ? 俺、飲まないよ)
“I know, I know.”
(わかってるって)
フランクはニヤニヤ笑いながら僕にウィンクを投げると、車を降りてリトルトーキョー方面の路地へと向かった。アルとロイも続く。
此達、何処んかい行ちゅる肝ぇーやが?
不審に思ってついていくと、派手なネオンサインに落書きの目立つ古い建物がある。げっ、これって、いわゆる「覗き部屋」じゃないか!
考えてみれば、今日は朝から散々な目にあったのだ。中年男の直腸診に始まり、患者さんに理由もなく殴られ、そして、頼みの綱のガールフレンドは、電話の向こうで笑い転げているだけだった。
慰めてくれなかったんだから、自分で慰めるしかないだろ? いいや、ちょっとぐらい。覗くだけだ。
僕は自分にそう言い聞かせ、軽く胸を張って彼らの後についていった。
アメリカの随所にある「覗き部屋」については、有名なマンガ『課長 島耕作』にも取り上げられたからご存知の方も多いだろう。入り口で小銭を払ってトークンを買うと、個室へと案内される。椅子に座ってトークンを投入すれば、目の前にある小窓が開いて、女性の乳房があらわに映し出される。触れたりしつつしばらく眺めていると、女性の手が出てきてチップをねだる。払う金額によってより長く乳房に触れることができる仕組みだ。
僕も小銭を払って個室へ入り、トークンを投入した。だが、小窓が開いて若い白人女性と思われる乳房が姿を現すのとほぼ同時に、耳元で、MDに収められたあの声が響いた。
「勉ー、気をつけてアメリカ行っといでねー。言っとくけど、浮気したら、すぐ殴るよ!」
瞬く間に、罪悪感が興味本位な探究心を蹴散らした。どうやら僕のケツの穴は、僕が思っている以上に小さいらしい。
目の前から女性の両腕がにゅっと出てきて、しきりに人差し指を前後させている。チップを要求しているのだ。僕は頭を医者モードに切り替えた。相手の顔色がチェックできないから正確な診断は下せないが、こうなったら乳がん検診の練習でもするか。
財布から一ドル札を取り出して握らせながら、しげしげと目の前の乳房を眺める。ちょっと照明が暗くてよく見えないけど、べつにこれといって異常な所見はみられないな。
両手を伸ばし、女性の左乳房の上内側へ指の腹を乗せて、満遍なく数回滑らせる。しこりは無いみたいだけど、うーん、なんか全体的に張ってるなー。生理前なのかも。いくつか質問したかったが、客と女性との会話は許されていない。今度は指を外側に移動して、再び内側へ滑らせる。異常はなさそうだ。
“Hey, Mr.”
(ねえ旦那)
彼女が人差し指を上下に動かす。おいおい、延長金払えってか?
僕はしぶしぶ一ドル札を握らせ、触診を続けた。全く、本来なら僕が二十ドルくらいもらいたいところだぜ? でも診察を途中で止めると、医者として良心の呵責に耐えられそうもない。
結局、僕は一ドル札を五枚ほど彼女に握らせる羽目になった。馬鹿馬鹿しいが、特に異常は見られなかったからいいって事にしよう。
外に出ると、野郎三人が既に外で待機していた。
“Did you have a good time ?”
(楽しめたかい?)
彼らの意味深な笑顔を無視して、僕はスラックスのポケットに両手を突っ込んで夜空を眺めながら、日本語でぼそっとつぶやいた。
「ばーか。そんなんじゃねーよ」 ((4)へつづく)
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