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拠点村 5
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「朝から美味だ。たまらんな!」
とても上機嫌なディート殿が、満面の笑みを浮かべて朝食を堪能している。
今日の朝食はハインが担当で、美味い美味いと食すディート殿をまえに、ムスッとした顔で自身の食事を進めていた。
まあ、不機嫌なのではなく、照れているのだけど。
サヤはというと、少々目元が赤く、いつもの元気さが陰ってしまっている。
昨日の話が、彼女にはやはり、重かったのだと思う。少し心配だった。
「さてさて、やっと許可を得ましたし、昨日のうちにメバックへは連絡を出しておきましたから、本日より拠点村の建設計画開始ですよぅ。
とりあえずは仮小屋の建設ですが、これはまあ二日も掛からないでしょう。
で、地ならしは進めてますから、まず水路ですねぇ。これができた場所から、上物を建てていってもらいますが、汚物溜めと、食事処と風呂の建設が最優先で……」
食事の最中に今後の予定やお互いの仕事を報告し合い、共有する。
一番報告が多いマルが、一番最後に長々とした報告を済ませ、各々が午前中の仕事を始めることとなった。
さて、本日よりディート殿がいる。なのでハインとサヤの二人は、午前中を使い雑務に集中。午後からは、ディート殿を拠点村の予定地に案内しようと決まった。
マルはメバックへジェイドは留守番役だ。別館を無人にはできない。……という名目で、周りを警戒しておいてもらう。
従者二人が雑務に向かい、俺はディート殿を伴って、執務室にて書類仕事に専念。
セイバーンの地方を任せている士族らからの報告書に目を通し、署名、捺印の繰り返しだ。
しばらくはただ紙を繰る音と、筆を走らせる音だけが部屋を満たしていたのだが、未処理の書類が、処理済みの書類より少なくなってきた頃、不意にディート殿が口を開いた。
「レイ殿の衣装……それは、ギルの所のものか?」
本日の衣装は翡翠色の上着に紺の長衣。白の細袴という出で立ちだ。腰帯は使わず、革製のベルトを利用していた。
貴族の服装としては少々特殊であるだろうが、普段着なのだから俺は気にしない。
「そうですよ。試作品ですけどね」
これは、サヤの従者服用の意匠を、応用したものだ。
この前借りたハインの服が、思いの外快適だったので、ギルに長衣も作ってみてくれとお願いした。そしてその試作品を、本日は纏っている。
上着も同じくだ。
「試作品……随時、そうやって試しを着ている?」
「ええまぁ……。だいたい新しく提案された意匠は、一通り作られて、試しますね」
「友人とはいえ、貴族を使うとは……思い切ったことをする」
「俺がそうしろって言ったんですよ。貴族社会に提案した後で、不備が出てくる確率が、段違いなんです。貴族目線で見る目が加わりますから」
そう答えると、しばらく沈黙……そして。
「レイ殿は身分差に固執しないな。何故そのような考えに至ったかを伺っても良いか?」
と、聞かれた。
ディート殿もその辺の垣根は低いと思うのだけど、何故そのようなことが知りたいのだろう?
不思議に思ったけれど、表情は真剣であったし、真面目に答えた方が良いんだろうなぁと結論を出した。
「そうですね……俺は三歳まで認知されずにおりましたから、元が庶民だったというのもありますけど……。
……学舎にやられている間、ギルの実家で長く、世話になりました。
ディート殿も、任務の際に色々聞き及んでいるのでしょう? 俺の家庭環境は、あまり褒められたものじゃない。
ギルは……多分それを、ある程度知ってたんでしょうね。だから、俺を家族同然に……あえて、そこまで踏み込んで、接してくれたんです。
俺が家族から得られなかったもの全てを、あの一家が与えてくれた。
見返りなんて期待できない、爪弾き者の俺をですよ?
