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第一部 第五章 終わりの始まり

side王族 庭園の秘密と光①

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 エリザベスの手によって二匹と双子がゴロゴロと甘えるように懐かされている頃。シモン、サミュエル、ルイは国王と王妃がいる部屋に集まっていた。

「このタイミングで急に呼び立てたのは、各々理解しているかと思う」

 シモンの父、ヨーセフ陛下の言葉にそこで三人は顔を見合わせた。
 一緒に庭園を離れたユーグは部屋の外で待機しており、現在この場にいるのは王族血縁者のみとなっている。
 代表してシモンが口を開く。

「エリザベス・テレゼア嬢のことですね」
「そうだ」
「彼女の魔力のことで何かあったのですか?」

 ルイが耐えきれず尋ねた。
 客人を招いていての呼び出し。このタイミングで呼ばれたということは何かあったのだ。
 ただ、有事ではないことはわかったので必然的に思い当たるものといえばひとつであった。

 シモンが秘密の庭園へ招待すると言ったとき、ルイは異を唱えなかった。
 メリットとデメリットを考えたとき、それはきっとプラスになるだろうと思ってだったが、今になって後悔の念が押し寄せる。
 硬くなった表情のルイを見て、ヨーセフ陛下の横に座るイレネ王妃が柔らかに微笑む。

「大丈夫ですよ。問題はありません」
「そうですか。急な呼び出しであったのでいろいろ考えてしまいました」

 少し肩の力を抜き不安を吐露すると、サミュエルが少し不機嫌そうに顔をむすっとして告げた。

「ルイの言う通りです。タイミング的にエリザベス嬢のことで何かあったのかと思いました」
「彼女が心配なのですね。可愛いですか?」
「……かっ、あ、か、面白い令嬢だと思います」

 サミュエルが嫌そうに顔をしかめ口早に告げたが、その頬はわずかに赤い。
 鈍ちんサミュエルの反応にルイは嘆息すると、王妃を見つめゆっくりと笑みを刻む。

「エリザベスはとても素晴らしい令嬢です。僕は心から慕っておりますので、彼女のことならば包み隠さず教えていただけたらと思います」

 そこでシモンが静かに頷いた。

「そうですね。彼女との時間は有意義であったと思います。そんな彼女を放っておいてまで話す内容というのは気になるところです」
「ふふっ。そう思うのはもっともですが、単純に時間の問題なだけですよ。あなたたちは今日で学園に帰ってしまうことと陛下の時間が取れたのが今というだけです」
「慌てることではないが、大事なことだから私も同席したくてな」

 ルイに続き、サミュエルとシモンがそれぞれ心情を吐露し同時にイレネ王妃を見ると、王妃は穏やかに告げた。
 その後言葉を続けた陛下は、面白そうに王子たちを眺めた。つまりは、これから告げることの反応を見たくてということだ。

 悪いことではないが、何かあると含む言い方にルイは静かに二人を見返した。
 エリザベスが絡むとなると、平静でいるつもりでも感情が乱れてしまう。

「むしろ、喜ばしいことですよ」

 イレネ王妃はそんなルイに気づき、安心させるよう柔らかな声音で告げた。
 王妃の言葉は周囲の者を癒す。王妃の周囲はいつも柔らかな光がまとっているような優しい空気がまとう。
 それに押されるように、三人の王子はほっと息をついた。

 イレネ王妃は公には緑の魔法属性としていたが、本当はその上の光属性だ。
 王子たちの中に光属性がいるとの噂は、彼女が光保持者であることもひとつの理由である。

 大きすぎる力はいらぬ争いを招く。そのことから、公には公表せずこのことを知る者は少ない。
 火のないところに煙は立たぬであり、実際の保持者は王子ではなくてもやはり見事に王家の魔力保有率がダントツであった。

「それではさっそく本題をお願いします」

 息子であるシモンがそう告げると、そこに便乗してルイとサミュエルは続けた。

「ぜひ手短にお願いします」
「簡潔にしていただけるとありがたいです」

 その様子に、ヨーセフ陛下は王子たちを凝視した。仲は良いが慣れ合わずであった三人にしては、息の合ったやり取りだ。
 学園に入学し同じクラスで過ごすことで、王子たちに何かしら王族意識とは違う共通意識が生まれたのではと親心で嬉しく思う。
 それは王妃も同じようで、目尻を和らげ愛おしそうに王子たちを見つめた。

「息がぴったりですね。三人ともどうしたのですか? 悪いことではないとわかった途端、そんなに急くなんて」
「エリザベス嬢を待たせているということもありますが、ジャックとエドガーが何かしないか心配です。彼らは少しばかりいたずらがすぎるので」

 シモンが弟たちの様子が気になると告げると、ルイとサミュエルは元気に駆け回るエリザベスの姿を頭に思い浮かべ、うーんと眉を寄せた。

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