必ず会いに行くから、どうか待っていて

十時(如月皐)

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 月明かりが美しい、静けさが支配する夜に雪也は目を覚ます。今日はいつもと違って気配に敏感な紫呉が側にいるからと慎重に耳をすませるが、聞こえてくるのは規則正しい寝息ばかりで、起きている様子はない。いつもより殊更ゆっくりと起き上がり、足音を消して棚の方へ向かう。静かに、静かに引き出しを開けて薬包を取り出し、それをひとつ、喉奥に流し込む。チラと見て紫呉が起きていないことを確認し、ゆっくりと外へ向かった。

 雪也が緊張しながらも外へ出た瞬間に瞼を開いた周は小さく息をつく。由弦も紫呉も眠っているからと油断してのことだったが、周の予想に反して由弦の方を向きながら眠っていた紫呉がゴロンと寝がえりをうって周の方へ向くと瞼を開いていた。
「雪也が心配か?」
 由弦を起こさないよう小さな声で言われ、周は目を見開く。だが、同時に彼は雪也でも敵わない武人だ。周に気づくことが出来る程度のものであれば、紫呉が気配を察知して起きるなど造作もないことだろう。
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