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終幕の足音 1
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会議室に集めたのは、医師、医官であるナジェスタ・ユスト。俺直属の従者・武官・文官たち。そして騎士長ジークと、女中頭、兵士長、研修官まで。
研修官も呼んだのは、ロレンが既に陛下のご懐妊を承知しているからと、王宮に属する者として、有事の際は陛下の手足となる立場であるため。
例外としてギルも加えたが、ブンカケン所属者からの代表として扱った。
なにせギルは、陛下とのゴタゴタ……白の病の一件に深く関わっていたから、省けなかったのだよな……。それに、彼の場合何をしても陛下が視界に入ればバレるし。
何事かとざわめく彼らを前に、隣のサヤへ目配せした。外に音は無いかという声無き問いに、サヤはこくりと頷く。
よし……では始めよう。
「今日まで長く伏せていたことを本日告げる許しを得た。
陛下はご懐妊されている。現在御子を宿して九ヶ月に差し掛かった段階だ」
会議室に集まった面々にそう告げると、皆の表情が固まった。
ユストとナジェスタは知っていたものの、秘密を守っていくのは結構骨が折れたらしく、大きな息を吐く。
「長かったあああぁぁぁぁ」
ユストの場合、あまり内緒事が得意じゃないナジェスタの失言にも注意を払っていたから、余計にだろう……。
「ごっ、ご懐妊⁉︎」
「九ヶ月っ……もうっ、ご出産直前ではございませんか!」
慌てふためく一同。特に貴族外の面々の混乱ぶりは凄まじい。
少し前に、陛下と娘の謁見に付き合ったクロードも気付いていなかったから、唖然と口を開いて固まっている。
まぁ、ふんわりと広がる袴をお召しになり、座した状態で、薄絹の帷を介しての謁見。細心の注意を払っていたのだから、気付く者は稀だろう。
とはいえ、まだご懐妊しか告げていないここで慌てられても困る。とりあえず落ち着け。
「あまり声を荒立てるな。
一応皆には伝えるけど、実際無事ご出産に漕ぎつけるまでは、極力秘しておいてほしいからね。今この場にいない者にはこれからも伏せるように。
陛下のご懐妊は公爵四家の中でも、まだアギーしかご存知ないことだ。
知っての通り、王家の白の病……あれを払うことができているかどうか……その瀬戸際なんだよ。
結果は全て、生まれ落ちる御子に現れる。そこに横槍が入らないように、ギリギリまで秘することが陛下のご意志だ」
俺の注意と発言に、場の空気がまた凍り付く。
ハインを除く大半の者らがごくりと唾を飲み込み、身を震わせた。
新たに文官となったセルマなど震え上がってしまっているが、責任を担う立場となった以上は仕方がない。
クロードも例外ではなかったが、暫く放心した後、瞳に理解の色が閃いた。今まで何故伏せられていたのか、即座に思い至った様子。
「白の病を払う……」
呆然と呟いたヘイスベルトに、そうだと頷く。
「あの病は王家の血に纏わりついているが、本来は決して強い呪いではないはずだったんだ。
それが今まで……公爵家との婚姻を繰り返すことで、図らずも強められていた……。
運悪く呪いの上塗りを繰り返す状況ができていたんだ」
運悪く……と、表現したが……実際のところがどうであったか……。
しかし今はまだ全てが憶測だ。もしかしたらサヤと同じく、異界の民が関わっているかもしれないなどと、口にできる段階ではない。
「だから、ヴァーリン公爵家のリカルド様は、陛下の夫となることを辞退され、ルオード様が選ばれた。
ただ……まだ立証されていないことだから、神殿等の、王家の白を長く祝福と受け取っていた者たちの中には、根強い反発もある」
王家は白を病だと発表した。
病に対する対処法と症状を詳らかにしたことと、王家、公爵家の系譜を調べ、血の影響による著しい出産率の低下と王家出自の方々の早逝を盾に押し切ったけれど、証拠としたものはそれだけだ。
