これは報われない恋だ。

朝陽天満

文字の大きさ
86 / 744
連載

172、甘えてしまった

しおりを挟む

 え、と。

 もしかして、飲めない俺に口移しで飲ませてくれた……?

 動くようになった手で、俺を抱きしめているヴィデロさんの腕を掴む。

 超ドアップ美形ありがとうございます。何度キスしてもこの顔は見飽きることがないよ。好き。

 でも、その美形は厳しく歪んでおり、泣きそうな雰囲気だった。

 俺の手がヴィデロさんの腕を掴んだことで、スッとヴィデロさんの口が離れていく。

 口の横が湿った感じがするのは、流れ落ちたディスペルハイポーションなんだろうな。



「ヴィデロさん……ありがとう」



 出るようになった声で礼を言って見上げると、泣き笑いのような歪んだ口のヴィデロさんが俺を見下ろした。

 ああ、この顔はちょっとさせたくなかったかも。

 実験のためとはいえ、ヴィデロさんを悲しませるのは胸に来る。



「マック、大丈夫か? 呪いは消えたか?」



 何も言わずに俺を見下ろしているヴィデロさんの肩越しから、マルクスさんが覗き込んできた。

 視線をそっちに移して、頷く。



「呪いは消えたよ。もう大丈夫。これでディスペルハイポーションがちゃんと効くって証明されたね」

「はー、よかった。マックが倒れた時はどうなるかと思ったぜ……」



 安心したように息を吐くマルクスさんに少しだけ和んでから、もう一度ヴィデロさんを見上げた。いまだ、俺の身体はヴィデロさんの腕の中。

 もう大丈夫だよって口を開こうとした瞬間、もう一度ヴィデロさんの唇が俺の口を塞いだ。



「……ん、んん」



 いきなりの情熱的なキスに、思わず鼻に掛かったような変な声が洩れる。

 気持ちいい。そういえば最近こういうことしてなかったな。

 舌を絡められてついつい目を閉じて堪能していると、ヴィデロさんの後ろから「続きは違うところでしろよ。っても、マックはまだ未成年だからなヴィデロ」とマルクスさんの呆れたような声が聞こえた。



 唾液の糸を引きながら、ヴィデロさんの唇が離れていく。ああ、名残惜しい。もっと欲しい。

 でもさすがにマルクスさんとジャル・ガーさんの前でとかは無理だから。

 ヴィデロさんの腕から身体を起こして、ついでにヴィデロさんの胸筋を一度ギュッと堪能してから立ち上がる。

 途端にふらっと眩暈がした。そういえば前の解呪の時もスタミナ消耗激しかったような。

 スタミナ回復しそうなお茶を聖水にしてそれをディスペルハイポーションにしたら、もしかしてこのフラフラもなくなったりして。

 なんて、差し出されたヴィデロさんの腕に掴まりながら思う。今度やってみよう。



「おら、帰るぞ。ヴィデロはマックを抱えて、マックの安全だけ確保しとけよ。俺が魔物を何とかするから。マックはおとなしくヴィデロに抱えられてろ」



 マルクスさんに声を掛けられて、ヴィデロさんがひょいと俺を抱え上げた。凄く軽そうに俺を持ってるけど、この状態で洞窟の外までってヴィデロさん辛くないかな。



「今スタミナポーション飲むから待ってて」

「いや、抱えていくからそのまま少し休んでろ。っていうかたまにはこういう役得も必要なんだ。甘えてくれ」



 俺を抱きかかえたままのヴィデロさんとマルクスさんは、頷き合うと部屋を出て走り始めた。

 肩に頭を預けるのがすごく気持ちいい。

 出てくる魔物はマルクスさんが無双していくから、ものすごい安心感に包まれる。

 ヴィデロさんの腕の中でじわじわとスタミナも回復し、洞窟の入り口に着くころには俺は元気になっていた。

 下ろしてって言ってもヴィデロさん下ろしてくれないんだもん。結局は出口までずっと抱っこだった。でも下ろされても二人のスピードにはついていけそうもないっていうのがちょっと情けない。ヴィデロさんはこんな大荷物を抱えてるのにスピードが全然落ちなかった。すごすぎる。



