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願い
ライオンの尻尾①
しおりを挟む人様のプライバシーを侵害している気もして、これ以上想像しないように話題をさっさと戻す。
「あの、それよりもマッドリー侯爵たちが表舞台から退くことは決定したのでしたら、ご令嬢たちはどうなるのでしょうか?」
「罪状次第では場合によっては退学、たちが悪ければ修道院行きになるだろうな」
「そうですか……」
今日の放課後までは華やかにクラスに陣取ってちくちくと私をいびっていたのに、転落はあっという間だ。
あっけなさと複雑さとを同時に感じて、後味が悪いと少し虚しくなる。
選べないことや抗えないこともありながら、それでも無数の選択肢をそれぞれ選ぶことで己の今があるのだと改めて思った。
考え込むように眉を寄せた私に、アンドリューが探るように瞳を覗き込んできた。
「かわいそうだと思うか?」
「いえ、仕方がないことかと。能力を有していても家庭の事情や身分など学園で学べない者も多いのですから、光魔法などのレアな魔力といった例外とすべきものがないのでしたらそれも致し方がないことなのだとわかっています。それに普段から慎ましやかにしていた方でしたらまた心情も別なのでしょうが、親の権力ありきの行動をされていたので今回のことも粛々と受け止めるべきかと思います」
まるっとありのままを報告する。
どうせアンドリューは学園での出来事を知っているのだから、今更思っていることを話しても告げ口とはならないだろう。
冷たいのかもしれないが、学びたくても学べる環境にない人たちはたくさんいる。
同じ学園内でも家のレベルで服装や持ち物、そして個人で家庭教師がついていたかいないかでマナーや勉強の差が入学当初からはっきりとあるのだ。
学園で学ぶフィールドは平等に与えられていたとしても、飛び越えるハードルの差や高さには生まれ持った家柄や個人の能力の差に左右されてしまう。
その中でカルラは恵まれた環境で非常に優位な位置にいて能力も申し分ないのに、それを見せびらかし誇示することのほうが目に付いた。
それも努力といえば努力なのだろうけど、みんなが必死でハードルを越えている間に先に行っていたはずの距離を稼ぐことをせずゆっくりと歩いていた。
今では、カルラに引けを取らないところまで能力を伸ばした者もちらほら出てきている。
「そうか」
「はい」
じっと見つめられ、私は力強く頷いた。
ときに冷酷に物事を判断するアンドリューは、囲い込みや攻め具合が尋常ではないが私にはケアを怠らない過保護さまで見せる。
もしかしたら、今回の騒動で傷ついているのではないかと心配してくれているのかもしれない。
実際に学園や店のことは私も被害者側であったので、相手が落ちることに気落ちするのではと心配してくれているのだろう。
「まっすぐなティアは、たとえ確執があったとしてもクラスメイトを追い詰めることに落ち込むのではないかと危惧していたのだが」
予想は当たっていたようだ。
────俺様だけど、優しいんだよね。
だけど、嬉しいけれど少し複雑でもある。
確かに王子からすれば私なんてまだまだ甘ちゃんな部分が目立つのだろうが、身近にいたからといってすぐに気持ちを傾けるわけではない。
何が大事か、それくらいはわかっているつもりだ。それにそんなに柔ではない。
「そうなんですね。ありがとうございます。ですが、怪我をしたとかそういったことではないですし、本気でやり直す気があるのなら、どんな場所からでもやり直すことはできます。たとえ今の地位や生活に戻ってくることができなくても、魔獣がよく出る地域に放り込まれるとか命の危険に晒されるわけでもないのでしょう?」
さすがに命のやり取りが絡むと平静ではいられないがそこまでのことにはならないみたいだし、因果応報なのではと思う気持ちのほうが強い。
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