なら、その家族同然扱いされる友人としては、役に立ちたいと思うものでしょう?」
バート商会は長年貴族との取引を行う大店だ。貴族に関わることがどういったことかは熟知している。
だから本来は、そんな踏み込んだ関係は持たない。実際、俺以外に、こんな風に深く関わっている貴族はいないだろう。
何も言われたことはない。常に、当然のようにそう接してくれた。
けれど、それは簡単にできることではなかったろうと、思う。
「ギルは、レイ殿の兄も同然か」
「そうですね。親友であり、兄であり……掛け替えのない宝ですよ」
本人には言わないけれど……そう思ってる。
「ならば、獣人を従者にしているのにも、それなりの経緯があるのだろうな」
そんな風に切り込んで来られて、とっさに言葉が返せなかった。
ハインが獣人だって、知ってた?……いつ、どこから……誰まで、それが知られている⁉︎
つい警戒してしまったのを察したのだろう。ディート殿が手を振って、苦笑する。
「そんな顔をするな。俺の個人的な興味だ。姫様方に告げ口する気もないし、知られてもおらぬ。
種あかしをするとな、俺の領地での職務は国境警備だったのだ。
我が領地で国境警備に関わる家系は、十を過ぎたら警備に回される。人手不足なのと、実戦経験がいちばんの教材だからだ。
無論はじめは雑用なんだが……国境を超えようとする罪人を多く見てきた」
淡々と語りながら、視線を窓の外にやるディート殿。
十歳から実戦って……それでこの人、鬼のように強いのか……。泰然と構えていて、物事に動じたりしないのも、経験故なのかもしれない。
「俺にも兄がわりが山ほどいた。国境警備に就く者全てが兄同然だった」
「共に過ごされることが、多かったのですか?」
「俺は領主一族の子息とはいえ、嫡子ではない。家督は上の兄全員が殉死でもせねば回って来ぬ。
だから生まれた時から、人手不足の国境警備要員に決定していたし、物心ついた頃から勝手に入り浸っていたからな。顔見知りしかおらんわ」
そう言ってから、何故かフフフと意味深に笑った。
「我が領地の国境警備は人を選んでいる余裕もない。なのでハインのようなものは案外いるぞ。
見分け方のコツも、当人らに教わった。罪人にも獣人は多い故な。見分けられぬと仕事に差し支えるのだ。
とはいえ、ハインはだいぶん薄い。なかなかその特徴をあらわにしなくて、少し自信も無かったんだが……そうか。獣人か」
っあっ! カマをかけられていたのか⁉︎
どうやら確信を持っていたわけではなかったようだ。俺の反応を、確認したかったのだろう。
そして、ハインを『だいぶん薄い』と表現したということは、それすらも分かってしまっているということ。なら……この村にいる獣人が、ハイン一人ではないことも、分かってしまっていそうだな……。
「獣人と知って、傍に置いているのだな」
「獣人であることが、何か問題になるとでも?」
「それはなるだろう。獣人は罪人の温床だ。他に知られれば、良い顔はされまい?」
まるで、獣人が全て悪人だとでもいう風に言い、皮肉げに笑う。
領地に獣人も多いというなら、その言葉は、あんまりなのじゃないか?
「獣人は罪人の温床などではありません。彼らをその環境に追いやっているから、そうなるだけ。そしてそうしているのは、我々だ。
そもそも俺は、ハインが獣人だろうが、人だろうが、どうだって良い。ハインはハインです。
たとえ誰かにそれを知られようと、手放す気もありません。あいつはもう、俺の血肉の一部なんですから」
言うなら言えばいい。だからって、俺は何も変える気はない。
ハインの生活に、後ろ指をさされるようなことは何一つ無いのだ。
自分のことすら投げ打って、俺の全てをこなしている。俺はハインを誇らしく思いこそすれ、恥だなんて思わない!
俺の言葉に、ディート殿は楽しそうに、にこりと笑う。
「ああ、やはり貴殿は面白いな。こういった話を振って、動揺もせずきっぱりと本音を答えてくれる人物は、なかなかに珍しい」
振りまくってるのか、この人は……。
本当に型破りすぎだと思う。こじれたり、問題になったりしそうなものだが……。
眉間にしわを寄せる俺に、ディート殿は笑顔で、こう付け足した。
「……それもあって、貴殿とは縁を続けたかった。価値観を共有できる友人というのは、貴重だろう? お互い」
………………。
「もうちょっと、聞き方があるのじゃないですか?」
なんでそう、探るみたいに、話をした?
