【本編完結】自由気ままな伯爵令嬢は、腹黒王子にやたらと攻められています

橋本彩里(Ayari)

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不調と新たな問題

新たな問題③

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「殿下も情報提供していただいたとか?」
「大事な婚約者に何かあってからでは遅いからな。常に目は光らせてある。今回のことは商会の執拗さとこちらの情報がうまくリンクした結果だな」
「そうですか。ありがとうございます」
「当然のことだから、礼などいらない」

 なんてことはないとばかりに告げられる内容。
 アンドリューに大事にしてもらっていることはわかっていたつもりだったけれど、知らず知らずにいろいろな形で守られていることを痛感する。

 そして、こうした一面を見ると、どこか遠い人のように感じることがあった。
 堂々としたその姿は、王子の意に沿うよう動く手足が多く存在し、命令し従わせることが当然で、改めてピラミッドの上に立つ立場の人であるのだと実感する。

 本来ならば田舎の伯爵令嬢ごときには、尊く気高く手の届かない人だ。
 だからと言って距離を取りたいと思うことはないし、普段二人きりでは見せない為政者の面はひどくどきっとするものだった。

 のんびりとした土地で過ごしてきた私からすれば、人を当然のように使う姿は怖いけれど頼りになる。
 ある意味傲慢なそれが王子の身を守るものでもあり、そうした相手の横に立つという怖さも同時にあった。

 常にアンドリューのそばは何かと私の心を騒がせる。
 自分の婚約者が改めてすごい人であることに高揚する気持ちをふぅっと息を吐き落ちつかせ、今はお店の嫌がらせのことが先だと思考を戻した。

「調査した結果、私に連絡が来たということは、お店をというよりは私が対象ということね?」
「お嬢様には敵わないですね。ごまかしても仕方がないのでいいますが、半分はそうでしょう」

 半分、ね。

「そう。やっぱり田舎の伯爵令嬢が殿下の婚約者にふさわしくないとの抗議かな」
「抗議というほど可愛らしいものではありませんが、その線が濃厚でしょう。ロードウェスター伯爵領の評判、そしてお嬢様名義の店の評判を落とすことが目的なのでしょう」
「ふーん。そういったやっかみや嫌がらせの可能性は視野には入れていたけれど、実際されると気分はよくないわ」

 あと、巻き込んでごめんね、と謝ると、リヤーフがぶふっと噴き出す。

「愁傷なお嬢様はどうも慣れないのでやめてください」
「失礼ね」

 心配しているのに本当に失礼だ。

「お嬢様はお嬢様らしく野菜たちとのびのびと楽しくしていただけたらそれでいいんです。今回のことは、殿下の存在が大きな要因ではあります。ですが、単純に私たちが出てきたことが面白くないと思っている南部の貴族は多くおりますので、遅かれ早かれ、お嬢様が関わずとも我々が王都で商売するにあたって洗礼は必ずあるものでした。ですから、自分のせいなどと気になさらないでください」

 南部に足掛かりができただけでもめっけもんであり、こうして目の敵にされるのは私のことがなくても一緒であったと。
 むしろ、王太子殿下の婚約者である私が関わることで大物が釣れるので、それ相応の準備と労力は大変であるがその対価に満足していると続けて説明される。

 その言葉に、どっと力が抜けた。
 そういえば、リヤーフは面白いことに食いつくのも早く、商売に繋げるのもうまい人であったと思い出す。でないと、当時は未知であった動く野菜との商売に飛びつくはずがない。

 隣で私たちの会話を聞いていたアンドリューが、そっと私の腰を抱き寄せてきた。
 見上げると、包み込むような広大な空の色が優しく私を見下ろしていた。逞しい腕と力強さに、気持ちがどんと広がったような気分になる。

 頼もしい商売の相棒と恋人に支えられ、ふふっと笑いを漏れた。
 商品に関しては思いつく限りの対策を立ててあるし、品質には自信がある。そして、この二人が堂々としてくれているので、なんとかなるという気持ちのほうが強い。
 気負いなく話を聞ける環境に、私は素直に感謝した。

「ありがとう」
「いろいろ嫌がらせをされてきましたが、そこはきっちりと倍返しをさせていただきましたから、お嬢様が心配されることはありませんから」

 聞けば、さっきの茶葉も勝手にライバル認定され嫌がらせをしてきたある貴族御用達の店が関係しているようで、しっかり裏を取り脅し……違った交渉の末、以前から狙っていた茶葉の交渉権を手に入れたそうだ。
 ただでは起きないリヤーフである。

「商売はリヤーフがいれば今後もうまく行く気がするわ」
「声をかけてくださったお嬢様を裏切ることは絶対いたしませんよ。商売人はシビアですから金の切れ目は縁の切れ目となりますが、恩は絶対に忘れません。我ら商会は、お嬢様に忠誠を誓っておりますのでどんと任せてくださればいいのです。なによりお嬢様との時間はほかに類を見ないほど有益ですから、こちらも利がたくさんありますので気にしないでください」
「ああ、ティアの大切なものを守るようこれからも頼む」

 リヤーフのその言葉に、私ではなくなぜかアンドリューが深く頷いたのだった。



✽.。.:*·゚ ✽.。.:*·゚ ✽.。.:*·゚ ✽.。.:*·゚ ✽.

今年は皆様の応援のおかげで書籍になるという夢が叶い素敵な一年となりました。
ありがとうございます!!
皆様良いお年をお迎えください。

下記は友人絵師kouma.のバナナアート隊長です。
Xにて紙本とともにあげてくれたものですが、バナナアートォォとテンション上がりこのフォルムに癒やされましたので興味ある方は是非♡
可愛くてほこほこします♪


↓↓


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