【本編完結】自由気ままな伯爵令嬢は、腹黒王子にやたらと攻められています

橋本彩里(Ayari)

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諸問題

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「諸々の問題は片付いたのでしょうか?」

 有言実行のアンドリューが最後までもらうと宣言するからには、王子が問題視していた諸問題とやらは片付いたとは思うのだけど、詳しく説明してくれたっていいのではないだろうか。
 なにより、心の準備の時間がほしい。そのためにも、説明よろしくお願いします!

「ああ。汚職や横領の証拠は出揃った。今ごろ慌てふためいているころだろう。ただ、政界のバランスを考えると侯爵家を取り潰すことはできないが、一部領地の没収と侯爵位は弟が継ぐことになるだろうから確実に力は弱まる」
「王妃様と縁があると聞いていますが大丈夫なのでしょうか?」
「曽祖父が従兄弟同士と、系譜を辿れば力を持つ貴族は繋がっているものだ。ただ、母と面識があるだけに大きな顔をしていたが、特に恩があるだとか公務以外で親しくしていたとかではないから問題ない。そもそも、過去の威光や縁だけで成り立つような仕事の仕方をするような者が中枢でいつまでものさばっていては国が衰退してしまう」

 そのあとの説明で、この一か月、侯爵家含む古狸を一掃すべく動いていたと教えてくれた。
 ただ簡単に排除すればいいというわけではないので、以前から目星をつけていた後釜とも交渉した上での実行だったようで、強引に進めた部分もあるので王子自身が対処することも生じ多忙を極めていたようだ。

「どうしてそんな急に?」
「ティアへの危害があのままエスカレートすることも危惧していたし、もともとどうにかしようと動いていたところだった。ならさっさと終わらせようと少しばかり早めたから、バタバタした感は拭えないが。わかっていると思うが、噂もその一環で何もやましいことはない」
「はい。わかっています」

 信じていたけれど、不安はあったのでこうしてはっきり告げてもらえて私の口元は綻んでしまう。
 それを見たアンドリューが、私の頬を撫で耳をくすぐりわしゃわしゃと頭を撫でてきた。
 焦がれていた大きな手と温もりが気持ちよくて、さらに表情が緩んだところで額に労わるようなキスを受けた。

「心配はかけたようだな」
「いえ。こうして話していただけただけで十分です。先に教えていただけなかった理由もあるのでしょうし」

 うんうん、と頷いていると、「まあ、そうだな」とじっと私を見つめ、にやっと笑う。
 その表情はどういった意味なのかと問いかける前に、アンドリューが話を続けた。

 アンドリューの説明では王子に纏わる噂の放置も予定通りで、そのお相手はラシェル・ウィンナイトの恋人にお願いしたようだ。
 なんでも、彼女は化粧がとてもうまく人に与える印象を変えることができ、普段とはまったく印象の違う目の引く美人に扮してもらい、敢えて人目のある場所で行動していたようだ。

「えっ!? それっておい」
「おい?」

 名前と特徴を聞いて興奮してしまい、慌てて口を閉じる。思わず、美味しい組み合わせと言ってしまうところだった。
 ぱあっと上がった気分を表に出さないように、小さく咳をしてごまかす。

「こほっ。すみません。ヴィア姉さまのように学園当時のカップルが身近におられるのが不思議というか新鮮に感じたので」

 確か彼女は乙女ゲームに出てきたヒロインの巻き込まれモブであったずだ。モブの中で一番振り回されてかわいそうな立ち位置の人。
 当時、お騒がせヒロインのそばにいることはとてつもなく大変だったことだろう。

 へぇー、ほぉー。そこがくっついたんだ。
 こんなときなのにちょっとニマニマしてしまう。

 ゲーム設定でも現実でも、遊び人であったラシェル。
 定番といえば定番であるが、実は心底女性が嫌いなラシェルの根は深く、すっかり憑き物が落ちたような今のラシェルを更生するまでの過程だとか、その相手がヒロインの迷惑を多大に被ったモブというのは好奇心が擽られる組み合わせだ。

「ティア。余計なことを考えているだろう?」
「……いえ」

 余計なことではない。これは感動しているだけのはず。

「なんだ、その間は」
「ただ、ウィンナイト様のお相手に興味がありまして。化粧が上手だとか、女性にとっては気になります」
「ふ~ん?」

 相変わらず、アンドリューは鋭い。
 だけど、こればっかりは正直に伝える気はない。お口にチャック案件だ。

 さすがにどのようにして遊び人の心を射止めたのか知りたいとか、下世話すぎると思うし。
 しかも私の場合は、実際ゲーム画面の絵面が浮かんでいて余計にタチが悪いというか、あっちのシーンもあくまでゲームのヒロインとだけど想像ができてしまうのも非常に居心地が悪かった。


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