 馬に乗ってトレまで戻ってきた俺たちは、すぐにブロッサムさんに呪いが解けたことを報告した。



「じゃあそろそろヴィデロを本格的にフリーにするか」

「ちょっと待って、出発はもう少し先になっちゃうんだ。でもそれ以降なら一気にセィまで行けるようになるから」

「じゃあ、マックの予定に合わせるか。なかなか薬師ってのも忙しいもんだな」



 ブロッサムさんの言葉にすいません薬師がじゃなくて学生が忙しいんです、と心の中で答える。もうすぐ冬休みなんだ。冬休みになったら一気にセィに行けるようになるからそれまであと二週間だけ待って欲しい。

 ブロッサムさんとマルクスさんに挨拶しながら詰所を出て、ヴィデロさんと並んで工房に向かう。

 こうしてずっと一緒に行動するのに慣れちゃったら、宰相のクエストが終わってからの行動が味気ない物になっちゃいそうでちょっと困るなあ。

 他愛ない話を楽しみながら、ちらりとヴィデロさんを見上げる。

 その視線に気づいたヴィデロさんが頬を緩ませる。こういう時間がほんとに好き。



「じゃあマック、今日はゆっくり休めよ」



 工房の入り口で、ヴィデロさんが俺の頬をひと撫でして口を開いた。

 なんとなく離れるのが名残惜しくて、帰ろうとするヴィデロさんの裾を咄嗟に掴むと、「どうした?」とヴィデロさんが振り返った。



「ちょっと工房に寄って行って欲しいな、なんて」



 もう結構遅い時間だから引き留めるのもどうかと思うんだけど、でも。

 さっきヴィデロさんの腕の中を堪能してしまったら、もっと違う欲求が沸いちゃって。



 俺の誘いに、ヴィデロさんは少しだけ考えた後、「じゃあ、お邪魔する」と身を屈めて俺の耳元で囁いた。







 ヴィルさんの抜け殻を隠してる衝立をチラ見しながら、俺とヴィデロさんは奥の部屋に進んだ。

 ヴィルさんがログインする時間がないのはわかってるけど、ちゃんと部屋に鍵を掛ける。

 途中倉庫のインベントリから取り出してきたホットゼリーと細胞活性剤(小)をベッドの横の小さなテーブルに置いて、装備を外していくと、ヴィデロさんの手が俺の服に伸びてきた。

 少し嬉しくなって、俺もヴィデロさんの服に手を伸ばす。



「マック、無理はするなよ」

「この雰囲気で我慢する方が無理だと思う」



 ヴィデロさんのシャツのボタンを外しながら、胸筋に唇をくっつけると、お返しとばかりにインナーを持ち上げられて、俺の胸がさらされる。あっさり筋肉のその身体はヴィデロさんの横に並ぶと貧相としか言えない。

