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魔手 6
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両腕を重ねるようにして、手首を縛られている俺。
その腕と腕の間に、何かが今、ある。
トゥーレは腰帯に、俺の小刀の鞘を挟んでいる……。上下を逆に。それではすぐに、小刀を引き抜くことはできない……。
違う。
小刀を持っているのだと、そう見せている…………。
トゥーレ、お前……。
縛られた内側の手。左手をなんとか動かして確認すると、そこには馴染んだ手触りの柄があった。
手首の間。でも握るには難しい場所……。
けれどこの位置は多分、縄に刃を触れさせるように、差し込んである。
手首を動かすな……。
敢えてそう注意したのは、それを意識しろってこと。
腕を縛られている俺は、小刀を握れたところで、腕の縄を器用に切るなどできないだろう。だから……。
深く息を吐いた。
それで気持ちを落ち着ける。
もう一度、状況整理だ。冷静に、周りをきちんと見て、真実と、できることを探し出せ。
トゥーレが俺をここに移動させたのは、全体を見渡すためだと思っていたが、俺の手の動きを周りに見せないためでもあったのだろう……。
バレてしまえば取り返しがつかない。彼自身だって、命の危険を伴う。それくらいの賭けに、トゥーレは出ている。
俺たちを……必死で助けようとしてくれている。
先程の、頭と言われた男の言葉……俺たちが仲間を拐かしたと言っていたのは、この輩がトゥーレたちのいた窃盗団の元締めだということ。
窃盗団……なんて生易しいものじゃないな。強盗や、山賊……かなり荒っぽい仕事をしてきてる連中なのだと思う。
ブリッジスは、使用人を殺されたと言っていた……。殺しくらい、躊躇なく行ってしまう連中だということだ。
ヤロヴィ支店も、この連中も同じくアギーの者……。あちらでなんらかの接点を持ったのだろう。
元々窃盗団にいた子供たちは、あの頭の恐ろしさが身に染みている。
だから逆らえない……。あの口笛、あれはブリッジスらへの合図ではなく、子供らへの合図だったんだな。
……子供たちを拐かした……か。これによく似た言葉を、昨日も聞いた。
アギーで子供を攫ったと、俺にそう言ったレイモンド。あれは仲間の子供らの居場所を特定するためだった可能性がある。
しかし使用人を殺されたと、ブリッジスは言っていた。
この状況は、ブリッジスには知らされていなかったということか?
勝手に焦って、思考が散乱しそうになる。
けれど、慌てたところで、今やれるのは考えることだけだと、自分に言い聞かせた。
潜れ、深く、深くだ。ちゃんと考えろ。視線の動き、動作、言葉……全部から答えを探せ。
動くのは、今じゃない。大人の目が全て、外れた時だ。
面白いくらい、采配通りという言葉……。
それだけ聞いた時は、なんとも思わなかった。だけど……。
この連中に、入れ知恵をした奴がいるのは確かだ。今の状況なら、それがレイモンドだと考えるのが妥当……。
でも、違和感がある。レイモンドじゃない。そう感じる理由を考えろ。
あの頭という男、サヤを黒髪の女と言った……。驚きよりも、確認みたいな言葉だった。
レイモンドはサヤになんの興味も示さなかった。
だから、わざわざ黒髪の女について指示などしない。
そういや、あんたの婚約者っつってたかな、あの野郎……。
殺すなって言われてんだ……でも、好きにしていいとも言われてる……。あんたが手に入るなら、未通かどうかは問わねぇってヨォ。
あれが、レイモンドじゃない指示者の言葉なのかもしれない。
マルが言っていたように、レイモンドを隠れ蓑にしたジェスル。それからの指示なのでは?
