706 / 1,121
試練の時 3
しおりを挟む
セイバーン村にて。
館跡の宿舎はほぼ完成しており、俺たちはそこで厩に馬を預けて村の視察へと足を向ける。
厩は大きく拡張されており、視察や訓練で赴いた者たちの馬を受け入れられるようにした様子。あの親子だけでこれ全体の面倒って見れるのかな……なんて心配になりつつ厩の中に足を入れると、小さな幼子が馬の前に座り込んでいて、慌てて拾い上げた。あっ、あっぶな⁉︎
「駄目だよ。踏まれちゃうだろう?」
「?」
……言葉通じてないなこれは……。
生まれたてというわけじゃない。一歳かそこらといった感じの幼子だ。何かあむあむしてると思ったら……藁⁉︎
「それは食べちゃ駄目なやつだよ⁉︎」
急いで口から摘み出したのだけど、フニャっと顔を歪め、泣き出してしまった。あああぁぁぁ、ごめん、口が寂しくなってしまったか。
「ヘリン⁉︎」
その声を聞きつけ、子の名を呼びつつ慌てて駆けつけたのは厩番……の、息子の方。
俺が幼子を抱き上げていたものだから、慌ててしまった様子。
あぁ、この幼子……去年生まれたって言ってたあの子か……大きく育ってるなぁ。
「もも申し訳ありません!」
「いや、俺は良いんだけど、藁を食べてたから摘み出したら泣いてしまったんだ。ごめんな」
「あああぁぁ、お手が……なんとお詫びして良いか……」
「拭けば良いんだから、そこは気にしなくて良い。それよりも、馬の足元に座り込んでいたんだよ。もうひとりで動き回れるのなら、少し考えないと」
「やっぱり抜け出して……木箱に入れておいたんですが、よく抜け出してしまうんです」
「………………木箱?」
こてんと首を傾げるサヤ。厩番に案内されて行った先にあったのは、少し大きめの木箱で、中に積み木が放り込まれてあった。
それを見たサヤが驚愕に瞳を見開く。
「…………木箱に幼子を、ひとり残しているんですか⁉︎」
「? よくあることだよ。この中で遊ばせておくんだ。一応近くに親はいるんだけど」
「小さすぎませんか⁉︎」
何が?
何かひどく動揺している様子のサヤに首を傾げつつ、一応幼子を木箱の中に戻す。すると積み木に気を取られたのか、それを手に取ってしゃぶりだした。口寂しいのかな……。
「店や内職を持っている母親がいるならば、家の中で放しておけるのだけど……。
奥方は、どうしたんだ?」
「ここのところ臥せっておりまして……」
厩番が職場に幼子を連れてこなければならない事態というわけだ。
「い、一歳くらいのお子さんに、こんな木箱は小さすぎます……。それに、ささくれが刺さったりして危険ですし、乗り越えた後も、もし落ちて頭を打ったりしたら……」
あわあわと慌ててサヤ。
サヤの世界は子供に手厚く、配慮や道具、おもちゃも行き渡っている風だったしなぁ。
「そりゃ、それができるならそうしますが……今はこの箱しか空きがなかったし……。
預けられる先も探してみたのですが……このところ村はどこも盛況で忙しく……」
「あぁ、預けられなかったんだな。
……そうか、色々人手が増えた弊害が出ているな、ここも……」
普段ならば幼子を預かって手間賃を稼ぐご老人らも、現在は内職があったりしている。子供の面倒を見るってやはり大変で、それよりは内職でもしてしっかり稼ぎたい……と、考えたっておかしくない。
これは早急に何かしら対策を練らなきゃな……と、考えていたら、サヤが動いた。
「あの、寝台の敷布や、大きな一枚布はありますか。できれば綿の」
「サヤ?」
「赤ちゃんは、一人にしておくなんて危険です。さっきみたいに馬の足元に入ってしまったり、石を誤飲してしまったりしたら……っ。ただでさえ厩は不衛生ですっ。
だから、抱っこして動き回れるようにしましょう。とりあえず誰かが抱っこしておく方が良いです」
有無を言わせぬ口調。そう言いつつ、自身の腰帯代わりにしているベルトを外しだし、それに一瞬頭が真っ白になった。
「さっ、サヤ⁉︎」
「輪っかが二ついるんです。丁度今日のベルトが……」
「駄目っ、服は脱がない!」
「脱ぎません。ベルトを使うだけです」
「駄目だって言ってる! ベルト外さない! 輪っか……金属の輪っか⁉︎ それなら鍛冶屋に行けばすぐ手に入るから! ジェイド、アイル、そこら辺にいる⁉︎」
人前で腰帯を外すなんて絶対に駄目!