 スポッとインナーを脱がされて、肌があらわになる。腰の傷と羽根の刺青がヴィデロさんの目に晒されると、ヴィデロさんの視線が羽根の刺青に注がれた。

 細胞活性剤(小)を手に取って舐めるように口に含んでから、自分で下半身を覆う衣類に手を掛けた。



「この羽根の模様、すごくマックに似合ってる」



 心臓の丁度上付近にある刺青をヴィデロさんがゴツイ手のひらで撫でていく。

 ぞわぞわした感じがやっぱり腰のオプション傷を触られた時みたいだ。

 俺の身体が反応したのがお気に召したのか、ヴィデロさんはそっとその羽根に唇を寄せた。



「……っあ」



 身体が自分の意志とは関係なくびくびくと震える。

 出すつもりのなかった甘い声が洩れる。

 やっぱり羽根も快感ブーストかかるやつだった。



「そこ、そこばっかり、あ、あぁ……っ」

「この羽根は、俺のことを想ってくれたから現れたものなんだろ……?」

「そ、うだけど、そこにキスされてるだけで、ん、おかしくなりそう……っ」



 既にじわっと何かが零れてる気がする。ヴィデロさんにのし掛かられてるから自分の身体が見えないけど。

 だって、ヴィデロさんの身体に押し付けちゃってるブツがすごく熱いから。

 ヴィデロさんに羽根をちゅ、とされるたびに、挟まれたものがヒクっと動いて、擦れてヤバい。



「マック可愛い」

「あっ、待って……っ、ダメだって、ちょ、んん……っ」



 一瞬本気で昇天しそうになって、慌ててヴィデロさんの頭を抱き込んで胸に抑え込む。

 ホッと熱を抑えられたことに息を吐いていると、ヴィデロさんが俺の腰を手でポンポンと叩いた。

 腕を離すと、ヴィデロさんがぷはっと胸から離れる。



「マック、苦しい」

「ごめん、でも待ってって言ったのに」

「そのままもっと気持ちよくなってていいのに」



 口を尖らす俺に苦笑すると、ヴィデロさんはその口にチュッとキスをした。







 ホットゼリーで熱くなった中をさらにヴィデロさんに熱く掻き回されて、熱を放出する。

 深い所でヴィデロさんのヴィデロさんを感じるたびに愛しさも溢れていく。

 ぴったりとくっついた肌がすごく気持ちいい。ヴィデロさんの気持ちよさそうな顔が好き。もっと俺で気持ちよくなって。

 舌を絡め合うキスを繰り返して、ヴィデロさんの手が羽根を撫でていく。俺は首に腕を回して、もっととキスをねだる。



「ん、あ……っ、も、イく……っ」

「俺ももう……、マック、愛してる……っ」



 愛してるの囁き声と共に、奥にヴィデロさんが熱を放出する。同時に俺の身体も震えて、頭が真っ白になった。

 離れがたくて名残惜しくて、しばらくはその状態でヴィデロさんの肌を堪能した。





 工房の扉の手前でお別れのキスをすると、ヴィデロさんは詰所に帰っていった。

 満足の溜め息を吐きながら、未だ奥でくすぶる熱を下げるために、日課になってしまった祈りの態勢に入る。

 聖水ランクBを作れるようになってからは少しずつ聖水を増やしてるから、今日も忘れず空瓶5本だけ並べて、水魔法を唱える。

 瓶に水が満たされたのを確認して、俺は目を閉じて祝詞を唱え始めた。

しおりを挟む
感想 537

あなたにおすすめの小説

私と子供より、夫は幼馴染とその子供のほうが大切でした。

小野 まい
恋愛
結婚記念日のディナーに夫のオスカーは現れない。 「マリアが熱を出したらしい」 駆けつけた先で、オスカーがマリアと息子カイルと楽しげに食事をする姿を妻のエリザが目撃する。 「また裏切られた……」 いつも幼馴染を優先するオスカーに、エリザの不満は限界に達していた。 「あなたは家族よりも幼馴染のほうが大事なのね」 離婚する気持ちが固まっていく。

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

番に見つからない街で、子供を育てている

はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。 異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。 現世の記憶は失われているが、 この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。 街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、 ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。 だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。 再会は望まない。 今はただ、この子との生活を守りたい。 これは、番から逃げたオメガが、 選び直すまでの物語。 *本編完結しました

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

逃げた弟のかわりに溺愛アルファに差し出されました。初夜で抱かれたら身代わりがばれてしまいます💦

雪代鞠絵/15分で萌えるBL小説
BL
逃げた弟の身代わりとなり、 隣国の国王である溺愛アルファに嫁いだオメガ。 しかし実は、我儘で結婚から逃げ出した双子の弟の身代わりなのです… オメガだからと王宮で冷遇されていたので、身代わり結婚にも拒否権が なかたのでした。 本当の花嫁じゃない。 だから何としても初夜は回避しなければと思うのですが、 だんだん王様に惹かれてしまい、苦しくなる…という お話です。よろしくお願いします<(_ _)>

五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~

放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」 大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。 生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。 しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。 「すまない。私は父としての責任を果たす」 かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。 だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。 これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。

悪役令息ですが破滅回避で主人公を無視したら、高潔な態度だと勘違いされて聖人認定。なぜか溺愛ルートに入りました

水凪しおん
BL
BL小説『銀の瞳の聖者』の悪役令息ルシアンに転生してしまった俺。 原作通りなら、主人公ノエルをいじめ抜き、最後は断罪されて野垂れ死ぬ運命だ。 「そんなの絶対にお断りだ! 俺は平和に長生きしたい!」 破滅フラグを回避するため、俺は決意した。 主人公ノエルを徹底的に避け、関わらず、空気のように生きることを。 しかし、俺の「無視」や「無関心」は、なぜかノエルにポジティブに変換されていく。 「他の人のように欲望の目で見ないなんて、なんて高潔な方なんだ……!」 いじめっ子を視線だけで追い払えば「影から守ってくれた」、雨の日に「臭いから近寄るな」と上着を投げつければ「不器用な優しさ」!? 全力で嫌われようとすればするほど、主人公からの好感度が爆上がりして、聖人認定されてしまう勘違いラブコメディ! 小心者の悪役令息×健気なポジティブ主人公の、すれ違い溺愛ファンタジー、ここに開幕!

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ユィリと皆の動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新 Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新 プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー! ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。