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旧友 3
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「王都で立ち寄っていただいた際、サヤ様の国の装飾品というものを、弟が見せていただきましたでしょう?
興味があるならセイバーンの拠点村で仕入れられると……。本日はそのお言葉に甘えさせていただきました。
我がグライン宝石商は先だって見ていただいた通り、年間契約した賃貸料の工面にも困っている有様で……」
眉を下げ、少々鎮痛な様子でそう切り出したヨルグ。
「王都の需要は重々承知の上で、そこに一石を投じる品を用意したつもりでしたけれど……力及ばずで……。
実家には元より反対されておりました。けれど、成せる……成すのだと誓い、弟と共に踏み切りました。
だものですから、家名を継ぐことも叶わず……。
色々が不利に働いてしまって、この体たらく。このままでは、親の言う通りだったことを、証明しただけ……やはり貴族社会の価値観は変えられぬのかと、そう考えておりました……。
けれどそんな折に、女王誕生と、女近衛の新設。
更にバート商会が秘匿権を放棄した上で、女性就職者に対する新たな衣料の提案を始めたのですわ。
それに正直、度肝を抜かれたのです」
「まだ結果は分かんねぇけどな」
苦笑と共にギル。けれど、その表情に憂いは無い。
彼はこの試みを成功させる気でいるし、勿論出来ると見込んで踏み出している。
そのために色々な準備を進め、現在に至っているのだ。
ギルのその様子に、ヨルグはキュッと唇を引き締めた。
「それで私、恥を忍んで、かつてのよしみに縋りました。そこまで大きく踏み切った、それを成し得ることのできた理由を、お聞きしたくて。
そこでサヤ様……異国の風を持ち込んだ、新たな意匠師を得たということをお聞きしたのですわ……。更に貴女様は、衣料だけでなく宝飾品にも明るい方であると……。
実際に、衣料品とは言い難い品も、色々と提案されていらっしゃる……」
「ギルぅ?」
バート商会専属の意匠師として契約していたサヤは、表向きバート商会にしかその意匠案を卸さないことになっている。
だから、サヤからの衣料に関する意匠案以外のものに関しては、ブンカケンが所属職人から提案された品を取り纏めて、秘匿権を申請している……ということになっているのだ。
当然、サヤからの発案であることは伏せてある。
それに、バート商会との契約はまだ残っていて、サヤがバート商会にしか意匠案を卸さないという約束は、そのままであるはず。
そのため、イェルクにだって、サヤの意匠だとは伝えていない。耳飾のみ、サヤの国のものだと言ったが、ブンカケンで取り扱いがあるよと匂わせただけだ。
なのにギルときたら、それをどうやら告げたらしい……。お前、秘匿権の云々に関して、サヤを叱責したことすらあるくせに、バラしたのか?
それに対してのギルの返答はというと……。
「取引だ」
と、ひと言。
「ブンカケンに関わる大店は、装飾品の分野にも必要だと思う。
サヤの強みを活かすには、伝統や歴史っていう、重さが必要だ。
大抵のものは、どれだけ良い品だろうと、広まりきる前に一過性で終わるんだ。だから、重石としての知名度が必要なんだよ。
今んところはルーシーでなんとか対応してたけどな、この先はやっぱ専門家が必要だと思う」
「叔父様、それは私では力不足だとおっしゃってるんですか?」
ぷぅっと頬を膨らましたルーシーが、さも不服という感じで口を挟む。
そりゃそうだよな。ルーシーには任せておれないって言われたも同然なのだもの。
けれどそれに対してもギルは「叔父って言うな」と、いつもの返事を返した。
「馬鹿野郎が。これはお前のためでもあるんだぞ」
「もっとちゃんと言ってくれないと分かりません。馬鹿野郎ですから!」
即座に食いつくルーシー。
それに対し返答を返したのはヨルグで、ルーシーの様子に可愛い姪御さんだわねとくすくす笑う。
「貴女が、装飾師という新たな職を立ち上げようとしている姪御さんなのね」
ヨルグは今まで少し思い詰めいた様子であったけれど、ルーシーの噛み付きで気持ちがほぐれたようだ。
笑ってしまってごめんなさいねと謝って、言葉を繋げた。
「ギルが言っているのは……私たちとの取引が、貴女の将来の糧になると、考えたということよ。
装飾に関わること……衣料品だけでなく、宝飾品、化粧品、ありとあらゆるものの取りまとめ役……というのが、装飾師の立ち位置なのでしょう?
