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高二ノ秋1
ファーストキスは塩の味
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突然ぶっちゅーと口づけをかましてきた生徒会長美作は、俺がフリーズしているのをいいことに、腰に手を回して引き寄せた。
「んー!!」
胸に手を当てて押すが、こいつ力強いな!?本当に病気で休んでたのか?しかも胸板厚っと四苦八苦しているうちに、半開きになった唇の隙間から、美作の舌が入り込んできた。
いやいやいや、マジでちょっと待て。エマージェンシー、エマージェンシー!
「んっ、んんっ、んむっ、んっ!」
「ふふふ」
ふふふじゃねーんだわ。
反射的に綺麗な顔を殴り倒してやろうと思ったが、ぎゅっと拳を握ったところで我に返って手を止めた。
こんな公衆の面前で、よりにもよって生徒会長を殴ったとあっては、確実にクソ親父に連絡がいく。
ここまで高校生活の半分を耐え忍んできた苦労が水の泡だ。
俺が大した抵抗をしないのを良いことに、調子に乗った美作の舌が口の中を蠢いた。逃げ惑う舌を絡め取っては、吸い付いてきたり、歯茎をなぞったり。
「んん……、んっ、んーっ、うっ!」
奴の方が身長が高いので、唾液が重力に従って俺の口の中に注がれていく。
飲み込めなくて、口の端から垂れて首に伝い落ちた。
ホォ……と周囲から感嘆の声が聞こえて来るが、こっちはそれどころではない。
息が、やばい。
「んっ、んむぅっ」
こちとらヤンキー極めてたので、女っけなんて全くない世界だ。中には彼女作ってる奴もいたし、自分自身告白されたこともある。でも、今は慕ってくれる奴等の方を大事にしたいと、お付き合いまでは発展しなかった。
ああそうだ。童貞ですよ、何が悪い。
現実逃避の悪態をついている場合じゃない。マジで、酸素、くれ。
視界がぼやけてくる。
真っ赤な顔で、涙目を通り越して虚ろになってきた瞳に、流石の美作もまずいと思ったようで。
ようやく唇が離れていった。散々混ざり合っていた唾液が、名残惜しむように糸を繋ぎ、プツリと切れた。
「は、ぁ……ハァ……」
くらりと酸欠による眩暈でその場にへたり込みそうになったのを、美作がベンチに座らせた。
「つ、司先輩大丈夫ですか……?」
尋常じゃない俺の様子に、紘川が心配そうに声をかけてくる。
その様子を眺めていた美作が、嗤った。
「キスの最中の息継ぎの仕方もわからないなんて、もしかして……ファーストキスだった?」
「~~~っ!」
真っ赤な顔で、睨む。
ウルセー図星だよ。
「おにぎりの味のせいかな。しょっぱかったね」
唇についた俺の唾液に残っていた塩味を舐めとると、また周りが色めき立った。
「会長の舌ぺろ威力エッッグイ」
「さっきから動悸が止まらないんだけど」
「司様トロトロにされちゃって、可愛いの極み」
「会長×悪役令嬢?悪役令嬢ものでも、王子に愛される系あるし断然ありですご馳走様でした」
王子ってなんだ王子って。こいつは生徒会長。俺の役割の世界とは別になるはず、なんだが……。
「それではつまらないだろう?」
「何言ってるかよくわかんないすね」
「つまり、俺を含めた生徒会役員。他にもいろいろいるけど、司を手籠にしようと思ってるってこと♡」
「アーアー聞こえない」
キャー!と興奮の声が上がった。
ほんと待って。俺を置いて盛り上がらないで。
「精々足掻いて、楽しませてね」
そう言って、美作は口角を吊り上げた。
「んー!!」
胸に手を当てて押すが、こいつ力強いな!?本当に病気で休んでたのか?しかも胸板厚っと四苦八苦しているうちに、半開きになった唇の隙間から、美作の舌が入り込んできた。
いやいやいや、マジでちょっと待て。エマージェンシー、エマージェンシー!
「んっ、んんっ、んむっ、んっ!」
「ふふふ」
ふふふじゃねーんだわ。
反射的に綺麗な顔を殴り倒してやろうと思ったが、ぎゅっと拳を握ったところで我に返って手を止めた。
こんな公衆の面前で、よりにもよって生徒会長を殴ったとあっては、確実にクソ親父に連絡がいく。
ここまで高校生活の半分を耐え忍んできた苦労が水の泡だ。
俺が大した抵抗をしないのを良いことに、調子に乗った美作の舌が口の中を蠢いた。逃げ惑う舌を絡め取っては、吸い付いてきたり、歯茎をなぞったり。
「んん……、んっ、んーっ、うっ!」
奴の方が身長が高いので、唾液が重力に従って俺の口の中に注がれていく。
飲み込めなくて、口の端から垂れて首に伝い落ちた。
ホォ……と周囲から感嘆の声が聞こえて来るが、こっちはそれどころではない。
息が、やばい。
「んっ、んむぅっ」
こちとらヤンキー極めてたので、女っけなんて全くない世界だ。中には彼女作ってる奴もいたし、自分自身告白されたこともある。でも、今は慕ってくれる奴等の方を大事にしたいと、お付き合いまでは発展しなかった。
ああそうだ。童貞ですよ、何が悪い。
現実逃避の悪態をついている場合じゃない。マジで、酸素、くれ。
視界がぼやけてくる。
真っ赤な顔で、涙目を通り越して虚ろになってきた瞳に、流石の美作もまずいと思ったようで。
ようやく唇が離れていった。散々混ざり合っていた唾液が、名残惜しむように糸を繋ぎ、プツリと切れた。
「は、ぁ……ハァ……」
くらりと酸欠による眩暈でその場にへたり込みそうになったのを、美作がベンチに座らせた。
「つ、司先輩大丈夫ですか……?」
尋常じゃない俺の様子に、紘川が心配そうに声をかけてくる。
その様子を眺めていた美作が、嗤った。
「キスの最中の息継ぎの仕方もわからないなんて、もしかして……ファーストキスだった?」
「~~~っ!」
真っ赤な顔で、睨む。
ウルセー図星だよ。
「おにぎりの味のせいかな。しょっぱかったね」
唇についた俺の唾液に残っていた塩味を舐めとると、また周りが色めき立った。
「会長の舌ぺろ威力エッッグイ」
「さっきから動悸が止まらないんだけど」
「司様トロトロにされちゃって、可愛いの極み」
「会長×悪役令嬢?悪役令嬢ものでも、王子に愛される系あるし断然ありですご馳走様でした」
王子ってなんだ王子って。こいつは生徒会長。俺の役割の世界とは別になるはず、なんだが……。
「それではつまらないだろう?」
「何言ってるかよくわかんないすね」
「つまり、俺を含めた生徒会役員。他にもいろいろいるけど、司を手籠にしようと思ってるってこと♡」
「アーアー聞こえない」
キャー!と興奮の声が上がった。
ほんと待って。俺を置いて盛り上がらないで。
「精々足掻いて、楽しませてね」
そう言って、美作は口角を吊り上げた。
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