同室者の怖い彼と、僕は恋人同士になりました

すいかちゃん

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第二話

同室の彼は、顔は怖いけど優しい

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恋人同士になったその夜。浩也は、寮の部屋で再び健吾にキスをされた。逆らう事さえできずにただジッとキスが終わるのを待っていた浩也だが、ファスナーを下げられて大いに慌てた。
「ま、ままま待ってっ」
健吾の手を抑えて言えば、不服そうな視線が返ってくる。
「なんでだ?俺達は恋人同士になっんだろ?」
そう言われれれば、確かにそうだ。浩也は思わず口ごもってしまう。そして、その沈黙が健吾を大胆にさせた。浩也を床に押し倒しのしかかってくる。
「ちょ、ちょっと猪熊くんっ」
慌てて健吾を押しのけようとするものの、浩也の力ではビクともしない。
「少しだけだから」
ハァハァと耳元で聞こえる吐息は、まるで獣のようだった。浩也がいくら止めようとしても、健吾の指はファスナーを開け強引に中へと入り込んでしまった。そして、恐怖から縮みきった浩也のアレを指先で摘む。
「有村はココも可愛いんだな」
真面目なトーンで言われ、浩也は羞恥心から真っ赤になった。
「やめっ、離して・・・っ」
健吾の太い指が、浩也の先端をクリクリと弄る。覚えのある感覚が背筋を這いのぼり、浩也はなんとか離れようとした。
「お願い・・・っ、そんなに触らないで・・・っ」
哀願しても、健吾は止めてはくれなかった。指先でコリコリ刺激してくる。
「あっ、あ・・・っ」
浩也は、生まれて初めて他人の指でイッてしまった。そして、その事は思いの外ショックだった。
(こんなの、こんなのってないよぉ。やだ、やだよぉ)
浩也は、もう何がなんだかわからなくなった。いつしか、ポロポロと涙が溢れてきて止まらなかった。
「あ、有村?」
戸惑ったような健吾の声がして、やっと解放された。浩也は、これまでの緊張や恐怖、恥ずかしさが入り交じって感情がおかしくなってしまったようだ。ヒックヒックとしゃくりあげていれば、健吾の手が優しく抱き締めてくる。
「ごめん。オレが悪かった」
乱れた制服を直され、ティッシュで涙を拭われる。顔が怖いくせに、健吾の指は優しく、慰めてくれる声も優しかった。
「オレ。有村がオレの事怖くないって言ってくれて、すっげー嬉しかったんだ。おまけに、好きだって言ってくれて感動したんだ」
心底嬉しそうな健吾を見て、浩也はほんの少しだけ胸を痛めた。本当は怖かっただけなんて、言える状況ではなかった。
「あ、あの。いきなりは、その・・・」
ゴニョゴニョと口ごもる浩也に、健吾がニッコリと笑う。そして、ある提案をしてきた。
「有村が嫌がる事はしない。約束する。その代わり、健吾って呼んでくれないか?」
「え?」
キョトンとする浩也に、健吾が口早に説明する。
「ゆ、夢だったんだ。恋人ができたら、下の名前で呼び合うって。だから、俺も浩也って呼んでいいか?」
顔を真っ赤にして俯く健吾は、図体とのギャップがかなり凄かった。
「い、いいよ」
浩也の返事に、健吾がパッと表情を変えた。その笑顔に、浩也は深くにもドキッとしてしまった。

健吾は、浩也との約束をしっかり守っていた。同じ部屋にいても、指一本触れてはこない。最初はホッと安堵していた浩也だが、時々せつなそうな表情の健吾を見ると胸が痛い。悪い事をしていないのに、罪悪感が押し寄せる。
浩也は、できるだけ教室内では健吾と接しないようにした。
「有村。最近、猪熊と一緒じゃないんだな」
クラスメートの1人がヒソヒソと話しかけてくる。
「あ、うん。まぁ」
適当に濁せば、近くの生徒達がワラワラと寄ってきた。
「わかるわかる。猪熊って、居るだけで威圧感あんだよな」
「そうそう。違うクラスになりたかったよ」
「無愛想で、何考えてんだかわかんないんだよな」
「おまけにあの顔でお菓子倶楽部って。あれって女子ウケ狙ってんだぜ?ダッセー」
ゲラゲラ笑いながら、いつしか健吾への悪口へと変わっていた。健吾に対する偏見の言葉は、浩也にある感情を抱かせた。
(猪熊くんの事を何も知らないくせに!)
それは、怒りだった。確かに、健吾の外見は怖い。でも、彼の内面はとても繊細でデリケートなのだ。一緒に寝起きして、よくわかった。
「・・・勝手な事、言うな」
気が付くと、浩也はそう口走っていた。周囲の視線が一斉に浩也へ向く。
「健吾の事、何も知らないくせにっ」
「はぁ?有村はアイツの味方なわけ?」
「ひ弱なくせに生意気なんだよっ」
「ひ・・・っ」
誰かの手が襟首を掴もうとしたため、浩也は咄嗟に目を閉じた。が、何も起きない。
「?」
目を開けると、いつの間にか健吾が浩也を庇うように立っていた。今度は、周囲が青ざめる番である。
「文句があるなら、俺に言え」
健吾がそう言った瞬間。その場にいた全員が逃げ出した。
「ごめんね、健吾」
浩也が謝罪する。
浩也は、これまで自分が健吾の事を理解しようとしていなかったのだと感じた。彼を怖いと思うばかりで、全然その本質を理解してなかった。
(本当の健吾は、こんなに優しいのに。僕は・・・)
浩也は、自分の気持ちを正直に伝えた。健吾の事は好きだが、正直恋愛感情かどうかはわからないと。健吾は残念そうな顔をしたが、パッと明るくなった。
「だったら、これからオレの事を好きになる可能性があるって事だよな。キスは嫌じゃなかったろ?」
「え?」
「良かったぁ」
「え?」
なんだか、肝心なところにズレがあるような気がする浩也だった。
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