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episode.6 魚人の恥じらい
しおりを挟むミベロに変に火照る顔を見られまいと顔を真逆に向けたが、すぐにこの不自然な動きを変に思われると思った私は、取り繕うように声を張った。
「じゃ、じゃあ早速向かおっか! 私のカヤックについてきてって……あ、そういえばパドルが……」
言っている途中で私はパドルが流されていた事を思い出した。辺りを見回すもその姿はない。
ミベロはきょろきょろしている私を不思議そうに見ていたが、突然はっとした顔で慌てて手を上げた。
ざばぁと海面を掻き分けて現れた赤いそれに私は驚いて声が出てしまう。
「パドル!」
「コレ、ナオ、探ス?」
「うん、そう! それ探してた。ミベロが持ってたんだ、ありがとう」
私はお礼を言いながらパドルを受け取ろうとした。
しかしパドルにはカヤックの周囲を覆うワカメが絡まっていて思うように手に取れない。
振りほどこうと思いきりパドルを持ち上げると何かがちぎれる音と共にパドルは軽くなった。
パドルを振ってまとわりつくワカメを海に落としていると、すぐ傍で聞き取れない言葉が聞こえた。
悲鳴のようにも聞こえたそれはミベロが発していた。
「どうしたの!?」
驚く私の声も無視して、ミベロは頭を押さえながら私が振り落としたワカメを集め始めた。
しかし散り散りになったそれらは波に遊ばれるまま彼方へ流されていく。
彼女の必死な様子から私は何かいけない事をしでかしたのではと不安になる。
「ごめん、もしかしてそれ、大事な物だった!?」
「頭、隠ス、ナイ……ダメ」
振り返ったミベロの頭の右半分の素肌が露わになっていた。
ネットのような物を被ってそこにワカメを絡めていたようだが、それを私が引き抜いてしまったらしい。
彼女は青白い頭皮を隠そうと必死に手で覆っている。
人間とは違って髪はなく滑らかな頭はイルカのような洗練された曲線美を象る。
それを野暮ったいワカメで隠す方が不思議だった。
「無い方が可愛いのに」
私の呟きに彼女はびくっと体を揺らし、どんどん海に沈んでいく。
そんな恥じらう姿も女の子らしく可愛らしい。
だが頭を隠しきれず動揺が収まらないミベロがだんだん泣きそうにも見えてきた。
魚人にとって頭を隠す事は思ったよりも大事な事なのかもしれない。少し悩んだ私はいい事を思いついた。
「ミベロ、頭が隠せればいいんだよね?」
瞳を潤ませたミベロは戸惑い顔でこくりと頷いた。
そんな彼女を安心させるよう私はにっこり笑って言った。
「じゃあさ、ちょっと家までついてきてくれる?」
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