実際に御子をご出産し、確かな結果を示さなければ、まだ揺り返しの起こる可能性も捨てきれない。
「陛下と陛下の御子の安全のため、陛下は王都を離れることを選ばれた。離宮建設もその流れだったんだよ。
セイバーンは神殿との縁も薄いし、交易路ができて交通の利便性も上がった。
勿論、皆の働きを評価されてのことでもある」
それ以外にも諸々、ここが選ばれた理由はあるのだけど……まだスヴェトランの動きに関しては伏せた。
公になっていないことだし調査中の段階だ。下手な憶測で不安を煽るのは宜しくないだろう。
「状況的にご出産は十二の月になると思われる。そうすると……今年の越冬はこのアヴァロンでお過ごしいただく可能性が高い。
御子の健やかな成長と陛下の御身を考え、無理な移動は控えていただきたいと俺も考えている。
それでね……皆には負担となるだろうが……協力してもらいたい。
……まぁ、やることはいつも通りだよ。ブンカケンの三階をお貸しする状況をこのまま続ける。
幸いにもここにはナジェスタ・ユストもいるから、極秘の出産に関しては万全の体勢で挑めるしね。
越冬中の食糧事情も、現状は王都よりアヴァロンの方が豊かだろう」
春に陛下のお越しを聞いてから、必要になるであろう干し野菜も追加生産してきているし、分量は問題無いだろう。
養殖の川魚も大きく育ったし、家畜を越冬させる用意もできている。新たな保存食に関しても研究は順調で、今年は更に備蓄可能な品が増えた。
この冬よりロゼやスザナもアヴァロンにいるし、干し野菜の保存状態だって常に確認できる。アヴァロンは、きっとフェルドナレンのどこよりも食糧事情が良いだろう。
「無事春を迎えることができたならば、御子も長距離の移動にある程度耐えられるまでにご成長だと思う。
素晴らしいことだよ。
セイバーンが、この国の礎を支える栄誉を賜った。王家からそれだけの信頼を得たんだよ。
これは皆の働きを認めていただけたからに他ならない。だから、胸を張ろう!」
敢えて鼓舞した。
男爵家にはあり得ない状況に、恐れ慄いているだろう皆の心情は分かっていたけれど、これはもう決定事項。乗り越えるしかないのだから、怯えていたって仕方がない。
「そもそも、知らなかったとはいえ、もう今日まで過ごしていた。
今までが、これからもう暫く続くだけのことなんだから、なにも恐れることはないよ」
敢えて茶化した俺の言葉に、一同はお互い顔を見合わせた。
確かに……。今日まで知らず知らず過ごしていたのだから……と、ほんの少しだけ納得できたよう。
皆の様子に内心でホッと息を吐いていたら、泣きそうになっていたセルマの頭を、同僚となったクララが撫でて言葉を足した。
「黙っててごめんなさいね……。でも大丈夫よ。今日までと一緒だもの」
「……左様でございますね。申し訳ございません、浮き足立ってしまいましたが、心得ました。
本日より、より一層の責任と誇りを持って職務にあたります!」
クロードが声を張り上げてそう宣言すると、ピシリと空気が引き締まる。
こういう部分をしっかり纏めてくれるのは本当に有難い。
「どうか宜しく頼む。
とは言っても、心配はしていないよ。
皆が頼りになることは、俺が一番よく知ってる」
そう言うと、後方より兵士長が手を挙げた。
彼もついさっきまでワタワタしていたけれど、今は凛々しい。職務に責任を持つ者の顔だ。
「これからの警備の件で、確認したきことがございます」
「聞こう」
それを切っ掛けとして、皆が業務と注意点について意見を交わし、対策を話し合った。
特に来客の対応について。
陛下のアヴァロンご来訪は貴族の知るところとなっているので、謁見を求める貴族が今までも何度か来訪していた。
挨拶ついでに縁を望むといった軽い目的の者はお通しせぬこと。そういった方のお断りを迅速に行えるように、領主印付きの書面作成等を話し合い、本日の会議は終了となった。
