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勇者さん

勇者さん

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「勇者様?」

 ポカーンとする仲間の女魔法使い。勇者はスタスタと歩くと茶髪の女魔剣士に声を掛けた。

「あの、先程お会いした者なのですが」

「えっ?」

 女魔剣士は思わず声が出て勇者の方を振り返る。

「あ、申し遅れました。私は勇者をしておりますマスカルと申します」

「それはどうも。あぁ、さっきの人ですね?」

 覚えていてくれた事に勇者マスカルは心の中で狂喜乱舞していた。

「えぇ。先程のことも何かの縁です。もしよろしければお話ができれば良いなと思いまして」

「あ、あの、ラミッタさん。勇者マスカルって言ったらこの辺では有名な方ですよ!?」

「勇者ねー、勇者。あまり良くは分からないけど」

 天使の名はラミッタというのかとマスカルは思い、口にした。

「ラミッタさんというのですね。良いお名前です」

「はぁ、どうも」

 相変わらず、つれない感じだが、勇者だと分かった瞬間言い寄ってくる女達よりもマスカルには魅力的に映った。

「どうでしょう? 私がご馳走するのでお食事でも……」

「おーい、ラミッター」

 天使の名を呼ぶ不届きな男の声が聞こえる。そちらを見ると金髪のアホそうな顔をした男が居た。

「遅いわ、宿敵」

「悪い悪い、トイレが混み合っててな」

 天使は相手を宿敵と呼んでいた。どういうことだとマスカルは思う。

「あれ? そちらの方は?」

「勇者様だってさ」

「勇者!?」

 天使を呼び捨てにするこの男にも勇者の凄さは分かるのだなと胸を張る。

「どうも。勇者マスカルと申します」

「あぁ、それはどうも。私はマルクエンです」

 男の名前など、どうでも良かった。今はこの天使との関係性を知りたい。

「おまたせっスー!! って、どういう状況?」

 褐色肌の女は思わずそう言ってラミッタ、マスカル、シヘンを順に見た。

「ちょっとよく分からないことになったわ」

 ラミッタはため息を吐いて言う。持ってこられたお茶を見てマスカルは言い出す。

「少し、一緒にお茶をしませんか?」

「私は遠慮しておくわ」

「シヘン。この人は?」

 褐色肌の女はそう尋ねると、返事が出る。

「勇者マスカルさんです」

「ゆ、勇者マスカル!? 初めて見たっス!!」
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