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172、甘えてしまった
しおりを挟むえ、と。
もしかして、飲めない俺に口移しで飲ませてくれた……?
動くようになった手で、俺を抱きしめているヴィデロさんの腕を掴む。
超ドアップ美形ありがとうございます。何度キスしてもこの顔は見飽きることがないよ。好き。
でも、その美形は厳しく歪んでおり、泣きそうな雰囲気だった。
俺の手がヴィデロさんの腕を掴んだことで、スッとヴィデロさんの口が離れていく。
口の横が湿った感じがするのは、流れ落ちたディスペルハイポーションなんだろうな。
「ヴィデロさん……ありがとう」
出るようになった声で礼を言って見上げると、泣き笑いのような歪んだ口のヴィデロさんが俺を見下ろした。
ああ、この顔はちょっとさせたくなかったかも。
実験のためとはいえ、ヴィデロさんを悲しませるのは胸に来る。
「マック、大丈夫か? 呪いは消えたか?」
何も言わずに俺を見下ろしているヴィデロさんの肩越しから、マルクスさんが覗き込んできた。
視線をそっちに移して、頷く。
「呪いは消えたよ。もう大丈夫。これでディスペルハイポーションがちゃんと効くって証明されたね」
「はー、よかった。マックが倒れた時はどうなるかと思ったぜ……」
安心したように息を吐くマルクスさんに少しだけ和んでから、もう一度ヴィデロさんを見上げた。いまだ、俺の身体はヴィデロさんの腕の中。
もう大丈夫だよって口を開こうとした瞬間、もう一度ヴィデロさんの唇が俺の口を塞いだ。
「……ん、んん」
いきなりの情熱的なキスに、思わず鼻に掛かったような変な声が洩れる。
気持ちいい。そういえば最近こういうことしてなかったな。
舌を絡められてついつい目を閉じて堪能していると、ヴィデロさんの後ろから「続きは違うところでしろよ。っても、マックはまだ未成年だからなヴィデロ」とマルクスさんの呆れたような声が聞こえた。
唾液の糸を引きながら、ヴィデロさんの唇が離れていく。ああ、名残惜しい。もっと欲しい。
でもさすがにマルクスさんとジャル・ガーさんの前でとかは無理だから。
ヴィデロさんの腕から身体を起こして、ついでにヴィデロさんの胸筋を一度ギュッと堪能してから立ち上がる。
途端にふらっと眩暈がした。そういえば前の解呪の時もスタミナ消耗激しかったような。
スタミナ回復しそうなお茶を聖水にしてそれをディスペルハイポーションにしたら、もしかしてこのフラフラもなくなったりして。
なんて、差し出されたヴィデロさんの腕に掴まりながら思う。今度やってみよう。
「おら、帰るぞ。ヴィデロはマックを抱えて、マックの安全だけ確保しとけよ。俺が魔物を何とかするから。マックはおとなしくヴィデロに抱えられてろ」
マルクスさんに声を掛けられて、ヴィデロさんがひょいと俺を抱え上げた。凄く軽そうに俺を持ってるけど、この状態で洞窟の外までってヴィデロさん辛くないかな。
「今スタミナポーション飲むから待ってて」
「いや、抱えていくからそのまま少し休んでろ。っていうかたまにはこういう役得も必要なんだ。甘えてくれ」
俺を抱きかかえたままのヴィデロさんとマルクスさんは、頷き合うと部屋を出て走り始めた。
肩に頭を預けるのがすごく気持ちいい。
出てくる魔物はマルクスさんが無双していくから、ものすごい安心感に包まれる。
ヴィデロさんの腕の中でじわじわとスタミナも回復し、洞窟の入り口に着くころには俺は元気になっていた。
下ろしてって言ってもヴィデロさん下ろしてくれないんだもん。結局は出口までずっと抱っこだった。でも下ろされても二人のスピードにはついていけそうもないっていうのがちょっと情けない。ヴィデロさんはこんな大荷物を抱えてるのにスピードが全然落ちなかった。すごすぎる。
馬に乗ってトレまで戻ってきた俺たちは、すぐにブロッサムさんに呪いが解けたことを報告した。
「じゃあそろそろヴィデロを本格的にフリーにするか」
「ちょっと待って、出発はもう少し先になっちゃうんだ。でもそれ以降なら一気にセィまで行けるようになるから」
「じゃあ、マックの予定に合わせるか。なかなか薬師ってのも忙しいもんだな」
ブロッサムさんの言葉にすいません薬師がじゃなくて学生が忙しいんです、と心の中で答える。もうすぐ冬休みなんだ。冬休みになったら一気にセィに行けるようになるからそれまであと二週間だけ待って欲しい。
ブロッサムさんとマルクスさんに挨拶しながら詰所を出て、ヴィデロさんと並んで工房に向かう。
こうしてずっと一緒に行動するのに慣れちゃったら、宰相のクエストが終わってからの行動が味気ない物になっちゃいそうでちょっと困るなあ。
