32 / 241
異世界の日常
引っこ抜かれて
しおりを挟む
「ふーん……。どりゃ!!」
「ぬ、抜けた!!」
ラミッタも手下を引き抜いて、襲撃者の二人は自由の身となった。そして、マルクエンを見ると、シチに押し倒されている様な図だった。
「こ、この、ど、ド変態卑猥野郎!! 昼間っから何してんのよ!!」
「何って、何もしていないぞ!?」
いそいそとシチは立ち上がり、マルクエン達に捨て台詞を吐いていった。
「次は必ず下僕にしてあげるわ!! 体を洗って待ってなさい!!」
「いや、それ首を洗ってじゃないか?」
マルクエンのツッコミが届く前にシチと手下の二人は走っていってしまった。
その後は何事もなく、ヒョーウの街へ着いた。
「それじゃ早速、この街の冒険者ギルドへと行こうかしら」
少し疲労が溜まっているシヘンとケイを気に留めずに、ラミッタはズンズン歩いて行く。
「マルクエンさん、よく鎧を着て歩いて疲れないっスね……」
「えぇ、小さい頃から着させられていたので、それに常に筋力強化の魔法を使っていますから」
軽く笑うマルクエンだったが、とんでもない事を言った自覚は無いらしい。
「あんた達、遅い!!」
先に行っていた不機嫌なラミッタが言う。シヘンはおしゃべりは後でにしようと思った。
このヒョーウの街は交通の要で、先程居た街よりも更に活気がある。
「これだけ人が居れば、魔王の情報も集まりそうだな」
人混みを見てマルクエンが呟く。
「えぇ、そうね」
中央通りを歩き、一行はギルドへと着いた。中に入ると冒険者たちでごった返していた。
クエストの掲示板を見ると、EランクからAランクまで選び放題の状態だ。
ラミッタはAランクのミッションを好奇心で見てみるため、手を伸ばすと、誰かと手が触れ合った。
あっと手を引っ込め相手を見る。短めの茶髪をした、優男といった感じの男だ。相手はラミッタの顔をしばらく見詰め、はっと我に返る。
「おぉ、お嬢さん。失礼しました」
「いえ、こちらこそ」
そう短い会話を交わして、ラミッタはマルクエン達の元へと戻る。
「はぁ……」
先程ラミッタと手が触れ合った茶髪の優男が、ギルドの食堂でため息を付いていた。
「どうなされました? 勇者殿」
ガタイの良い男剣士が優男にそう言う。どうやら茶髪の男は勇者らしい。
「いや、ちょっとな」
「どうしたんですか? 勇者様らしくもない」
女魔法使いも普段の勇者らしくない男にそう言った。
「これは運命の出会いかもしれない……」
「運命ですか?」
困惑する男剣士、女魔法使いと顔を見合わせる。
そんな時だった。勇者は目を疑う。隣のテーブル席に先程の女性、いや天使が座った。
「あー、お腹はまだすかないけど、喉乾いたわねー」
「何か飲みましょうか? 私、アイスティーでも注文してくるっス!!」
「それで良いわ、お願い」
「了解っス!!」
褐色な肌の銀髪で、見たところ剣士だろうか? そんな女が奥へと歩いていった。
「疲れましたね、ラミッタさん」
「私はまだまだいけるわよ」
長いブロンドヘアの魔法使いであろう女が、天使の横に座る。
女性だけの冒険者パーティなのだろうか? 勇者は意を決して立ち上がる。
「ぬ、抜けた!!」
ラミッタも手下を引き抜いて、襲撃者の二人は自由の身となった。そして、マルクエンを見ると、シチに押し倒されている様な図だった。
「こ、この、ど、ド変態卑猥野郎!! 昼間っから何してんのよ!!」
「何って、何もしていないぞ!?」
いそいそとシチは立ち上がり、マルクエン達に捨て台詞を吐いていった。
「次は必ず下僕にしてあげるわ!! 体を洗って待ってなさい!!」
「いや、それ首を洗ってじゃないか?」
マルクエンのツッコミが届く前にシチと手下の二人は走っていってしまった。
その後は何事もなく、ヒョーウの街へ着いた。
「それじゃ早速、この街の冒険者ギルドへと行こうかしら」
少し疲労が溜まっているシヘンとケイを気に留めずに、ラミッタはズンズン歩いて行く。
「マルクエンさん、よく鎧を着て歩いて疲れないっスね……」
「えぇ、小さい頃から着させられていたので、それに常に筋力強化の魔法を使っていますから」
軽く笑うマルクエンだったが、とんでもない事を言った自覚は無いらしい。
「あんた達、遅い!!」
先に行っていた不機嫌なラミッタが言う。シヘンはおしゃべりは後でにしようと思った。
このヒョーウの街は交通の要で、先程居た街よりも更に活気がある。
「これだけ人が居れば、魔王の情報も集まりそうだな」
人混みを見てマルクエンが呟く。
「えぇ、そうね」
中央通りを歩き、一行はギルドへと着いた。中に入ると冒険者たちでごった返していた。
クエストの掲示板を見ると、EランクからAランクまで選び放題の状態だ。
ラミッタはAランクのミッションを好奇心で見てみるため、手を伸ばすと、誰かと手が触れ合った。
あっと手を引っ込め相手を見る。短めの茶髪をした、優男といった感じの男だ。相手はラミッタの顔をしばらく見詰め、はっと我に返る。
「おぉ、お嬢さん。失礼しました」
「いえ、こちらこそ」
そう短い会話を交わして、ラミッタはマルクエン達の元へと戻る。
「はぁ……」
先程ラミッタと手が触れ合った茶髪の優男が、ギルドの食堂でため息を付いていた。
「どうなされました? 勇者殿」
ガタイの良い男剣士が優男にそう言う。どうやら茶髪の男は勇者らしい。
「いや、ちょっとな」
「どうしたんですか? 勇者様らしくもない」
女魔法使いも普段の勇者らしくない男にそう言った。
「これは運命の出会いかもしれない……」
「運命ですか?」
困惑する男剣士、女魔法使いと顔を見合わせる。
そんな時だった。勇者は目を疑う。隣のテーブル席に先程の女性、いや天使が座った。
「あー、お腹はまだすかないけど、喉乾いたわねー」
「何か飲みましょうか? 私、アイスティーでも注文してくるっス!!」
「それで良いわ、お願い」
「了解っス!!」
褐色な肌の銀髪で、見たところ剣士だろうか? そんな女が奥へと歩いていった。
「疲れましたね、ラミッタさん」
「私はまだまだいけるわよ」
長いブロンドヘアの魔法使いであろう女が、天使の横に座る。
女性だけの冒険者パーティなのだろうか? 勇者は意を決して立ち上がる。
0
お気に入りに追加
44
あなたにおすすめの小説