必死で押し留めつつ大声で呼ぶと、いつの間にやらジェイドが傍にいた。
ベルトに手を掛けるサヤを、必死で押しとどめようとしてる俺を見て、なんとも言えない微妙な表情になる……。
急に現れた人影に目を白黒させている厩番は無視して、ジェイドはサヤにとどめの一撃を放った。
「お前……人前で腰帯外すって、襲ってくれって言ってるようなもンだぜ?」
「そうなんですか⁉︎」
「むしろ男誘惑するときの常套手段だろ……」
そういうこと今ここで教えない!
「サヤ、どんな輪っか⁉︎ このベルトぐらいのもので良いんだね⁉︎」
「あ、いえ……できるならば……これくらいの、もう少し大きくて、細い輪が二つ欲しいんです。極力軽い、丈夫な、同じ大きさのもの二つ……。継ぎ目は引っ掛かりのないよう、ヤスリで磨いてもらったものならなお……」
「ジェイド!」
「わぁってる……すぐ手に入れてくるから、脱ぐな」
「も、もう脱ぎません!」
真っ赤になってしまったサヤは大変失礼致しました! と叫ぶように謝罪し、別館の方に走っていってしまった。相当恥ずかしかった様子。
走り去ったサヤに慌てる俺を見て、溜息を吐いたハインが一礼して、それに続いた。サヤを一人にはできないと判断したのだろう。俺には、クロードたちや武官の二人がついているものな。
正直他の男性陣は、まさかサヤが人前で腰帯を外すなんて暴挙に出ようとするとは思いもよらず、呆然と状況を見ていたのだけれど、そのうちハッと我に返った厩番。
「……さっきの女性………………と、いうか……サヤ、くん?
ほ、本当に、女性……だったんですね……」
「あ」
そこからまだ、知らない人は知らないのか……。
「いや、噂では伺っていたのですが……」
厩番としては信じ難く思っていたそう。
館が燃えたあのどさくさの時は、暴れる馬を落ち着かせたり、避難させるのに必死で、見ていなかったから、余計に……。
「うん、そうだよ。身の安全のための男装であったのだけど……俺の婚約者となり、セイバーンの庇護下に入ったからね。
サヤは今まで通りを望んでいるから、従者も続けるのだけど、どうかそのように接してもらえると、嬉しい」
「…………今まで通りですか?」
「近い将来領主の妻となるけれど、サヤはサヤだよ。彼女の本質はなんら変わらない。行動も変わらない。職務もね。
貴族の妻らしくはないと思う……けれど、それがサヤの魅力だと俺は思っているから、やりたいようにやってほしいと思うんだ」
そんな話をしていたら、一旦ハインが戻ってきた。
「小一時間ほど頂きたく思います。
サヤが、子を抱いておける道具を作りたいとのこと。完成次第追いかけますから、まずは交易路の方を視察されては如何でしょう」
「え……はっ⁉︎」
「分かった。ハインも手伝ってくるの?」
「二人でやれば早いでしょうから」
「ええっ⁉︎」
「そういうことだから、小一時間ほどへリンを抱いて待っててやって。
サヤの国では、子は神からの預かり物と考えるそうでね、彼女は幼子を疎かにできないんだよ。
きっと役立つものを作るのだと思うし……付き合わせて申し訳ないけど、良いだろうか?」
話についていけてない様子の厩番にそう言うと、困ったように口元を歪めたものの、最後にはい……と、力なく返事が返った。
貴族の横暴に付き合わされるのには慣れっこといった様子。ジェスルのいた頃にはそれが日常だったから。
だけど……サヤは、そういうのじゃないよ。安心してほしい。
「きっと、良いものを作ると思うから、待ってて。
馬の世話は水と飼葉だけ与えておいてくれたら、後は帰る前に自分でしても良いし……」
「そ、そうは参りません!」
「ははっ、お前たちの仕事を取りはしないよ。だけど……幼子を放って仕事を優先してもらうのは、なんだか俺も嫌だから。奥方が体調不良の今、俺たちに対しては、できる範囲で構わない」
そう言い置いて空いた場所に各自で馬を繋ぎ、厩を後にした。
ここの厩番は親子二人で回されており、人手が少ない。今はただでさえ多くの貴族が出入りしているし、気が抜けないだろうから、少しくらいは負担を減らしてやりたかった。
「ハイン、サヤは……」
「別館の女中の所です。裁縫道具を借りに。そちらをそのままお借りして、スリングなるものを作って参ります」
「分かった。……ハイン、サヤを、一人にするのは控えて。別館にいるのなら良いけど……極力ひとりで人目のない場所へは、行かせないでほしい……」
「は?」
「……なんとなくね。その、立場のこともあるし……」
「……畏まりました」
何か根拠があるわけでもないのだ……。