サヤ様に、宝飾品の意匠について、色々ご相談するついでに、貴女の補佐もとお願いされているの。
貴女は広く浅くを知っていれば充分だと、ギルは言っていたけれど、宝飾品の深くを必要する時だって、あるでしょう?
そんな場合に、私が貴女を補佐する。そういう意味なのよ。
ギルも、もうちょっと分かりやすく言ってあげなきゃ駄目じゃない」
「……それはつまり、バート商会専属のサヤを、グライン宝石店にも関わらせることが、バート商会としての意向……ってことで良いの?」
そう聞き返すと。頷くギル。
その話を纏めていたため、王都からの帰還が遅くなったのだそう。
つまり、本店店主のアルバートさんも納得した上で、サヤのことを許しているということだ。
「サヤに無断で決めたのは悪かったと思ってるさ。
けど、王都からここまで連絡をやっていたら、こいつの店が潰れるほうが早いなんてことにもなりかねん」
「本当にお恥ずかしい話なのですけれど……こちらの都合的に、そこまでの猶予がございませんでしたの。
レイシール様ならば、きっと是と言うと、ギルは…………。
ですが、勝手を致しましたことは、本当に申し訳なく思っておりますわ。
手打ちも覚悟しております。ですがどうか、一度機会を与えて頂きたく……」
「いや、バート商会の運営陣で決めたことならば、俺は口を挟む気は無いよ。だからヨルグも、そんな風に畏まらなくても良い。
で、サヤの気持ちとしては? 確かにサヤには色々と提案してもらっているけれど、宝飾品の方でも意匠を考えられるものなの?」
確かにサヤは、ベルトとか、髪留めとか飾り結びとか……宝飾品の提案や、それに近いものを出してきている。
それどころか、洗濯板とか車椅子とか…………ありとあらゆるものを提案してくれてはいるけれど、もう結構な量の装飾品を提案した後だ。更に描けるのかというと……どうなんだろうと思った。
「…………それは、新しい宝飾品を開発したい……という、お話なのでしょうか?
今ある既存の宝飾品の、意匠案を欲している……というお話なのでしょうか……?
お力になれればとは思うのですが、私、装飾品は……衣料品ほど詳しくはないのです……」
「構いません。私どもの目的といたしましては、まずはその耳飾。そちらの製造を、我々にも任せていただけないかということ。
それから、サヤ様は商才にも長けた方とお聴きましました。ほんのささやかなものでも良いのです。助言でも構いません。何卒ご意見を賜りたいのですわ……」
「でも……耳飾はともかくとして、髪留めは安価品……一般の方々が身に付けられるものを前提として提案しましたから、高級品を扱うお店には不釣り合いかと……」
困ったようにサヤ。それに対しヨルグは、まずはとにかく、こちらを見て頂けますかと、手荷物から木箱と書類を取り出した。
「私たち、元々は屑石の再利用を目的として、店を立ち上げましたの。
こちらがその屑石。屑とは言っても、決して見劣りするものではございません。
これらは、切断、研磨する中で傷の入ってしまったものや、小さすぎてきちんとした形に研磨できなかったものなのです。
確かに形は歪であるものが多いのですけれど……それだって研磨次第で美しく輝きます。私たちは、それを活かすことのできる新たな発想が欲しいのです」
そう言って小机に広げられたものに、サヤとルーシーは感嘆の息を吐いた。
「わぁ……」
「確かに綺麗!」
宝石は宝石。確かに綺麗なものだなと感心する。ザラザラと大量に積み上げられれば尚のこと。しかし、細長いもの、四角いもの……形は聞く通り不揃いだ。中にはどこに傷があるのやら、わからないものも多くあるが……。
「宝石は光の反射で美しく燦めくように削ります。少し歪んでしまうだけで、その反射が損なわれてしまうのです。
貴族社会……とりわけ王都では、粒が大きく、形や反射が整ったものが好まれます。例えばこのように……釣鐘型の宝石は好まれません」
「え、何故? 形は整ってますよね?」
「丸くないからですわ。楕円や角形までは許されますけれど、上下で形が違うものは美しくないと……」
「基本的に均衡を保ったものがが好まれるからな。これは衣料の場でも同じだ」