「本心を……隠しているもの全てを、見たかったのでな。
真正面から聞いても大抵の人間ははぐらかす。退路を絶っておかねば、本音を口にしてはくれまい?
特にレイ殿は、何か思惑があって、獣人をあえて、近場に侍らせているようにも見受けられる」
そう言ったディート殿は、ゆっくりと足を組み、窓にもう一度、視線をやった。
窓向こうにある木々を見据えて「二人……いるな」と、呟く。
「見える者だけではなかろう? そこかしこに、気配があるんだ。相当な手練れが、貴殿の影には潜んでいる。
男爵家二子の、日陰者が持つ手駒としては些か、不似合いだな?」
こっ、この人は…………っ。
相当な実力者であることは、分かっていた。分かってはいたのだけど……それが、ここまでだということは、考えて、いなかった……。
あえてもう、言い逃れも誤魔化しもできないように、ここまで踏み込んだ…………⁉︎
「……姫様方には……」
「俺の興味だと言ったろう? わざわざ報告などせぬ。
何かしら犯罪に加担していると言うなら話は別だがな。そういった様子は見受けられん。姫様がここに滞在していた時も、そのような動き方はしなかった。
あの者たちは、誰ぞの意志のもとで、管理されている。そしてその中心は、当然、レイ殿だな?
黙ってただ眺めておくのも性分ではないんだ。この際だと、思わんか? 俺は結構、役に立つと思うがな」
とんでもない鼻のきき方する人だ……。
犯罪者を取り締まっているとこうなるのだろうか…………いや、絶対この人が規格外だ。
…………サヤの性別も、分かっていたりするんじゃ、ないだろうな?
溜息を吐くしかなく、もうこの人、巻き込もうと覚悟を決めた。巻き込まれる気満々で、ガスガス足を突っ込んできたのだ。逃がさんぞと言われている気しかしない。
「じゃ、もう腹くくって一蓮托生を受け入れてくださいね」
「心得た!」
ものすごく嬉しそうに返事をされ、俺は盛大に溜息を零しつつ、仕事の手を止め、長椅子に移動した。
とても上機嫌なディート殿が、満面の笑みを浮かべて朝食を堪能している。
今日の朝食はハインが担当で、美味い美味いと食すディート殿をまえに、ムスッとした顔で自身の食事を進めていた。
まあ、不機嫌なのではなく、照れているのだけど。
サヤはというと、少々目元が赤く、いつもの元気さが陰ってしまっている。
昨日の話が、彼女にはやはり、重かったのだと思う。少し心配だった。
「さてさて、やっと許可を得ましたし、昨日のうちにメバックへは連絡を出しておきましたから、本日より拠点村の建設計画開始ですよぅ。
とりあえずは仮小屋の建設ですが、これはまあ二日も掛からないでしょう。
で、地ならしは進めてますから、まず水路ですねぇ。これができた場所から、上物を建てていってもらいますが、汚物溜めと、食事処と風呂の建設が最優先で……」
食事の最中に今後の予定やお互いの仕事を報告し合い、共有する。
一番報告が多いマルが、一番最後に長々とした報告を済ませ、各々が午前中の仕事を始めることとなった。
さて、本日よりディート殿がいる。なのでハインとサヤの二人は、午前中を使い雑務に集中。午後からは、ディート殿を拠点村の予定地に案内しようと決まった。
マルはメバックへジェイドは留守番役だ。別館を無人にはできない。……という名目で、周りを警戒しておいてもらう。
従者二人が雑務に向かい、俺はディート殿を伴って、執務室にて書類仕事に専念。
セイバーンの地方を任せている士族らからの報告書に目を通し、署名、捺印の繰り返しだ。
しばらくはただ紙を繰る音と、筆を走らせる音だけが部屋を満たしていたのだが、未処理の書類が、処理済みの書類より少なくなってきた頃、不意にディート殿が口を開いた。
「レイ殿の衣装……それは、ギルの所のものか?」
本日の衣装は翡翠色の上着に紺の長衣。白の細袴という出で立ちだ。腰帯は使わず、革製のベルトを利用していた。
貴族の服装としては少々特殊であるだろうが、普段着なのだから俺は気にしない。
「そうですよ。試作品ですけどね」
これは、サヤの従者服用の意匠を、応用したものだ。
この前借りたハインの服が、思いの外快適だったので、ギルに長衣も作ってみてくれとお願いした。そしてその試作品を、本日は纏っている。
上着も同じくだ。
「試作品……随時、そうやって試しを着ている?」
「ええまぁ……。だいたい新しく提案された意匠は、一通り作られて、試しますね」
「友人とはいえ、貴族を使うとは……思い切ったことをする」
「俺がそうしろって言ったんですよ。貴族社会に提案した後で、不備が出てくる確率が、段違いなんです。貴族目線で見る目が加わりますから」
そう答えると、しばらく沈黙……そして。
「レイ殿は身分差に固執しないな。何故そのような考えに至ったかを伺っても良いか?」
と、聞かれた。
ディート殿もその辺の垣根は低いと思うのだけど、何故そのようなことが知りたいのだろう?