頭はそういう素振りをみせまいとしていたが、あの男は興奮のあまり、隠し事を口走った可能性がある……。
そこまで考えた時、ザワリと多くの人が動く気配……。
伏せていた視線を上げると、先程の男たちが、連れ立って帰ってくる光景があった。その、中心……。
最悪の事態になったと思った。
カタリーナとジーナだ……。とうとう見つかってしまった。
カタリーナは顔面蒼白だった。強張った表情で固まったジーナを抱き抱えて、無心で足を動かしているといった様子で現れた。
そうして、俺やサヤを見て、更に衝撃を受けたのだろう。一瞬足が止まる。
「歩けっつってんだろ!」
どやされ、慌てて足を進めた。その後ろから、窃盗団だった男児らの残り三人がついてくる。
一様に緊張した表情だった……俺やサヤを見て、泣きそうになった者もいた。
ざっと見たところ、誰の衣類も血で汚れていない……中が騒がしくなったりもしていない……。
くそ、だけどこれだけじゃ、皆が無事かどうかの確認できない。
焦るけれど、ピリピリと緊張した場の空気に、今動くのは得策ではないと感じた。
「お前ら、そっちの女を立たせろ。トゥーレ! お前はそいつを逃すなよ」
にわかにあわただしくなった。
俺とサヤは立たされ、戻った男たちが武器を拾い、俺たちに歩けと促す。
逃げる気だ。まだ村の陽動組は、誰も来ていないと思うのに……。
同じ疑問はこのゴロツキ連中も感じた様子。
中の一人が、頭に声を掛けた。
「合流は待たねぇんですかい?」
「誰も来やがらねぇうえに静かすぎる。あっちは撒き餌にする」
たったそれだけの言葉であっさりと切り捨てた。
容赦なく、あれだけの人数を捨て駒にするのか……。
そう思ったが、彼らにはさして珍しいことでもない様子。否を唱える者は一人として現れない。
とはいえ、文句が無いわけではないらしく……。
「ああぁくそ、金目のもんがあああぁぁぁ」
「馬鹿野郎、こいつらでそれなりに稼げるんだ。欲かいてねぇで撤収するぞ」
こいつら……。
やはり、カタリーナ母娘だけでなく、サヤも捕獲対象だった雰囲気があるな……。
サヤは子供達三人に。俺にはトゥーレとハヴェルが付けられた。けれどそこを更にゴロツキが囲む。
子供らも警戒対象といった雰囲気の動きが気になった……。
ハヴェルに剣を突きつけ、人質と見せかけていたことといい、ハヴェルの怖がりようといい……この連中は子供たちを仲間と言いつつ、そう扱っていない……。本当に手駒としてしか、見ていない気がする……。
そのまま、橋に向かわされる俺たち。それを地面に転がされたままのシザーが必死でもがき、追おうとした。
「レイ様……っ!」
珍しく声を発したシザーだったけれど……。
「おっとぉ……そうだ、忘れてた」
そのシザーの横で足を止めた頭がおもむろに……。
「お前ら、これから声出しやがったらこうなるからな」
そう言って、腰の後ろから引き抜いた短剣を、そのまま無造作に、シザーの足の付け根へと突き立てた。
「っ!」
あまりの出来事に言葉を失った俺たち。
シザーもそれは同じであったと思う……だけどその短剣を引き抜かれる時も、彼は声を発しなかった。
「おー、堪えやがったか。声出さなかったからもっかい刺すのは勘弁してやる。
お前はせいぜい、一刻も早く助けが来るのを願ってな」
引き抜かれた刃を追うように、湧きあがり、溢れ出し、雨に広がっていく大量の血。
シザー!