ギルがそう補足をしたけれど、女性二人の耳には入っているのやら……宝石を見ることに真剣だ。
そうしている間に、ふとサヤが、手を伸ばし……動きを止めた。
「あの……触っても?」
「えぇ、構いませんわ」
その言葉を待って、サヤは指で、いくつかの宝石を選り分けた。それは先程、ヨルグが言っていた釣鐘型。
それを、尖った方が内側を向くように五つ、集めた。大きさも不揃いであるものの……。
「こうすると、お花が咲いているみたいですよね。こうやって寄せ集めて意匠を作っても……駄目なんですか?」
「我々も、そう考えました。結果として大きな意匠……しかも一色ではなく、多色を上手く利用できれば、見栄えだって劣らないと。
けれど、やはり宝石の粒が小さいということが、問題なのです。
貴族のご令嬢方にとって、装飾品は戦場に持ち込む武器。小刀では、小剣に敵わないのですわ……」
そう言い差し出された書類は、意匠案であるのだろう。小粒の宝石を集めて作った絵物語の一幕のような、なんとも風情のあるものがいくつも描かれていた。
確かに、宝石の粒としては小さいかもしれないが、とても趣があって良いと思う……のに……。
「これなんて私が欲しいです!」
「私もこれやこれ……とても……とても素敵だと思います……」
「…………でもどれも、大きな飾りなんですね」
「座金を大きくして、使う宝石の数を増やすことで見栄えを出しているということなのでしょうか?」
乙女二人でそんな風に言葉を交わし、そうこうしているうち、ふとルーシーが、首を傾げる。
「せっかく小粒なのに……小粒を活かす方法が、大物に挑む……だから、いけないのでは?」
興味があるならセイバーンの拠点村で仕入れられると……。本日はそのお言葉に甘えさせていただきました。
我がグライン宝石商は先だって見ていただいた通り、年間契約した賃貸料の工面にも困っている有様で……」
眉を下げ、少々鎮痛な様子でそう切り出したヨルグ。
「王都の需要は重々承知の上で、そこに一石を投じる品を用意したつもりでしたけれど……力及ばずで……。
実家には元より反対されておりました。けれど、成せる……成すのだと誓い、弟と共に踏み切りました。
だものですから、家名を継ぐことも叶わず……。
色々が不利に働いてしまって、この体たらく。このままでは、親の言う通りだったことを、証明しただけ……やはり貴族社会の価値観は変えられぬのかと、そう考えておりました……。
けれどそんな折に、女王誕生と、女近衛の新設。
更にバート商会が秘匿権を放棄した上で、女性就職者に対する新たな衣料の提案を始めたのですわ。
それに正直、度肝を抜かれたのです」
「まだ結果は分かんねぇけどな」
苦笑と共にギル。けれど、その表情に憂いは無い。
彼はこの試みを成功させる気でいるし、勿論出来ると見込んで踏み出している。
そのために色々な準備を進め、現在に至っているのだ。
ギルのその様子に、ヨルグはキュッと唇を引き締めた。
「それで私、恥を忍んで、かつてのよしみに縋りました。そこまで大きく踏み切った、それを成し得ることのできた理由を、お聞きしたくて。
そこでサヤ様……異国の風を持ち込んだ、新たな意匠師を得たということをお聞きしたのですわ……。更に貴女様は、衣料だけでなく宝飾品にも明るい方であると……。
実際に、衣料品とは言い難い品も、色々と提案されていらっしゃる……」
「ギルぅ?」
バート商会専属の意匠師として契約していたサヤは、表向きバート商会にしかその意匠案を卸さないことになっている。
だから、サヤからの衣料に関する意匠案以外のものに関しては、ブンカケンが所属職人から提案された品を取り纏めて、秘匿権を申請している……ということになっているのだ。
当然、サヤからの発案であることは伏せてある。
それに、バート商会との契約はまだ残っていて、サヤがバート商会にしか意匠案を卸さないという約束は、そのままであるはず。
そのため、イェルクにだって、サヤの意匠だとは伝えていない。耳飾のみ、サヤの国のものだと言ったが、ブンカケンで取り扱いがあるよと匂わせただけだ。
なのにギルときたら、それをどうやら告げたらしい……。お前、秘匿権の云々に関して、サヤを叱責したことすらあるくせに、バラしたのか?