そんな風に方針を定めた直後のことだったのだ。
伯爵家の方が、火急の要件につき謁見を求めると言ってきたのは。
研修官も呼んだのは、ロレンが既に陛下のご懐妊を承知しているからと、王宮に属する者として、有事の際は陛下の手足となる立場であるため。
例外としてギルも加えたが、ブンカケン所属者からの代表として扱った。
なにせギルは、陛下とのゴタゴタ……白の病の一件に深く関わっていたから、省けなかったのだよな……。それに、彼の場合何をしても陛下が視界に入ればバレるし。
何事かとざわめく彼らを前に、隣のサヤへ目配せした。外に音は無いかという声無き問いに、サヤはこくりと頷く。
よし……では始めよう。
「今日まで長く伏せていたことを本日告げる許しを得た。
陛下はご懐妊されている。現在御子を宿して九ヶ月に差し掛かった段階だ」
会議室に集まった面々にそう告げると、皆の表情が固まった。
ユストとナジェスタは知っていたものの、秘密を守っていくのは結構骨が折れたらしく、大きな息を吐く。
「長かったあああぁぁぁぁ」
ユストの場合、あまり内緒事が得意じゃないナジェスタの失言にも注意を払っていたから、余計にだろう……。
「ごっ、ご懐妊⁉︎」
「九ヶ月っ……もうっ、ご出産直前ではございませんか!」
慌てふためく一同。特に貴族外の面々の混乱ぶりは凄まじい。
少し前に、陛下と娘の謁見に付き合ったクロードも気付いていなかったから、唖然と口を開いて固まっている。
まぁ、ふんわりと広がる袴をお召しになり、座した状態で、薄絹の帷を介しての謁見。細心の注意を払っていたのだから、気付く者は稀だろう。
とはいえ、まだご懐妊しか告げていないここで慌てられても困る。とりあえず落ち着け。
「あまり声を荒立てるな。
一応皆には伝えるけど、実際無事ご出産に漕ぎつけるまでは、極力秘しておいてほしいからね。今この場にいない者にはこれからも伏せるように。
陛下のご懐妊は公爵四家の中でも、まだアギーしかご存知ないことだ。
知っての通り、王家の白の病……あれを払うことができているかどうか……その瀬戸際なんだよ。
結果は全て、生まれ落ちる御子に現れる。そこに横槍が入らないように、ギリギリまで秘することが陛下のご意志だ」
俺の注意と発言に、場の空気がまた凍り付く。
ハインを除く大半の者らがごくりと唾を飲み込み、身を震わせた。
新たに文官となったセルマなど震え上がってしまっているが、責任を担う立場となった以上は仕方がない。
クロードも例外ではなかったが、暫く放心した後、瞳に理解の色が閃いた。今まで何故伏せられていたのか、即座に思い至った様子。
「白の病を払う……」
呆然と呟いたヘイスベルトに、そうだと頷く。
「あの病は王家の血に纏わりついているが、本来は決して強い呪いではないはずだったんだ。
それが今まで……公爵家との婚姻を繰り返すことで、図らずも強められていた……。
運悪く呪いの上塗りを繰り返す状況ができていたんだ」
運悪く……と、表現したが……実際のところがどうであったか……。
しかし今はまだ全てが憶測だ。もしかしたらサヤと同じく、異界の民が関わっているかもしれないなどと、口にできる段階ではない。
「だから、ヴァーリン公爵家のリカルド様は、陛下の夫となることを辞退され、ルオード様が選ばれた。
ただ……まだ立証されていないことだから、神殿等の、王家の白を長く祝福と受け取っていた者たちの中には、根強い反発もある」
王家は白を病だと発表した。
病に対する対処法と症状を詳らかにしたことと、王家、公爵家の系譜を調べ、血の影響による著しい出産率の低下と王家出自の方々の早逝を盾に押し切ったけれど、証拠としたものはそれだけだ。
実際に御子をご出産し、確かな結果を示さなければ、まだ揺り返しの起こる可能性も捨てきれない。
「陛下と陛下の御子の安全のため、陛下は王都を離れることを選ばれた。離宮建設もその流れだったんだよ。