リリゼットの学園生活 〜 聖魔法?我が家では誰でも使えますよ?
あくの
ファンタジー
15になって領地の修道院から王立ディアーヌ学園、通称『学園』に通うことになったリリゼット。
加護細工の家系のドルバック伯爵家の娘として他家の令嬢達と交流開始するも世間知らずのリリゼットは令嬢との会話についていけない。
また姉と婚約者の破天荒な行動からリリゼットも同じなのかと学園の男子生徒が近寄ってくる。
長女気質のダンテス公爵家の長女リーゼはそんなリリゼットの危うさを危惧しており…。
リリゼットは楽しい学園生活を全うできるのか?!
[完結]異世界転生したら幼女になったが 速攻で村を追い出された件について ~そしていずれ最強になる幼女~
k33
ファンタジー
初めての小説です..!
ある日 主人公 マサヤがトラックに引かれ幼女で異世界転生するのだが その先には 転生者は嫌われていると知る そして別の転生者と出会い この世界はゲームの世界と知る そして、そこから 魔法専門学校に入り Aまで目指すが 果たして上がれるのか!? そして 魔王城には立ち寄った者は一人もいないと別の転生者は言うが 果たして マサヤは 魔王城に入り 魔王を倒し無事に日本に帰れるのか!?

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました
ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

聖女は聞いてしまった
夕景あき
ファンタジー
「道具に心は不要だ」
父である国王に、そう言われて育った聖女。
彼女の周囲には、彼女を心を持つ人間として扱う人は、ほとんどいなくなっていた。
聖女自身も、自分の心の動きを無視して、聖女という治癒道具になりきり何も考えず、言われた事をただやり、ただ生きているだけの日々を過ごしていた。
そんな日々が10年過ぎた後、勇者と賢者と魔法使いと共に聖女は魔王討伐の旅に出ることになる。
旅の中で心をとり戻し、勇者に恋をする聖女。
しかし、勇者の本音を聞いてしまった聖女は絶望するのだった·····。
ネガティブ思考系聖女の恋愛ストーリー!
※ハッピーエンドなので、安心してお読みください!

原産地が同じでも結果が違ったお話
よもぎ
ファンタジー
とある国の貴族が通うための学園で、女生徒一人と男子生徒十数人がとある罪により捕縛されることとなった。女生徒は何の罪かも分からず牢で悶々と過ごしていたが、そこにさる貴族家の夫人が訪ねてきて……。
視点が途中で切り替わります。基本的に一人称視点で話が進みます。

【完結】拾ったおじさんが何やら普通ではありませんでした…
三園 七詩
ファンタジー
カノンは祖母と食堂を切り盛りする普通の女の子…そんなカノンがいつものように店を閉めようとすると…物音が…そこには倒れている人が…拾った人はおじさんだった…それもかなりのイケおじだった!
次の話(グレイ視点)にて完結になります。
お読みいただきありがとうございました。


聖女が降臨した日が、運命の分かれ目でした
猫乃真鶴
ファンタジー
女神に供物と祈りを捧げ、豊穣を願う祭事の最中、聖女が降臨した。
聖女とは女神の力が顕現した存在。居るだけで豊穣が約束されるのだとそう言われている。
思ってもみない奇跡に一同が驚愕する中、第一王子のロイドだけはただ一人、皆とは違った視線を聖女に向けていた。
彼の婚約者であるレイアだけがそれに気付いた。
それが良いことなのかどうなのか、レイアには分からない。
けれども、なにかが胸の内に燻っている。
聖女が降臨したその日、それが大きくなったのだった。
※このお話は、小説家になろう様にも掲載しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる