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婚約と俺様王子
俺様王子に捕まりました②
しおりを挟む「ティア」
反応のない私に焦れたのか、王子が笑いながらも声を潜めて先を促す。
ついでに、もう反対の耳をかじっと噛んでいく。手を抜くことを知らないらしい。
「は、はじめてっ。殿下しか知らないし余裕なんてない、です」
「そのわりには慣れてる?」
だから、さっきからその余計な疑惑をかけてくるのはなんなのか。
本気でそう思っているわけではないだろうけれど、散々私を振り回す目の前の王子に言われるのは面白くない。
「慣れてないっ、です。本とかでどうするか知ってる、だけ」
「ああー、なるほど。ティアの知識の幅には恐れ入るが、こっちの勉強は俺としような」
声だけで、その瞳に見つめられるだけでドキドキする。
アンドリューは満足したように微笑み、私の唇を親指でなぞると、そのままぐいっと指を口に突き入れてきた。
舐めろ、とばかりに舌の上にこすりつけ、今度は人差し指も突き入れて私の小さな舌を引っ張り、こねくり回す。
「ひっ、んんーっ」
たかが指。だけど、アンドリューにされていると思うとおかしな気分になってくる。私はもうわけもわからず首を振った。
王子の話や「こっちの勉強」なんてとんでもないことを言われているとわかるのだが、意味を理解する余裕がない。
「ほら。ティアはもう俺の婚約者だろ? 俺のものだ。こういうことができるのも俺だけ。俺のっていってごらん?」
「……んんっ」
耳元でささやかれ、口づけでとろかされ鼻にかかった声が漏れる。
「ティアは誰の?」
「で、でん、かの」
「そう。いい子だ」
熱い吐息とともに褒められ、するりと頬を撫でられ私の様子をじっと見つめてくる。
じわりと溢れる涙を目に溜めて、男の色気を全開に出した美しい顔立ちをぼんやりと視界に入れていると、ぐいっと顔を上げさせられた。
必然的に喉奥が開きそろりと入ってきた舌がゆっくりと口内を這い回り、奥までねっとり舐められる。
苦しげな声を喉奥で上げるも、容赦なく蹂躙される。
キスはこれまでに散々されてきた。なんとか、私は溢れ落とされる唾液をこくりと飲み込んだ。
自分のもの以外のものが、体内に入ってくる。じっと見つめられる熱と、食い尽くそうとばかりに獰猛な気配に、ぞわぞわと内側から何かが這い上がってくる。
耐え切れずアンドリューにしがみつくと、じゅるっと唾液を吸いながら追い上げられた。
「んぁ……」
「ティア、可愛いな。もっと奪っても?」
それと同時に、首筋に浮いた汗をぺろりと舐められて、一気に恥ずかしさがこみ上げてきた。
一度突き放そうとしたが、悠々と笑みを浮かべたアンドリューには通じず、その後の攻防もものの見事に完敗。
なんとか、「無理ですぅぅ~っ」と、思わぬところに伸びてこようとした手に、これ以上はもう心臓が爆発しそうだと王子を今度こそ押しのけると、私は全力で逃げだした。
片方靴が脱げてしまったが、気にしていられない。
「やばいよ~、やばい~。なんであんなにエロいの~っ! しかも外なのにぃぃぃ」
命令口調がとても似合う意思の強さが宿る澄み渡る空のような瞳に見つめられ、うっかりキュンってしそうになった。ていうか、した。
好きだと言われ、婚約をも考えるほど真剣なものと伝えられ、いつかはそうなる覚悟もうっすらとはしてはいたが、そのいつかは今ではない。
もう少し時間をくれてもいいのでは? 予告もなく急な対応はできません。
やっぱり無理だぁー。まだ覚悟なんてできてないっ!
というか、どうやってすればいい?
私の脳内は忙しい。
だって、乙女ゲームでは愛を免罪符にどこでも盛って本気になったアンドリューの相手は羞恥まみれになるんだよ?
どこでもってことは、今日みたいに外も多いってことで……。
そこまで考えて、私の顔はぼふんっと急激に熱くなった。これ、元に戻らなかったらどうしようってくらい熱い。
さっきまで何度か熱いと感じたけど、それもこれもすべて容赦のいない俺様王子のせいだ。
誰が来るかもわからない外とか、羞恥という言葉で片付けられないくらいひぇーっと叫びだしたくなるほどだ。
現実の王子の攻め具合やオズワルドの姉への態度を見ても、閨関係の情報はゲームと大差なさそうなのも、また追い討ちをかける。
や、やばいっ。本格的にやばい。
すぐそばで猛獣に様子を見られている感じは心臓に悪すぎる。
熱烈に求められて愛されて羨ましいって思っていた前世の私は、なんてお気軽だったんだ。
欲望を向けられてもキュンっとしすぎている事実とかも、そわそわと落ちつかない。
信じられないくらい鼓動が速いし、初めてだらけのことなのに外って手加減を知らない王子にもの申したい。
────一度、休息を、退避を、させていただきたいです!
初心者にはハードル高すぎます。
※次ページはkouma.イラスト(ティア×アンドリュー)です。
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