俺が、無意識に開いた口で音を発する前に、中に何かが突っ込まれた。
そうしてまた別の小さな手が、俺の口を更に塞ぐ。
「ごめんっ、ごめんっ、でも声出さないで、おねがいします」
「本気なんだ。だから駄目」
囁くような震える小声が、耳元で必死の懇願。
子供たち……トゥーレが、俺の口に拳を捻じ込み、ハヴェルの手が、それを更に塞いでいた。
言葉を封じられた分、涙が溢れたけれど、それは雨に紛れてしまい、きっと誰にも分からなかったろう。
ここで取り乱してはいけない。下手に騒いだら、俺だけじゃない、サヤやカタリーナにだって、何をされるか分からない。
それに、一刻も早く、ここを離れなければ……そうしなければ、シザーは助けを呼ぶこともできないのだ。
急所を刺されたように見えた……。なんの躊躇もなく……。
シザー……お願いだ、死なないでくれ……っ。
俺たちが橋を渡らされ、立ち去る間、シザーはピクリともせず、雨に打たれるまま、広がる血の中に身を横たえていた。
その腕と腕の間に、何かが今、ある。
トゥーレは腰帯に、俺の小刀の鞘を挟んでいる……。上下を逆に。それではすぐに、小刀を引き抜くことはできない……。
違う。
小刀を持っているのだと、そう見せている…………。
トゥーレ、お前……。
縛られた内側の手。左手をなんとか動かして確認すると、そこには馴染んだ手触りの柄があった。
手首の間。でも握るには難しい場所……。
けれどこの位置は多分、縄に刃を触れさせるように、差し込んである。
手首を動かすな……。
敢えてそう注意したのは、それを意識しろってこと。
腕を縛られている俺は、小刀を握れたところで、腕の縄を器用に切るなどできないだろう。だから……。
深く息を吐いた。
それで気持ちを落ち着ける。
もう一度、状況整理だ。冷静に、周りをきちんと見て、真実と、できることを探し出せ。
トゥーレが俺をここに移動させたのは、全体を見渡すためだと思っていたが、俺の手の動きを周りに見せないためでもあったのだろう……。
バレてしまえば取り返しがつかない。彼自身だって、命の危険を伴う。それくらいの賭けに、トゥーレは出ている。
俺たちを……必死で助けようとしてくれている。
先程の、頭と言われた男の言葉……俺たちが仲間を拐かしたと言っていたのは、この輩がトゥーレたちのいた窃盗団の元締めだということ。
窃盗団……なんて生易しいものじゃないな。強盗や、山賊……かなり荒っぽい仕事をしてきてる連中なのだと思う。
ブリッジスは、使用人を殺されたと言っていた……。殺しくらい、躊躇なく行ってしまう連中だということだ。
ヤロヴィ支店も、この連中も同じくアギーの者……。あちらでなんらかの接点を持ったのだろう。
元々窃盗団にいた子供たちは、あの頭の恐ろしさが身に染みている。
だから逆らえない……。あの口笛、あれはブリッジスらへの合図ではなく、子供らへの合図だったんだな。
……子供たちを拐かした……か。これによく似た言葉を、昨日も聞いた。
アギーで子供を攫ったと、俺にそう言ったレイモンド。あれは仲間の子供らの居場所を特定するためだった可能性がある。
しかし使用人を殺されたと、ブリッジスは言っていた。
この状況は、ブリッジスには知らされていなかったということか?
勝手に焦って、思考が散乱しそうになる。
けれど、慌てたところで、今やれるのは考えることだけだと、自分に言い聞かせた。
潜れ、深く、深くだ。ちゃんと考えろ。視線の動き、動作、言葉……全部から答えを探せ。
動くのは、今じゃない。大人の目が全て、外れた時だ。
面白いくらい、采配通りという言葉……。
それだけ聞いた時は、なんとも思わなかった。だけど……。
この連中に、入れ知恵をした奴がいるのは確かだ。今の状況なら、それがレイモンドだと考えるのが妥当……。
でも、違和感がある。レイモンドじゃない。そう感じる理由を考えろ。
あの頭という男、サヤを黒髪の女と言った……。驚きよりも、確認みたいな言葉だった。
レイモンドはサヤになんの興味も示さなかった。
だから、わざわざ黒髪の女について指示などしない。
そういや、あんたの婚約者っつってたかな、あの野郎……。
殺すなって言われてんだ……でも、好きにしていいとも言われてる……。あんたが手に入るなら、未通かどうかは問わねぇってヨォ。
あれが、レイモンドじゃない指示者の言葉なのかもしれない。
マルが言っていたように、レイモンドを隠れ蓑にしたジェスル。それからの指示なのでは?
頭はそういう素振りをみせまいとしていたが、あの男は興奮のあまり、隠し事を口走った可能性がある……。
そこまで考えた時、ザワリと多くの人が動く気配……。
伏せていた視線を上げると、先程の男たちが、連れ立って帰ってくる光景があった。その、中心……。
最悪の事態になったと思った。
カタリーナとジーナだ……。とうとう見つかってしまった。
カタリーナは顔面蒼白だった。強張った表情で固まったジーナを抱き抱えて、無心で足を動かしているといった様子で現れた。
そうして、俺やサヤを見て、更に衝撃を受けたのだろう。一瞬足が止まる。
「歩けっつってんだろ!」
どやされ、慌てて足を進めた。その後ろから、窃盗団だった男児らの残り三人がついてくる。
一様に緊張した表情だった……俺やサヤを見て、泣きそうになった者もいた。
ざっと見たところ、誰の衣類も血で汚れていない……中が騒がしくなったりもしていない……。
くそ、だけどこれだけじゃ、皆が無事かどうかの確認できない。
焦るけれど、ピリピリと緊張した場の空気に、今動くのは得策ではないと感じた。
「お前ら、そっちの女を立たせろ。トゥーレ! お前はそいつを逃すなよ」
にわかにあわただしくなった。
俺とサヤは立たされ、戻った男たちが武器を拾い、俺たちに歩けと促す。
逃げる気だ。まだ村の陽動組は、誰も来ていないと思うのに……。
同じ疑問はこのゴロツキ連中も感じた様子。
中の一人が、頭に声を掛けた。
「合流は待たねぇんですかい?」
「誰も来やがらねぇうえに静かすぎる。あっちは撒き餌にする」
たったそれだけの言葉であっさりと切り捨てた。
容赦なく、あれだけの人数を捨て駒にするのか……。
そう思ったが、彼らにはさして珍しいことでもない様子。否を唱える者は一人として現れない。
とはいえ、文句が無いわけではないらしく……。
「ああぁくそ、金目のもんがあああぁぁぁ」
「馬鹿野郎、こいつらでそれなりに稼げるんだ。欲かいてねぇで撤収するぞ」
こいつら……。
やはり、カタリーナ母娘だけでなく、サヤも捕獲対象だった雰囲気があるな……。
サヤは子供達三人に。俺にはトゥーレとハヴェルが付けられた。けれどそこを更にゴロツキが囲む。
子供らも警戒対象といった雰囲気の動きが気になった……。
ハヴェルに剣を突きつけ、人質と見せかけていたことといい、ハヴェルの怖がりようといい……この連中は子供たちを仲間と言いつつ、そう扱っていない……。本当に手駒としてしか、見ていない気がする……。
そのまま、橋に向かわされる俺たち。それを地面に転がされたままのシザーが必死でもがき、追おうとした。
「レイ様……っ!」
珍しく声を発したシザーだったけれど……。
「おっとぉ……そうだ、忘れてた」
そのシザーの横で足を止めた頭がおもむろに……。
「お前ら、これから声出しやがったらこうなるからな」
そう言って、腰の後ろから引き抜いた短剣を、そのまま無造作に、シザーの足の付け根へと突き立てた。
「っ!」
あまりの出来事に言葉を失った俺たち。
シザーもそれは同じであったと思う……だけどその短剣を引き抜かれる時も、彼は声を発しなかった。
「おー、堪えやがったか。声出さなかったからもっかい刺すのは勘弁してやる。
お前はせいぜい、一刻も早く助けが来るのを願ってな」
引き抜かれた刃を追うように、湧きあがり、溢れ出し、雨に広がっていく大量の血。
シザー!
俺が、無意識に開いた口で音を発する前に、中に何かが突っ込まれた。
そうしてまた別の小さな手が、俺の口を更に塞ぐ。
「ごめんっ、ごめんっ、でも声出さないで、おねがいします」
「本気なんだ。だから駄目」
囁くような震える小声が、耳元で必死の懇願。
子供たち……トゥーレが、俺の口に拳を捻じ込み、ハヴェルの手が、それを更に塞いでいた。
言葉を封じられた分、涙が溢れたけれど、それは雨に紛れてしまい、きっと誰にも分からなかったろう。
ここで取り乱してはいけない。下手に騒いだら、俺だけじゃない、サヤやカタリーナにだって、何をされるか分からない。
それに、一刻も早く、ここを離れなければ……そうしなければ、シザーは助けを呼ぶこともできないのだ。
急所を刺されたように見えた……。なんの躊躇もなく……。
シザー……お願いだ、死なないでくれ……っ。
俺たちが橋を渡らされ、立ち去る間、シザーはピクリともせず、雨に打たれるまま、広がる血の中に身を横たえていた。
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