それに対してのギルの返答はというと……。
「取引だ」
と、ひと言。
「ブンカケンに関わる大店は、装飾品の分野にも必要だと思う。
サヤの強みを活かすには、伝統や歴史っていう、重さが必要だ。
大抵のものは、どれだけ良い品だろうと、広まりきる前に一過性で終わるんだ。だから、重石としての知名度が必要なんだよ。
今んところはルーシーでなんとか対応してたけどな、この先はやっぱ専門家が必要だと思う」
「叔父様、それは私では力不足だとおっしゃってるんですか?」
ぷぅっと頬を膨らましたルーシーが、さも不服という感じで口を挟む。
そりゃそうだよな。ルーシーには任せておれないって言われたも同然なのだもの。
けれどそれに対してもギルは「叔父って言うな」と、いつもの返事を返した。
「馬鹿野郎が。これはお前のためでもあるんだぞ」
「もっとちゃんと言ってくれないと分かりません。馬鹿野郎ですから!」
即座に食いつくルーシー。
それに対し返答を返したのはヨルグで、ルーシーの様子に可愛い姪御さんだわねとくすくす笑う。
「貴女が、装飾師という新たな職を立ち上げようとしている姪御さんなのね」
ヨルグは今まで少し思い詰めいた様子であったけれど、ルーシーの噛み付きで気持ちがほぐれたようだ。
笑ってしまってごめんなさいねと謝って、言葉を繋げた。
「ギルが言っているのは……私たちとの取引が、貴女の将来の糧になると、考えたということよ。
装飾に関わること……衣料品だけでなく、宝飾品、化粧品、ありとあらゆるものの取りまとめ役……というのが、装飾師の立ち位置なのでしょう?
サヤ様に、宝飾品の意匠について、色々ご相談するついでに、貴女の補佐もとお願いされているの。
貴女は広く浅くを知っていれば充分だと、ギルは言っていたけれど、宝飾品の深くを必要する時だって、あるでしょう?
そんな場合に、私が貴女を補佐する。そういう意味なのよ。
ギルも、もうちょっと分かりやすく言ってあげなきゃ駄目じゃない」
「……それはつまり、バート商会専属のサヤを、グライン宝石店にも関わらせることが、バート商会としての意向……ってことで良いの?」
そう聞き返すと。頷くギル。
その話を纏めていたため、王都からの帰還が遅くなったのだそう。
つまり、本店店主のアルバートさんも納得した上で、サヤのことを許しているということだ。
「サヤに無断で決めたのは悪かったと思ってるさ。
けど、王都からここまで連絡をやっていたら、こいつの店が潰れるほうが早いなんてことにもなりかねん」
「本当にお恥ずかしい話なのですけれど……こちらの都合的に、そこまでの猶予がございませんでしたの。
レイシール様ならば、きっと是と言うと、ギルは…………。
ですが、勝手を致しましたことは、本当に申し訳なく思っておりますわ。
手打ちも覚悟しております。ですがどうか、一度機会を与えて頂きたく……」
「いや、バート商会の運営陣で決めたことならば、俺は口を挟む気は無いよ。だからヨルグも、そんな風に畏まらなくても良い。
で、サヤの気持ちとしては? 確かにサヤには色々と提案してもらっているけれど、宝飾品の方でも意匠を考えられるものなの?」
確かにサヤは、ベルトとか、髪留めとか飾り結びとか……宝飾品の提案や、それに近いものを出してきている。
それどころか、洗濯板とか車椅子とか…………ありとあらゆるものを提案してくれてはいるけれど、もう結構な量の装飾品を提案した後だ。更に描けるのかというと……どうなんだろうと思った。
「…………それは、新しい宝飾品を開発したい……という、お話なのでしょうか?