不思議に思ったけれど、表情は真剣であったし、真面目に答えた方が良いんだろうなぁと結論を出した。
「そうですね……俺は三歳まで認知されずにおりましたから、元が庶民だったというのもありますけど……。
……学舎にやられている間、ギルの実家で長く、世話になりました。
ディート殿も、任務の際に色々聞き及んでいるのでしょう? 俺の家庭環境は、あまり褒められたものじゃない。
ギルは……多分それを、ある程度知ってたんでしょうね。だから、俺を家族同然に……あえて、そこまで踏み込んで、接してくれたんです。
俺が家族から得られなかったもの全てを、あの一家が与えてくれた。
見返りなんて期待できない、爪弾き者の俺をですよ?
なら、その家族同然扱いされる友人としては、役に立ちたいと思うものでしょう?」
バート商会は長年貴族との取引を行う大店だ。貴族に関わることがどういったことかは熟知している。
だから本来は、そんな踏み込んだ関係は持たない。実際、俺以外に、こんな風に深く関わっている貴族はいないだろう。
何も言われたことはない。常に、当然のようにそう接してくれた。
けれど、それは簡単にできることではなかったろうと、思う。
「ギルは、レイ殿の兄も同然か」
「そうですね。親友であり、兄であり……掛け替えのない宝ですよ」
本人には言わないけれど……そう思ってる。
「ならば、獣人を従者にしているのにも、それなりの経緯があるのだろうな」
そんな風に切り込んで来られて、とっさに言葉が返せなかった。
ハインが獣人だって、知ってた?……いつ、どこから……誰まで、それが知られている⁉︎
つい警戒してしまったのを察したのだろう。ディート殿が手を振って、苦笑する。
「そんな顔をするな。俺の個人的な興味だ。姫様方に告げ口する気もないし、知られてもおらぬ。
種あかしをするとな、俺の領地での職務は国境警備だったのだ。
我が領地で国境警備に関わる家系は、十を過ぎたら警備に回される。人手不足なのと、実戦経験がいちばんの教材だからだ。
無論はじめは雑用なんだが……国境を超えようとする罪人を多く見てきた」
淡々と語りながら、視線を窓の外にやるディート殿。
十歳から実戦って……それでこの人、鬼のように強いのか……。泰然と構えていて、物事に動じたりしないのも、経験故なのかもしれない。
「俺にも兄がわりが山ほどいた。国境警備に就く者全てが兄同然だった」
「共に過ごされることが、多かったのですか?」
「俺は領主一族の子息とはいえ、嫡子ではない。家督は上の兄全員が殉死でもせねば回って来ぬ。
だから生まれた時から、人手不足の国境警備要員に決定していたし、物心ついた頃から勝手に入り浸っていたからな。顔見知りしかおらんわ」
そう言ってから、何故かフフフと意味深に笑った。
「我が領地の国境警備は人を選んでいる余裕もない。なのでハインのようなものは案外いるぞ。
見分け方のコツも、当人らに教わった。罪人にも獣人は多い故な。見分けられぬと仕事に差し支えるのだ。
とはいえ、ハインはだいぶん薄い。なかなかその特徴をあらわにしなくて、少し自信も無かったんだが……そうか。獣人か」
っあっ! カマをかけられていたのか⁉︎
どうやら確信を持っていたわけではなかったようだ。俺の反応を、確認したかったのだろう。
そして、ハインを『だいぶん薄い』と表現したということは、それすらも分かってしまっているということ。なら……この村にいる獣人が、ハイン一人ではないことも、分かってしまっていそうだな……。
「獣人と知って、傍に置いているのだな」
「獣人であることが、何か問題になるとでも?」
「それはなるだろう。獣人は罪人の温床だ。他に知られれば、良い顔はされまい?」
まるで、獣人が全て悪人だとでもいう風に言い、皮肉げに笑う。
領地に獣人も多いというなら、その言葉は、あんまりなのじゃないか?