だけどなんとなく……サヤを孤立させることに、胸騒ぎを覚えるというだけ。
拠点村やロジェ村ならば、吠狼の目があるし、そこまで気にしないのだけど……。それ以外の場所には、誰かをつけておきたかった。
とくにここは……セイバーン村は、サヤの腕時計が失せた場所である可能性が、高い。
そして長年、ジェスルが巣食っていた村なのだ。あちらにとってもここはもう、懐の内だろう……。
館跡の宿舎はほぼ完成しており、俺たちはそこで厩に馬を預けて村の視察へと足を向ける。
厩は大きく拡張されており、視察や訓練で赴いた者たちの馬を受け入れられるようにした様子。あの親子だけでこれ全体の面倒って見れるのかな……なんて心配になりつつ厩の中に足を入れると、小さな幼子が馬の前に座り込んでいて、慌てて拾い上げた。あっ、あっぶな⁉︎
「駄目だよ。踏まれちゃうだろう?」
「?」
……言葉通じてないなこれは……。
生まれたてというわけじゃない。一歳かそこらといった感じの幼子だ。何かあむあむしてると思ったら……藁⁉︎
「それは食べちゃ駄目なやつだよ⁉︎」
急いで口から摘み出したのだけど、フニャっと顔を歪め、泣き出してしまった。あああぁぁぁ、ごめん、口が寂しくなってしまったか。
「ヘリン⁉︎」
その声を聞きつけ、子の名を呼びつつ慌てて駆けつけたのは厩番……の、息子の方。
俺が幼子を抱き上げていたものだから、慌ててしまった様子。
あぁ、この幼子……去年生まれたって言ってたあの子か……大きく育ってるなぁ。
「もも申し訳ありません!」
「いや、俺は良いんだけど、藁を食べてたから摘み出したら泣いてしまったんだ。ごめんな」
「あああぁぁ、お手が……なんとお詫びして良いか……」
「拭けば良いんだから、そこは気にしなくて良い。それよりも、馬の足元に座り込んでいたんだよ。もうひとりで動き回れるのなら、少し考えないと」
「やっぱり抜け出して……木箱に入れておいたんですが、よく抜け出してしまうんです」
「………………木箱?」
こてんと首を傾げるサヤ。厩番に案内されて行った先にあったのは、少し大きめの木箱で、中に積み木が放り込まれてあった。
それを見たサヤが驚愕に瞳を見開く。
「…………木箱に幼子を、ひとり残しているんですか⁉︎」
「? よくあることだよ。この中で遊ばせておくんだ。一応近くに親はいるんだけど」
「小さすぎませんか⁉︎」
何が?
何かひどく動揺している様子のサヤに首を傾げつつ、一応幼子を木箱の中に戻す。すると積み木に気を取られたのか、それを手に取ってしゃぶりだした。口寂しいのかな……。
「店や内職を持っている母親がいるならば、家の中で放しておけるのだけど……。
奥方は、どうしたんだ?」
「ここのところ臥せっておりまして……」
厩番が職場に幼子を連れてこなければならない事態というわけだ。
「い、一歳くらいのお子さんに、こんな木箱は小さすぎます……。それに、ささくれが刺さったりして危険ですし、乗り越えた後も、もし落ちて頭を打ったりしたら……」
あわあわと慌ててサヤ。
サヤの世界は子供に手厚く、配慮や道具、おもちゃも行き渡っている風だったしなぁ。
「そりゃ、それができるならそうしますが……今はこの箱しか空きがなかったし……。
預けられる先も探してみたのですが……このところ村はどこも盛況で忙しく……」
「あぁ、預けられなかったんだな。
……そうか、色々人手が増えた弊害が出ているな、ここも……」
普段ならば幼子を預かって手間賃を稼ぐご老人らも、現在は内職があったりしている。子供の面倒を見るってやはり大変で、それよりは内職でもしてしっかり稼ぎたい……と、考えたっておかしくない。
これは早急に何かしら対策を練らなきゃな……と、考えていたら、サヤが動いた。
「あの、寝台の敷布や、大きな一枚布はありますか。できれば綿の」
「サヤ?」
「赤ちゃんは、一人にしておくなんて危険です。さっきみたいに馬の足元に入ってしまったり、石を誤飲してしまったりしたら……っ。ただでさえ厩は不衛生ですっ。
だから、抱っこして動き回れるようにしましょう。とりあえず誰かが抱っこしておく方が良いです」
有無を言わせぬ口調。そう言いつつ、自身の腰帯代わりにしているベルトを外しだし、それに一瞬頭が真っ白になった。
「さっ、サヤ⁉︎」
「輪っかが二ついるんです。丁度今日のベルトが……」
「駄目っ、服は脱がない!」
「脱ぎません。ベルトを使うだけです」
「駄目だって言ってる! ベルト外さない! 輪っか……金属の輪っか⁉︎ それなら鍛冶屋に行けばすぐ手に入るから! ジェイド、アイル、そこら辺にいる⁉︎」
人前で腰帯を外すなんて絶対に駄目!
