「これを見ずして薬師マックは語れない」『【トレ】薬師マックスレ【名物】』

朝陽天満

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 番外編【気になる】セッテの街情報スレッド【あの街】

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「今日のセッテなんだが、とある一画で激震が走った」

「何が起きたの?」

「なんだなんだ」

「新種の何かが出て来たとか」

「ユニークボス? どんなの出て来たんだ?」

「ある意味ユニークボスよりレアものを見た」

「Σ(゜Д゜)」

「え」

「うっわ気になる」

「kwsk」

「wktk」

「俺がそれを見たのはセッテの果樹園なんだが」

「果樹園?」

「俺、あんまり果樹園って行かない」

「あの端っこに位置する場所にあるやつだろ」

「ああ。その果樹園なんだが、大物ゲストが来た」

「大物……? もしかしてトップランカー?」

「最近全然見かけないダンジョンサーチャーとか?」

「いや……惜しい。近い」

「Σ(゜Д゜)惜しいのか!?」

「Σ(゜Д゜)近いって……誰だよ! それくらいレアな人って他にいる?」

「勇者がセッテの果樹園に来ていた」

「ええーーーーー!」

「何それ、ほんとは勇者って果物好きとか?」

「だったら頻繁に見てるはずだろ」

「じゃあ何しに来たんだろ」

「果物買いにだろ!」

「突っ込みが正論!」

「だよなあ、それしかねえよな」

「でもそれだけじゃない。勇者、果樹園のおっさんに土下座していたんだ」

「Σ(゜Д゜)」

「(゜Д゜;)」

「マジか……(;゜д゜)ゴクリ…」

「なんで?」

「気になるから途中で止めるなよ」

「だったら静かに次の文字打つの待ってろよ」

「正論が痛い」

「気になって近付いたらたまたま聞こえて来たんだけど、どうやらまだ本格的に売り出してない新種の果物を売って欲しいってことらしい」

「そんな果物あるのか? ちょっと今度覗いてみようかな」

「そんでそんで?」

「続きはよ」

「ああ。勇者が買っていたのは桃のような果物。いい香りがした。それを大量に買い付けたいってことだったんだが」

「(;゜д゜)ゴクリ…」

「(゜д゜)(。_。)ウンうん」

「ここからはちょっと勇者の言葉を出来る限り正確に再現してみるな。(なお、衝撃によりあまり正確とは言えない)」

「ま、まて! そんな衝撃の内容なのか!?」

「うわあああ気になる!」

「はよはよ!」

「『最愛の妻が食事も喉を通らなく、日に日に痩せている中、口にすることが出来たのが、ここの果物でした。もし農園主のご迷惑にならないのであれば、あの果物を売って欲しい。お願いします』ここで土下座」

「Σ(゜Д゜)」

「王女様が!?」

「え、勇者が土下座するほど具合悪いのか!?」

「うわあああああ王女様ああああ! 俺、辺境に行ったときに気さくに挨拶してもらってからのファンなんだよおおおおお! あの優しいまなざしが閉じられている……だと?」

「俺も! 勇者と一緒にいる時に、にっこり笑って手を振ってくれて……!」

「それはファンサだ。本心の笑顔じゃない! あの方の本心の笑顔は、勇者の膝に乗っている時に見せる蕩けるような笑顔だ」

「いや、勇者の膝に王女様が乗った時に蕩ける笑顔を見せるのは勇者の方であって、その時の王女様はちょっと照れたような困ったような複雑な笑顔をしているぞ!」

「お前ら詳し過ぎか!?」

「でもあのお方が病に倒れたなんて……!」

「俺、ありったけの薬を渡してくる!……直接届けると勇者に殺されるから、勇者経由で……」

「俺も行く……!」

「うわああああん、王女様、死なないでえええええ!」

「盛り上がっているところ悪い。王女様は病気じゃないんだ」

「Σ(゜Д゜)」

「え!」

「(゜Д゜;)」

「紛らわしい! ホントに!? それならいいけど!」

「ああ。俺らもびっくりして、勇者が帰った後それとなくおっさんに聞いたんだよ。そしたらさ、王女様、懐妊したって」

「懐妊……」

「何度目かの(゜Д゜;)」

「懐妊……?」

「KA★I★NI★NN?」

「「「「「うおおおおおおおおーーーーーーー!!!!」」」」」

「今夜は祝杯だ!」

「祝杯を勇者に届けよう!」

「めでてえええええ!」

「つわりが酷くてあの桃みたいな果物しか食べられないから、売ってくれ、と土下座していたらしい」

「勇者……トゥンク」

「勇者は……やっぱり勇者だった」

「奥さんのために土下座できるなんて」

「奥さんのためにそんなこと出来るなんて」

「すげえ、すげえぞ勇者」

「ちょっと俺は、この事実を辺境スレに載せてくるな」

「じゃあ俺、気になる街の人スレに載せてくる」

「皆でお祝いしようぜ!」

「やったお祝い!」

「おめでとう勇者!」

「おめでとう!!!」

「そして俺は、その売り出されていない果物に思いを馳せよう……買えたら、王女様に差し入れよう」



-・-・-・-・-・-・-・-・-・-

そうして、光の速さで勇者の家の慶事がプレイヤーたちの間に広まっていくのだった……。

(※なお、王家にはまだ報告していない……)

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