【本編完結】自由気ままな伯爵令嬢は、腹黒王子にやたらと攻められています

橋本彩里(Ayari)

文字の大きさ
77 / 166
婚約と俺様王子

婚約者から目が離せない sideアンドリュー

しおりを挟む
 
 アンドリューは一連の流れにぽかんっと目を見開き、ドビューンとばかりに走り去っていったフロンティアの後ろ姿に、堪えきれずに笑いを漏らした。
 いっぱいいっぱいで涙目になって睨みつける様は、アンドリューからすれば子猫が威嚇する可愛らしい程度のもので、捨て台詞を吐きながらも律儀に護衛に礼をしていくところなどもツボだ。

「くっ、くくっ」

 婚約者の行動が可愛くておかしくて、何をしても和ませてくれるフロンティアが愛しくて、いつも気持ちが温かくなる。

「お引き留めしなくてよろしいのですか?」
「あの調子だと伯爵領に行くだろうな」

 表情豊かな婚約者はわかりやすい。

「許可されるので?」
「ああ。引き続き彼女の周囲を警戒していてくれ」
「わかりました」

 影の護衛の声にアンドリューは頷き、見えなくなったフロンティアの姿を追うように目を細めた。
 大事に大事に仕舞い込みたい気持ちと同時に、自由に動き回る彼女を見るのも楽しくてもっと自由にしてやりたいとも思う。

 だけど、フロンティアは一度夢中になればアンドリューのことは二の次になりがちだ。
 それが悪いとは言わない。

 アンドリューも立場上フロンティアばかりに時間を割けないし、この先の自由を確保するために今忙殺されても必要なことはすべきなのでそのために動いている。
 だけど、あまりに放ったらかしにされているのではと思える言動に、いつもフロンティアに振り回されている気分になった。

 野菜たちに妬くというのは心情に的確な言葉ではないが、面白くないと思っているのは本当だ。
 今はしっかりと気持ちがこちらに向けられていることがわかるからこそ、そういうふうに見せることでフロンティアを揶揄っているが、当初は本気でひっぺはがしてやろうと思ったことは何度かあった。

 それをしなかったのは、フロンティアが大事にしているから。
 自分が大事にしている彼女の大事なものを守るのは、男としては当然のことだ。

 ようやく少し気持ちに余裕が出てきて、フロンティアも己を受け入れてくれているのに、彼女のすべてを奪えないのはある意味非常につらい。
 触れればとろける相手を前に、自制心を試される日々である。

「本当、ティアは飽きさせてくれない」

 求める分だけ返そうとしてくれる彼女が健気で愛おしいと思う。
 だからこそ、フロンティアに言ったように今すぐすべてを自分のものだと奪ってしまいたい気持ちが増していくとともに、そうすべきではないとブレーキがかかる。

「彼らの動きは?」
「水面下で動いているようですが、尻尾を出しません」
「そうか。そちらも引き続き調査を」
「承知いたしました」

 学園での様子も報告が上がっている。
 彼女を傷つけようとする者は容赦しないつもりだし、いつでも介入できるようにはしている。

 姉のシルヴィア経由でフロンティアの心情とともに伝わっているからこそ今は様子を見ているが、彼女自身があまり気にした様子もなく、本人が解決していくことも多かった。
 それもまた未来の王妃に必要な資質でもある。簡単に手を差し伸べていては意味がないとわかりつつも、報告が上がるたびにやきもきする。

 自分のことなら気にならないのに、フロンティアのことになると感情が乱される。
 乱されたあと、彼女の軽快な行動や可愛らしい言動に癒やされる。心配ではあるとともに、フロンティア自身の力を信じたい気持ちも増していく。

「しっかり痕も付けたし、しばらくはまた様子見だな」

 フロンティアと一緒にいると様々な感情の揺らぎを感じ、アンドリューはそのすべてが愛おしいと思うのであった。


しおりを挟む
感想 453

あなたにおすすめの小説

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

愛されない王妃は、お飾りでいたい

夕立悠理
恋愛
──私が君を愛することは、ない。  クロアには前世の記憶がある。前世の記憶によると、ここはロマンス小説の世界でクロアは悪役令嬢だった。けれど、クロアが敗戦国の王に嫁がされたことにより、物語は終わった。  そして迎えた初夜。夫はクロアを愛せず、抱くつもりもないといった。 「イエーイ、これで自由の身だわ!!!」  クロアが喜びながらスローライフを送っていると、なんだか、夫の態度が急変し──!? 「初夜にいった言葉を忘れたんですか!?」

婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?

こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。 「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」 そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。 【毒を検知しました】 「え?」 私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。 ※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

お嬢様はお亡くなりになりました。

豆狸
恋愛
「お嬢様は……十日前にお亡くなりになりました」 「な……なにを言っている?」

結婚して5年、冷たい夫に離縁を申し立てたらみんなに止められています。

真田どんぐり
恋愛
ー5年前、ストレイ伯爵家の美しい令嬢、アルヴィラ・ストレイはアレンベル侯爵家の侯爵、ダリウス・アレンベルと結婚してアルヴィラ・アレンベルへとなった。 親同士に決められた政略結婚だったが、アルヴィラは旦那様とちゃんと愛し合ってやっていこうと決意していたのに……。 そんな決意を打ち砕くかのように旦那様の態度はずっと冷たかった。 (しかも私にだけ!!) 社交界に行っても、使用人の前でもどんな時でも冷たい態度を取られた私は周りの噂の恰好の的。 最初こそ我慢していたが、ある日、偶然旦那様とその幼馴染の不倫疑惑を耳にする。 (((こんな仕打ち、あんまりよーー!!))) 旦那様の態度にとうとう耐えられなくなった私は、ついに離縁を決意したーーーー。

「お前との婚約はなかったことに」と言われたので、全財産持って逃げました

ほーみ
恋愛
 その日、私は生まれて初めて「人間ってここまで自己中心的になれるんだ」と知った。 「レイナ・エルンスト。お前との婚約は、なかったことにしたい」  そう言ったのは、私の婚約者であり王太子であるエドワルド殿下だった。 「……は?」  まぬけな声が出た。無理もない。私は何の前触れもなく、突然、婚約を破棄されたのだから。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。