必死で押し留めつつ大声で呼ぶと、いつの間にやらジェイドが傍にいた。
ベルトに手を掛けるサヤを、必死で押しとどめようとしてる俺を見て、なんとも言えない微妙な表情になる……。
急に現れた人影に目を白黒させている厩番は無視して、ジェイドはサヤにとどめの一撃を放った。
「お前……人前で腰帯外すって、襲ってくれって言ってるようなもンだぜ?」
「そうなんですか⁉︎」
「むしろ男誘惑するときの常套手段だろ……」
そういうこと今ここで教えない!
「サヤ、どんな輪っか⁉︎ このベルトぐらいのもので良いんだね⁉︎」
「あ、いえ……できるならば……これくらいの、もう少し大きくて、細い輪が二つ欲しいんです。極力軽い、丈夫な、同じ大きさのもの二つ……。継ぎ目は引っ掛かりのないよう、ヤスリで磨いてもらったものならなお……」
「ジェイド!」
「わぁってる……すぐ手に入れてくるから、脱ぐな」
「も、もう脱ぎません!」
真っ赤になってしまったサヤは大変失礼致しました! と叫ぶように謝罪し、別館の方に走っていってしまった。相当恥ずかしかった様子。
走り去ったサヤに慌てる俺を見て、溜息を吐いたハインが一礼して、それに続いた。サヤを一人にはできないと判断したのだろう。俺には、クロードたちや武官の二人がついているものな。
正直他の男性陣は、まさかサヤが人前で腰帯を外すなんて暴挙に出ようとするとは思いもよらず、呆然と状況を見ていたのだけれど、そのうちハッと我に返った厩番。
「……さっきの女性………………と、いうか……サヤ、くん?
ほ、本当に、女性……だったんですね……」
「あ」
そこからまだ、知らない人は知らないのか……。
「いや、噂では伺っていたのですが……」
厩番としては信じ難く思っていたそう。
館が燃えたあのどさくさの時は、暴れる馬を落ち着かせたり、避難させるのに必死で、見ていなかったから、余計に……。
「うん、そうだよ。身の安全のための男装であったのだけど……俺の婚約者となり、セイバーンの庇護下に入ったからね。
サヤは今まで通りを望んでいるから、従者も続けるのだけど、どうかそのように接してもらえると、嬉しい」
「…………今まで通りですか?」
「近い将来領主の妻となるけれど、サヤはサヤだよ。彼女の本質はなんら変わらない。行動も変わらない。職務もね。
貴族の妻らしくはないと思う……けれど、それがサヤの魅力だと俺は思っているから、やりたいようにやってほしいと思うんだ」
そんな話をしていたら、一旦ハインが戻ってきた。
「小一時間ほど頂きたく思います。
サヤが、子を抱いておける道具を作りたいとのこと。完成次第追いかけますから、まずは交易路の方を視察されては如何でしょう」
「え……はっ⁉︎」
「分かった。ハインも手伝ってくるの?」
「二人でやれば早いでしょうから」
「ええっ⁉︎」
「そういうことだから、小一時間ほどへリンを抱いて待っててやって。
サヤの国では、子は神からの預かり物と考えるそうでね、彼女は幼子を疎かにできないんだよ。
きっと役立つものを作るのだと思うし……付き合わせて申し訳ないけど、良いだろうか?」
話についていけてない様子の厩番にそう言うと、困ったように口元を歪めたものの、最後にはい……と、力なく返事が返った。
貴族の横暴に付き合わされるのには慣れっこといった様子。ジェスルのいた頃にはそれが日常だったから。
だけど……サヤは、そういうのじゃないよ。安心してほしい。
「きっと、良いものを作ると思うから、待ってて。
馬の世話は水と飼葉だけ与えておいてくれたら、後は帰る前に自分でしても良いし……」
「そ、そうは参りません!」
「ははっ、お前たちの仕事を取りはしないよ。だけど……幼子を放って仕事を優先してもらうのは、なんだか俺も嫌だから。奥方が体調不良の今、俺たちに対しては、できる範囲で構わない」
そう言い置いて空いた場所に各自で馬を繋ぎ、厩を後にした。
ここの厩番は親子二人で回されており、人手が少ない。今はただでさえ多くの貴族が出入りしているし、気が抜けないだろうから、少しくらいは負担を減らしてやりたかった。
「ハイン、サヤは……」
「別館の女中の所です。裁縫道具を借りに。そちらをそのままお借りして、スリングなるものを作って参ります」