他愛ない話を楽しみながら、ちらりとヴィデロさんを見上げる。
その視線に気づいたヴィデロさんが頬を緩ませる。こういう時間がほんとに好き。
「じゃあマック、今日はゆっくり休めよ」
工房の入り口で、ヴィデロさんが俺の頬をひと撫でして口を開いた。
なんとなく離れるのが名残惜しくて、帰ろうとするヴィデロさんの裾を咄嗟に掴むと、「どうした?」とヴィデロさんが振り返った。
「ちょっと工房に寄って行って欲しいな、なんて」
もう結構遅い時間だから引き留めるのもどうかと思うんだけど、でも。
さっきヴィデロさんの腕の中を堪能してしまったら、もっと違う欲求が沸いちゃって。
俺の誘いに、ヴィデロさんは少しだけ考えた後、「じゃあ、お邪魔する」と身を屈めて俺の耳元で囁いた。
ヴィルさんの抜け殻を隠してる衝立をチラ見しながら、俺とヴィデロさんは奥の部屋に進んだ。
ヴィルさんがログインする時間がないのはわかってるけど、ちゃんと部屋に鍵を掛ける。
途中倉庫のインベントリから取り出してきたホットゼリーと細胞活性剤(小)をベッドの横の小さなテーブルに置いて、装備を外していくと、ヴィデロさんの手が俺の服に伸びてきた。
少し嬉しくなって、俺もヴィデロさんの服に手を伸ばす。
「マック、無理はするなよ」
「この雰囲気で我慢する方が無理だと思う」
ヴィデロさんのシャツのボタンを外しながら、胸筋に唇をくっつけると、お返しとばかりにインナーを持ち上げられて、俺の胸がさらされる。あっさり筋肉のその身体はヴィデロさんの横に並ぶと貧相としか言えない。
スポッとインナーを脱がされて、肌があらわになる。腰の傷と羽根の刺青がヴィデロさんの目に晒されると、ヴィデロさんの視線が羽根の刺青に注がれた。
細胞活性剤(小)を手に取って舐めるように口に含んでから、自分で下半身を覆う衣類に手を掛けた。
「この羽根の模様、すごくマックに似合ってる」
心臓の丁度上付近にある刺青をヴィデロさんがゴツイ手のひらで撫でていく。
ぞわぞわした感じがやっぱり腰のオプション傷を触られた時みたいだ。
俺の身体が反応したのがお気に召したのか、ヴィデロさんはそっとその羽根に唇を寄せた。
「……っあ」
身体が自分の意志とは関係なくびくびくと震える。
出すつもりのなかった甘い声が洩れる。
やっぱり羽根も快感ブーストかかるやつだった。
「そこ、そこばっかり、あ、あぁ……っ」
「この羽根は、俺のことを想ってくれたから現れたものなんだろ……?」
「そ、うだけど、そこにキスされてるだけで、ん、おかしくなりそう……っ」
既にじわっと何かが零れてる気がする。ヴィデロさんにのし掛かられてるから自分の身体が見えないけど。
だって、ヴィデロさんの身体に押し付けちゃってるブツがすごく熱いから。
ヴィデロさんに羽根をちゅ、とされるたびに、挟まれたものがヒクっと動いて、擦れてヤバい。
「マック可愛い」
「あっ、待って……っ、ダメだって、ちょ、んん……っ」
一瞬本気で昇天しそうになって、慌ててヴィデロさんの頭を抱き込んで胸に抑え込む。
ホッと熱を抑えられたことに息を吐いていると、ヴィデロさんが俺の腰を手でポンポンと叩いた。
腕を離すと、ヴィデロさんがぷはっと胸から離れる。
「マック、苦しい」
「ごめん、でも待ってって言ったのに」
「そのままもっと気持ちよくなってていいのに」
口を尖らす俺に苦笑すると、ヴィデロさんはその口にチュッとキスをした。
ホットゼリーで熱くなった中をさらにヴィデロさんに熱く掻き回されて、熱を放出する。
深い所でヴィデロさんのヴィデロさんを感じるたびに愛しさも溢れていく。
ぴったりとくっついた肌がすごく気持ちいい。ヴィデロさんの気持ちよさそうな顔が好き。もっと俺で気持ちよくなって。
舌を絡め合うキスを繰り返して、ヴィデロさんの手が羽根を撫でていく。俺は首に腕を回して、もっととキスをねだる。
「ん、あ……っ、も、イく……っ」
「俺ももう……、マック、愛してる……っ」
愛してるの囁き声と共に、奥にヴィデロさんが熱を放出する。同時に俺の身体も震えて、頭が真っ白になった。
離れがたくて名残惜しくて、しばらくはその状態でヴィデロさんの肌を堪能した。
工房の扉の手前でお別れのキスをすると、ヴィデロさんは詰所に帰っていった。
満足の溜め息を吐きながら、未だ奥でくすぶる熱を下げるために、日課になってしまった祈りの態勢に入る。
聖水ランクBを作れるようになってからは少しずつ聖水を増やしてるから、今日も忘れず空瓶5本だけ並べて、水魔法を唱える。
瓶に水が満たされたのを確認して、俺は目を閉じて祝詞を唱え始めた。
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