セイバーンは神殿との縁も薄いし、交易路ができて交通の利便性も上がった。
勿論、皆の働きを評価されてのことでもある」
それ以外にも諸々、ここが選ばれた理由はあるのだけど……まだスヴェトランの動きに関しては伏せた。
公になっていないことだし調査中の段階だ。下手な憶測で不安を煽るのは宜しくないだろう。
「状況的にご出産は十二の月になると思われる。そうすると……今年の越冬はこのアヴァロンでお過ごしいただく可能性が高い。
御子の健やかな成長と陛下の御身を考え、無理な移動は控えていただきたいと俺も考えている。
それでね……皆には負担となるだろうが……協力してもらいたい。
……まぁ、やることはいつも通りだよ。ブンカケンの三階をお貸しする状況をこのまま続ける。
幸いにもここにはナジェスタ・ユストもいるから、極秘の出産に関しては万全の体勢で挑めるしね。
越冬中の食糧事情も、現状は王都よりアヴァロンの方が豊かだろう」
春に陛下のお越しを聞いてから、必要になるであろう干し野菜も追加生産してきているし、分量は問題無いだろう。
養殖の川魚も大きく育ったし、家畜を越冬させる用意もできている。新たな保存食に関しても研究は順調で、今年は更に備蓄可能な品が増えた。
この冬よりロゼやスザナもアヴァロンにいるし、干し野菜の保存状態だって常に確認できる。アヴァロンは、きっとフェルドナレンのどこよりも食糧事情が良いだろう。
「無事春を迎えることができたならば、御子も長距離の移動にある程度耐えられるまでにご成長だと思う。
素晴らしいことだよ。
セイバーンが、この国の礎を支える栄誉を賜った。王家からそれだけの信頼を得たんだよ。
これは皆の働きを認めていただけたからに他ならない。だから、胸を張ろう!」
敢えて鼓舞した。
男爵家にはあり得ない状況に、恐れ慄いているだろう皆の心情は分かっていたけれど、これはもう決定事項。乗り越えるしかないのだから、怯えていたって仕方がない。
「そもそも、知らなかったとはいえ、もう今日まで過ごしていた。
今までが、これからもう暫く続くだけのことなんだから、なにも恐れることはないよ」
敢えて茶化した俺の言葉に、一同はお互い顔を見合わせた。
確かに……。今日まで知らず知らず過ごしていたのだから……と、ほんの少しだけ納得できたよう。
皆の様子に内心でホッと息を吐いていたら、泣きそうになっていたセルマの頭を、同僚となったクララが撫でて言葉を足した。
「黙っててごめんなさいね……。でも大丈夫よ。今日までと一緒だもの」
「……左様でございますね。申し訳ございません、浮き足立ってしまいましたが、心得ました。
本日より、より一層の責任と誇りを持って職務にあたります!」
クロードが声を張り上げてそう宣言すると、ピシリと空気が引き締まる。
こういう部分をしっかり纏めてくれるのは本当に有難い。
「どうか宜しく頼む。
とは言っても、心配はしていないよ。
皆が頼りになることは、俺が一番よく知ってる」
そう言うと、後方より兵士長が手を挙げた。
彼もついさっきまでワタワタしていたけれど、今は凛々しい。職務に責任を持つ者の顔だ。
「これからの警備の件で、確認したきことがございます」
「聞こう」
それを切っ掛けとして、皆が業務と注意点について意見を交わし、対策を話し合った。
特に来客の対応について。
陛下のアヴァロンご来訪は貴族の知るところとなっているので、謁見を求める貴族が今までも何度か来訪していた。
挨拶ついでに縁を望むといった軽い目的の者はお通しせぬこと。そういった方のお断りを迅速に行えるように、領主印付きの書面作成等を話し合い、本日の会議は終了となった。
そんな風に方針を定めた直後のことだったのだ。
伯爵家の方が、火急の要件につき謁見を求めると言ってきたのは。
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