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魔力検証
隊長の計らい②
しおりを挟むさらに私たちに良く見えるような配置で人参やナス、キュウリといった野菜たちが並んでいる。
小さい野菜果物はポヨンポヨン部隊の上に乗って同じような体勢だ。
目の前で、リボンとともに隊長がゆっくりと左に腰を振る。
それが合図だったようで、あっ、と思ったときには、ジャァァァーンッとギターの音が響き渡った。
ひらりひらりと花びらが舞い散り、見上げれば底抜けに美しい青空が広がるなか、お祝いだーっとばかりに踊らない野菜たちが色とりどりの花びらを撒き散らす。
ついでに絹さやが飛んでいるのは、もう気にしないことにする。
散る花びらも鮮度を保たせ商品にすると企画が上がっており、すでにある程度の品質まで出来上がっているのか鮮明な赤やピンク、黄色や白ととても綺麗である。
奏でられる音楽に合わせて、野菜たちが合わせて踊っていく。
「ラインダンスだな」
「はい。揃っていてとても上手です」
しかも、可愛すぎるっ!!!!!!
私は食い入るように見つめた。野菜のダンス。フォルムといい野菜がって思うだけでじんわりくるものがある。
同じステップを踏んでいく野菜たち、合わせているところと野菜によってはパートで踊りが違い、どこを見ても全体として見ても非常に楽しいものとなっていた。
野菜たちの背丈や色ごとにわけて、パートや配置が見事で、テンポの良いリズムに合わせて綺麗に足が上がっていく。
メロンなどのポヨンポヨン部隊の上で、トランポリンのように飛び上がってはイチゴなどの小さな果物たちが同じようにちょいっと足を上げていた。
エリンギやシイタケたちもてぃてぃと踊っているが、ところどころ怪しいフォーメーションが見え隠れしている。あとで厳重注意だ。
みんな可愛いが、完成度といえば一番綺麗に揃っているのは大根だろうか。
足の長さもあるので上へキックが揃っていてさらに綺麗に見える。隊長には言えないけれども。
これはリヤーフが食いつきそうな催しになりそうなほどレベルが高い。
露店を出している商会の者がこれを見ているから、きっとすぐに話がいくことだろう。
野菜っていうだけで宣伝できるし贔屓目なしでも可愛いはずだ。女性子供受けは抜群なのは素人目で見てもわかる。
ぜひ、野菜たちの素晴らしさや美味しさだけでなく、伯爵領の野菜たちの慈愛に触れてほしいと思う。
テンポを作るドラム担当はジョンのようだ。
足元で足踏み人参が足を踏むのに合わせて、太鼓を叩いている。きっと練習中もずっと足を踏まれていたに違いない。
舐められてはいるが、野菜たちもジョンが気に入っているからこそ絡みにいっているのでそこはそこでうまくいっている、はずだ。
ジョンもああ見えて魔力値は低いが繊細な魔法は得意なので、眉尻を下げながらも風で音を運んだりといろいろな魔法を駆使している。密かに優秀なのだ。密かに、だが。
隊長たちが、右手左手を順に前に出し、次に腰辺りに手を当ててお尻を振る仕草を見せたり、頭に手を添えて葉を盛大に振り回しながら、移動していく。
思わずこちらもリズムに乗ってしまいそうになるほど、楽しそうに踊っている。
「ふふっ」
自然と笑みが漏れた。こちらに向けて手を突き出してふりふりと小さな手を振っている姿が、ふよふよにやにやしてしまうほど可愛い。
王子やほかの観客がいなかったら、きゃっきゃとその場で飛び上がっていたかもしれないくらい興奮する。萌えだっ!! 癒やしだっ!!
伯爵領すべてがほっこりと慈愛の気持ちに包まれていくようで、気持が明るくなっていく。
見事なラインダンスが終わり、野菜たちが頭を下げると盛大な拍手に包まれる。
「みんな素敵なダンスをありがとう。とっても楽しかったわ」
そう告げると、誇らしげに頷いたり、ぴょんぴょんと飛び上がったり、ハイタッチしたりと嬉しそうに動く野菜たち。本当に尊い。
その最中、とてとてと隊長、そして副隊長カブ、美脚大根が私の前へとやってきた。
副隊長の手にはバケツ、美脚大根の手には小さな袋がある。
「ほぉ」
相変わらず察しのいいアンドリューが声を上げたが、私にはバケツの中身が例のシュクリュのよだれかもくらいしかわからない。
「隊長?」
丸いフォルムに白いボディがいつにも増して輝いて見えるのは、ラインダンスを見事にやりきったあとだからだろうか。
見上げてくる隊長に、私は視線を合わせるようにスカートを膝裏に入れて屈み込んだ。
ゆらっと葉っぱがそよぎ、隊長がさらに一歩近づいてくる。副隊長カブと美脚大根が差し出したそれらを受け取った隊長が、今度は私に差し出した。
シュクリュが受け取れとばかりに『わふっ』と吠え、鼻でつんつんと私を押す。
「ありがとう」
手を伸ばして受け取ったバケツの中は、ちゃぽんっと揺れるよだれ。そして、袋の中は野菜の種である。
「もしかして?」
はっ、として隊長を見ると、そうだ、とばかりに頷く。
以前、王都での野菜販売に関しては次の展開は待てと言われていたが、シュクリュのよだれと込みでこれを王都で試せってことだろうか?
このこともあって、シュクリュによだれ交渉していたと?
「隊長ぉぉぉ~」
尊すぎない?
私の大事なお野菜。めっちゃ尊いです!!
私はバケツを置き、隊長を抱きしめた。
初めての遭遇時に脱走されたときはどうしようかと思ったけれど、ここまで立派になって伯爵領や野菜たちのために動いてくれるなんて、そのときは考えもしなかった。
シュクリュや隊長たちに出会ってからますます日々が楽しく充実して、転生したと気づいたあともずっと幸せだ。
「大好きっ!」
心のそこから出た言葉とともに、私はシュクリュとともに隊長をばがりと抱きしめた。
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