single tear drop

ななもりあや

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波紋

波紋

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「何で自分ではなく遥琉が跡目として選ばれたか、目先の欲にかられたお前には分かるまい。組員は家族も同然と、遥琉は大事にしてきた。部屋住みだろうが幹部だろうが分け隔てなく接してきた。だからカタギになってもみな、遥琉を兄貴と呼んで慕ってる。そこがお前と決定的に違うところだ」

「ハウ  ツァウ!《うるさい》」

真沙哉さんが叫んだ。

「今回は見逃してやるから、さっさと大上のところへ帰れ。鷲崎組や吉柳会《きりゅうかい》はすべて昇龍会を支持する方に回ったぞ」

二つとも東北・北海道で最大の勢力を誇る組だ、彼がそっと教えてくれた。

ますます劣勢に追い込まれた真沙哉さんは、部下の男に帰るぞと声を掛け、辺りを警戒しなから風のようにあっという間にいなくなった。最後に「チ  ス  ラ《腹立たしい》」という言葉を残して……

「心、大丈夫か?」

「ごめん、安心したらなんか力が抜けちゃって……」

「逃げずによく頑張ったな。偉いぞ」

「柚原、僕……」

緊張の糸が切れたのだろう。心さんの目からは堰を切ったかのように涙が零れていた。


「あら、やだ~アタシったら~」

千里さんがいつもの千里さんに戻った。

「ダーリンに男は封印するって約束していたのに………バレたらお仕置きされちゃう!ちょっとみんな、頼むから聞かれてもナイショにしててよ。とくに柚原」

「何で俺!?」

名指しされた柚原さんがどきっとして千里さんを見た。
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