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 食事を終えて蒼と湊が自分達の家に帰って行ったのを見送ると、雪也は寝支度をする周と由弦を手招いた。どうしたのかと首を傾げながら近づく二人に、雪也は微笑みながら一冊の冊子を差し出す。
「これは?」
 周が受け取り、パラパラとめくって首を傾げる。何かの書物かと思ったそれは、しかし中に何も書かれていなかった。
「二人とも字を練習しているだろう? 練習も、もちろん良いけど、実践あるのみかと思ってね。それは、んー、日記? みたいなものにしようかと思って」
 ゆっくりと、周の持つ冊子に雪也が指を滑らせる。
「日記みたいに毎日書かなければいけないというものではないし、何を書いても良い。思ったことを、そのまま書いたら良い。とりあえず、文を書くという練習にはなると思うから、周と由弦で、やってみたらどうかな? って」
 全部を教えられたとは言えないが、それでもある程度の文字は教えた。後は書くことに慣れる方が良いだろう。そう思って雪也が用意した冊子に、周と由弦は無言で顔を見合わせた。
 この庵に来るまで与えられることの無かった様々なことを、雪也は与えてくれる。それは嬉しいし、とてもありがたいことだと思うけれど、雪也の言葉は少し寂しい。
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