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婚約と俺様王子
婚約者から目が離せない sideアンドリュー
しおりを挟むアンドリューは一連の流れにぽかんっと目を見開き、ドビューンとばかりに走り去っていったフロンティアの後ろ姿に、堪えきれずに笑いを漏らした。
いっぱいいっぱいで涙目になって睨みつける様は、アンドリューからすれば子猫が威嚇する可愛らしい程度のもので、捨て台詞を吐きながらも律儀に護衛に礼をしていくところなどもツボだ。
「くっ、くくっ」
婚約者の行動が可愛くておかしくて、何をしても和ませてくれるフロンティアが愛しくて、いつも気持ちが温かくなる。
「お引き留めしなくてよろしいのですか?」
「あの調子だと伯爵領に行くだろうな」
表情豊かな婚約者はわかりやすい。
「許可されるので?」
「ああ。引き続き彼女の周囲を警戒していてくれ」
「わかりました」
影の護衛の声にアンドリューは頷き、見えなくなったフロンティアの姿を追うように目を細めた。
大事に大事に仕舞い込みたい気持ちと同時に、自由に動き回る彼女を見るのも楽しくてもっと自由にしてやりたいとも思う。
だけど、フロンティアは一度夢中になればアンドリューのことは二の次になりがちだ。
それが悪いとは言わない。
アンドリューも立場上フロンティアばかりに時間を割けないし、この先の自由を確保するために今忙殺されても必要なことはすべきなのでそのために動いている。
だけど、あまりに放ったらかしにされているのではと思える言動に、いつもフロンティアに振り回されている気分になった。
野菜たちに妬くというのは心情に的確な言葉ではないが、面白くないと思っているのは本当だ。
今はしっかりと気持ちがこちらに向けられていることがわかるからこそ、そういうふうに見せることでフロンティアを揶揄っているが、当初は本気でひっぺはがしてやろうと思ったことは何度かあった。
それをしなかったのは、フロンティアが大事にしているから。
自分が大事にしている彼女の大事なものを守るのは、男としては当然のことだ。
ようやく少し気持ちに余裕が出てきて、フロンティアも己を受け入れてくれているのに、彼女のすべてを奪えないのはある意味非常につらい。
触れればとろける相手を前に、自制心を試される日々である。
「本当、ティアは飽きさせてくれない」
求める分だけ返そうとしてくれる彼女が健気で愛おしいと思う。
だからこそ、フロンティアに言ったように今すぐすべてを自分のものだと奪ってしまいたい気持ちが増していくとともに、そうすべきではないとブレーキがかかる。
「彼らの動きは?」
「水面下で動いているようですが、尻尾を出しません」
「そうか。そちらも引き続き調査を」
「承知いたしました」
学園での様子も報告が上がっている。
彼女を傷つけようとする者は容赦しないつもりだし、いつでも介入できるようにはしている。
姉のシルヴィア経由でフロンティアの心情とともに伝わっているからこそ今は様子を見ているが、彼女自身があまり気にした様子もなく、本人が解決していくことも多かった。
それもまた未来の王妃に必要な資質でもある。簡単に手を差し伸べていては意味がないとわかりつつも、報告が上がるたびにやきもきする。
自分のことなら気にならないのに、フロンティアのことになると感情が乱される。
乱されたあと、彼女の軽快な行動や可愛らしい言動に癒やされる。心配ではあるとともに、フロンティア自身の力を信じたい気持ちも増していく。
「しっかり痕も付けたし、しばらくはまた様子見だな」
フロンティアと一緒にいると様々な感情の揺らぎを感じ、アンドリューはそのすべてが愛おしいと思うのであった。
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