【本編完結】自由気ままな伯爵令嬢は、腹黒王子にやたらと攻められています

婚約と俺様王子

次の段階②

　
「ひぇっ」
「煽るなって言っただろう」

　やっぱり相手は一筋縄ではいかないエロ王子。
　慌てて離そうとした唇は、追いかけられあっさりと奪われる。

　頬を撫で、私の身体の上を滑らせる不埒な手は労わったり、エロかったりと、どっちつかずの感覚に翻弄される。
　口づけだけは相変わらず情熱的で、唾液とともに混ぜるように舌を動かされ、溢れるものを嚥下させられる。

「……んっ、んくっ」
「えらいな。ほら、もっと口を開けろ」

　言葉は俺様なのに優しく唇を舐められると、素直に開いてしまう。

「……ん、……」
「ふっ。舌、からませて」

　言われるままに、一生懸命にアンドリューの舌に絡ませる。
　互いに動くそれは自然と一体化するかのようにどちらからともなく当たり前のように絡まり合い、溢れる唾液もこぼしては駄目なのだと舐めとり飲まされた。

　散々貪ったあと、ちゅっ、ちゅっと唇が下りていき感じるところを吸い付かれ、手も優しく淫らに私をじわじわと感じさせていく。
　少しばかり私より低い体温の長い指が、確実に私の感じる場所を暴いていく。

　次の段階だと今までしたことのないことまでされ、恥ずかしいけれど求められることには嬉しくて、どちらからともなく唇を合わせた。
　互いに絡めとり、つぅっと糸を引いていくものがぷつっと切れて我に返る。

　アンドリューにも自分で気持ちよくなってほしくて行為をそのまま受け入れていたけれど、少し冷静になった今は何もかも恥ずかしくて、今になって私はかかかぁっと顔を熱くなっていく。
　最中の自分もなかなかエロいのではと思う。

　感じる王子の吐息にドキドキとしたし、求められる強さに感じ、名前を呼ばれながら互いに満足するとかすっごく恥ずかしい。
　かっかするなか、ひどく満ち足りたアンドリューの顔が近づき額にキスを落とされる。

「とても気持ちが良かった」
「…………っ」

　その言葉は単純に行為だけの話ではなく、私のアンドリューに向ける気持ちにも触れているのだろう。
　とろけるような顔で優しくキスされては、もう完敗だった。

　またしようと、にっと笑いながら告げられて肯定も否定の言葉も出なかったが、それも嬉しそうな笑顔で頭をよしよしとされるままなのは承諾しているのと一緒だった。
　その後、すごくご機嫌なアンドリューに散々甘やかされ、ときにエロモードで攻められ、帰りの馬車でもノリノリな王子に振り回された。

「くっ。ティア、すごくおもしろかわいい顔してる。もっと構いたくなるだろう」

　上機嫌なアンドリューに私もついつい頬が緩みそうになるが、あれからずっと離れようとしない。
　ついでに悪戯をしかけてくるアンドリューに、私はとうとう根を上げた。

「アンディっ！　確かに私はアンディに応えたいって思いましたが、限度というものがあるんです」

　寝室でのことに比べたら軽いスキンシップの部類ではあるのだけれど、もう耐え切れない。
　座る座らないの攻防の末、今もアンドリューの膝の上に乗せられて見つめ合っているだけ。ただ、少しも視線を外すなと言われているだけ。

　今日は私のことを大事にしてくれているのがさらにわかって嬉しかったし、ずっと不安だったものが解消されて気分は晴れやかだった。
　やりすぎエロすぎと思っても嫌いになれず好きではある。

　でも、今日は思い出すことが多すぎて、あれやこれやの羞恥にじっとアンドリューを見つめ合っているだけでも苦行である。
　それをわかって要求してくるのだから、アンドリューはやっぱり意地悪であるし俺様だ。

　かたん、という音とともにいつも送ってくれる場所についたことがわかると、意識がそちらに向いた瞬間を狙って私はひょいっと王子の膝から下りドアの付近まで逃げた。
　ふぅっと息を吐き出し、精一杯の抵抗で睨みつける。
　上気して熱いままの頬だとか、いっぱいいっぱいで涙目になっているのは気にしていられない。

「一度、田舎に帰らせてもらいます！」

　こんなエロエロモードじゃなくて、ほっこりさせてーっと、まるで熟年夫婦の捨て台詞みたいなことを吐いて、私は送られた馬車から飛び降りた。

　隊長～。シュクリュ～、お野菜、果物たち～。
　頼りになる私の癒やしぃぃぃぃ～～。

　エロのキャパが限界だと、癒やしを求めて一度伯爵領に戻ることを決め、いつも警護してくれる護衛に頭を下げると、私はずももももーっと走り出した。