必ず会いに行くから、どうか待っていて

十時(如月皐)

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「申し訳ございません。俺がもっと早く武衛についていれば……ッ」
 弥生の命令であったとはいえ、ずっと見守り続けた子達だ。異変があればすぐに春風の屋敷に駆け込み仲間を連れて駆けつけるか、あるいは姿を現してでも敵を葬ったというのに。
 もしも近臣たちが報復など考えず火を放たなければ、もしも周と由弦たちが同じ場所にいたならば、もしも月路が間に合って雪也に加勢することができたなら。そんなもしもばかりを考える。
 隙があったというのならば、それこそ一瞬だっただろう。その一瞬の隙ができてしまったがために、周たちの未来は断たれ、雪也は絶望に身を沈ませた。この一瞬でさえなければ、助けられたかもしれないのに。
 焼けそうなほど熱い息が月路の喉から零れ落ちる。そんな月路の肩を紫呉は優しく叩いた。
「お前のせいじゃねぇよ。謝る必要なんてどこにもない。もしも責められるべき者がいるなら、それはお前だけじゃねぇ。近臣や暴徒共だけでもねぇ。俺も、優も、弥生も、責められるべきだろうよ」
 優しい空間をあげられたつもりだった。強さを教えたつもりだった。愛しさを、温もりを、護る力を。だが、それらすべてが大切な彼らの命を奪ってしまった。
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