今ある既存の宝飾品の、意匠案を欲している……というお話なのでしょうか……?
お力になれればとは思うのですが、私、装飾品は……衣料品ほど詳しくはないのです……」
「構いません。私どもの目的といたしましては、まずはその耳飾。そちらの製造を、我々にも任せていただけないかということ。
それから、サヤ様は商才にも長けた方とお聴きましました。ほんのささやかなものでも良いのです。助言でも構いません。何卒ご意見を賜りたいのですわ……」
「でも……耳飾はともかくとして、髪留めは安価品……一般の方々が身に付けられるものを前提として提案しましたから、高級品を扱うお店には不釣り合いかと……」
困ったようにサヤ。それに対しヨルグは、まずはとにかく、こちらを見て頂けますかと、手荷物から木箱と書類を取り出した。
「私たち、元々は屑石の再利用を目的として、店を立ち上げましたの。
こちらがその屑石。屑とは言っても、決して見劣りするものではございません。
これらは、切断、研磨する中で傷の入ってしまったものや、小さすぎてきちんとした形に研磨できなかったものなのです。
確かに形は歪であるものが多いのですけれど……それだって研磨次第で美しく輝きます。私たちは、それを活かすことのできる新たな発想が欲しいのです」
そう言って小机に広げられたものに、サヤとルーシーは感嘆の息を吐いた。
「わぁ……」
「確かに綺麗!」
宝石は宝石。確かに綺麗なものだなと感心する。ザラザラと大量に積み上げられれば尚のこと。しかし、細長いもの、四角いもの……形は聞く通り不揃いだ。中にはどこに傷があるのやら、わからないものも多くあるが……。
「宝石は光の反射で美しく燦めくように削ります。少し歪んでしまうだけで、その反射が損なわれてしまうのです。
貴族社会……とりわけ王都では、粒が大きく、形や反射が整ったものが好まれます。例えばこのように……釣鐘型の宝石は好まれません」
「え、何故? 形は整ってますよね?」
「丸くないからですわ。楕円や角形までは許されますけれど、上下で形が違うものは美しくないと……」
「基本的に均衡を保ったものがが好まれるからな。これは衣料の場でも同じだ」
ギルがそう補足をしたけれど、女性二人の耳には入っているのやら……宝石を見ることに真剣だ。
そうしている間に、ふとサヤが、手を伸ばし……動きを止めた。
「あの……触っても?」
「えぇ、構いませんわ」
その言葉を待って、サヤは指で、いくつかの宝石を選り分けた。それは先程、ヨルグが言っていた釣鐘型。
それを、尖った方が内側を向くように五つ、集めた。大きさも不揃いであるものの……。
「こうすると、お花が咲いているみたいですよね。こうやって寄せ集めて意匠を作っても……駄目なんですか?」
「我々も、そう考えました。結果として大きな意匠……しかも一色ではなく、多色を上手く利用できれば、見栄えだって劣らないと。
けれど、やはり宝石の粒が小さいということが、問題なのです。
貴族のご令嬢方にとって、装飾品は戦場に持ち込む武器。小刀では、小剣に敵わないのですわ……」
そう言い差し出された書類は、意匠案であるのだろう。小粒の宝石を集めて作った絵物語の一幕のような、なんとも風情のあるものがいくつも描かれていた。
確かに、宝石の粒としては小さいかもしれないが、とても趣があって良いと思う……のに……。
「これなんて私が欲しいです!」
「私もこれやこれ……とても……とても素敵だと思います……」
「…………でもどれも、大きな飾りなんですね」
「座金を大きくして、使う宝石の数を増やすことで見栄えを出しているということなのでしょうか?」
乙女二人でそんな風に言葉を交わし、そうこうしているうち、ふとルーシーが、首を傾げる。
「せっかく小粒なのに……小粒を活かす方法が、大物に挑む……だから、いけないのでは?」
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