「分かった。……ハイン、サヤを、一人にするのは控えて。別館にいるのなら良いけど……極力ひとりで人目のない場所へは、行かせないでほしい……」
「は?」
「……なんとなくね。その、立場のこともあるし……」
「……畏まりました」
何か根拠があるわけでもないのだ……。
だけどなんとなく……サヤを孤立させることに、胸騒ぎを覚えるというだけ。
拠点村やロジェ村ならば、吠狼の目があるし、そこまで気にしないのだけど……。それ以外の場所には、誰かをつけておきたかった。
とくにここは……セイバーン村は、サヤの腕時計が失せた場所である可能性が、高い。
そして長年、ジェスルが巣食っていた村なのだ。あちらにとってもここはもう、懐の内だろう……。
0
お気に入りに追加
838
あなたにおすすめの小説
アルバートの屈辱
プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。
『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
【取り下げ予定】愛されない妃ですので。
ごろごろみかん。
恋愛
王妃になんて、望んでなったわけではない。
国王夫妻のリュシアンとミレーゼの関係は冷えきっていた。
「僕はきみを愛していない」
はっきりそう告げた彼は、ミレーゼ以外の女性を抱き、愛を囁いた。
『お飾り王妃』の名を戴くミレーゼだが、ある日彼女は側妃たちの諍いに巻き込まれ、命を落としてしまう。
(ああ、私の人生ってなんだったんだろう──?)
そう思って人生に終止符を打ったミレーゼだったが、気がつくと結婚前に戻っていた。
しかも、別の人間になっている?
なぜか見知らぬ伯爵令嬢になってしまったミレーゼだが、彼女は決意する。新たな人生、今度はリュシアンに関わることなく、平凡で優しい幸せを掴もう、と。
*年齢制限を18→15に変更しました。
【改稿版・完結】その瞳に魅入られて
おもち。
恋愛
「——君を愛してる」
そう悲鳴にも似た心からの叫びは、婚約者である私に向けたものではない。私の従姉妹へ向けられたものだった——
幼い頃に交わした婚約だったけれど私は彼を愛してたし、彼に愛されていると思っていた。
あの日、二人の胸を引き裂くような思いを聞くまでは……
『最初から愛されていなかった』
その事実に心が悲鳴を上げ、目の前が真っ白になった。
私は愛し合っている二人を引き裂く『邪魔者』でしかないのだと、その光景を見ながらひたすら現実を受け入れるしかなかった。
『このまま婚姻を結んでも、私は一生愛されない』
『私も一度でいいから、あんな風に愛されたい』
でも貴族令嬢である立場が、父が、それを許してはくれない。
必死で気持ちに蓋をして、淡々と日々を過ごしていたある日。偶然見つけた一冊の本によって、私の運命は大きく変わっていくのだった。
私も、貴方達のように自分の幸せを求めても許されますか……?
※後半、壊れてる人が登場します。苦手な方はご注意下さい。
※このお話は私独自の設定もあります、ご了承ください。ご都合主義な場面も多々あるかと思います。
※『幸せは人それぞれ』と、いうような作品になっています。苦手な方はご注意下さい。
※こちらの作品は小説家になろう様でも掲載しています。
【完】愛人に王妃の座を奪い取られました。
112
恋愛
クインツ国の王妃アンは、王レイナルドの命を受け廃妃となった。
愛人であったリディア嬢が新しい王妃となり、アンはその日のうちに王宮を出ていく。
実家の伯爵家の屋敷へ帰るが、継母のダーナによって身を寄せることも敵わない。
アンは動じることなく、継母に一つの提案をする。
「私に娼館を紹介してください」
娼婦になると思った継母は喜んでアンを娼館へと送り出して──
立派な王太子妃~妃の幸せは誰が考えるのか~
矢野りと
恋愛
ある日王太子妃は夫である王太子の不貞の現場を目撃してしまう。愛している夫の裏切りに傷つきながらも、やり直したいと周りに助言を求めるが‥‥。
隠れて不貞を続ける夫を見続けていくうちに壊れていく妻。
周りが気づいた時は何もかも手遅れだった…。
※設定はゆるいです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる