必ず会いに行くから、どうか待っていて

十時(如月皐)

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 籠から何かがぶつかるような鈍い音が聞こえ、同時に仲間の刀で切られた籠持ちや護衛達も次々と地面に倒れ伏す。最後の一人が倒れ伏したのを見て、浩二郎は刀を振って血糊を落とした。
 目的は果たした。炎と溢れ出た血潮で真っ赤になったその場所に重なるようにして倒れ伏しているのは、何も敵だけではない。
 志だけでやって来た浩二郎に手を差し伸べた人がいた。ただ持つだけだった刀の振るい方を教えてくれた人がいた。昨日一緒に飯を食った人がいた。未来を語り、夢を描いて笑い合った人がいた。死ぬなよ、と頷きあった人がいた。
 つい先ほどまで温もりを持っていた彼らが、今はもう身じろぎすらしない。固まってしまった彼らは自らが起こした炎にまかれて燃えてしまうのだろう。そこに骨が残れば上々で、例え骨が残ったとしてもそれを拾う者はいない。
 多くの獲物を屠ってなお僅かも動かなくなった心がほんの少し凪いだ。
(犠牲無しに何かを成すことなどできない)
 彼らは尊い犠牲になったのだ。
 静かに瞼を閉じる。しかしすぐに顔を上げて仲間たちを見た。
「撤収だ。ここで捕まるわけにはいかない」
 人気の無い場所を選んだが、流石にそろそろ異変に気付いた者達が駆けつけてくるだろう。その前にまた夜闇に身を紛れさせなければならない。
 刀を鞘に納めて走り出そうとしたその時、浩二郎の前に影が立ちふさがった。
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