「獣人は罪人の温床などではありません。彼らをその環境に追いやっているから、そうなるだけ。そしてそうしているのは、我々だ。
そもそも俺は、ハインが獣人だろうが、人だろうが、どうだって良い。ハインはハインです。
たとえ誰かにそれを知られようと、手放す気もありません。あいつはもう、俺の血肉の一部なんですから」
言うなら言えばいい。だからって、俺は何も変える気はない。
ハインの生活に、後ろ指をさされるようなことは何一つ無いのだ。
自分のことすら投げ打って、俺の全てをこなしている。俺はハインを誇らしく思いこそすれ、恥だなんて思わない!
俺の言葉に、ディート殿は楽しそうに、にこりと笑う。
「ああ、やはり貴殿は面白いな。こういった話を振って、動揺もせずきっぱりと本音を答えてくれる人物は、なかなかに珍しい」
振りまくってるのか、この人は……。
本当に型破りすぎだと思う。こじれたり、問題になったりしそうなものだが……。
眉間にしわを寄せる俺に、ディート殿は笑顔で、こう付け足した。
「……それもあって、貴殿とは縁を続けたかった。価値観を共有できる友人というのは、貴重だろう? お互い」
………………。
「もうちょっと、聞き方があるのじゃないですか?」
なんでそう、探るみたいに、話をした?
「本心を……隠しているもの全てを、見たかったのでな。
真正面から聞いても大抵の人間ははぐらかす。退路を絶っておかねば、本音を口にしてはくれまい?
特にレイ殿は、何か思惑があって、獣人をあえて、近場に侍らせているようにも見受けられる」
そう言ったディート殿は、ゆっくりと足を組み、窓にもう一度、視線をやった。
窓向こうにある木々を見据えて「二人……いるな」と、呟く。
「見える者だけではなかろう? そこかしこに、気配があるんだ。相当な手練れが、貴殿の影には潜んでいる。
男爵家二子の、日陰者が持つ手駒としては些か、不似合いだな?」
こっ、この人は…………っ。
相当な実力者であることは、分かっていた。分かってはいたのだけど……それが、ここまでだということは、考えて、いなかった……。
あえてもう、言い逃れも誤魔化しもできないように、ここまで踏み込んだ…………⁉︎
「……姫様方には……」
「俺の興味だと言ったろう? わざわざ報告などせぬ。
何かしら犯罪に加担していると言うなら話は別だがな。そういった様子は見受けられん。姫様がここに滞在していた時も、そのような動き方はしなかった。
あの者たちは、誰ぞの意志のもとで、管理されている。そしてその中心は、当然、レイ殿だな?
黙ってただ眺めておくのも性分ではないんだ。この際だと、思わんか? 俺は結構、役に立つと思うがな」
とんでもない鼻のきき方する人だ……。
犯罪者を取り締まっているとこうなるのだろうか…………いや、絶対この人が規格外だ。
…………サヤの性別も、分かっていたりするんじゃ、ないだろうな?
溜息を吐くしかなく、もうこの人、巻き込もうと覚悟を決めた。巻き込まれる気満々で、ガスガス足を突っ込んできたのだ。逃がさんぞと言われている気しかしない。
「じゃ、もう腹くくって一蓮托生を受け入れてくださいね」
「心得た!」
ものすごく嬉しそうに返事をされ、俺は盛大に溜息を零しつつ、仕事の手を止め、長椅子に移動した。
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