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第2章
96勇者困惑する①(アルフレッドSIDE)
しおりを挟む「お、いたいた。叫び声とかなにがあった……、うわっ…………」
聖女とレオラムを探しに来て目の前の光景に困惑し、アルフレッドはそこで言葉を詰まらせた。
驚きすぎて言葉が出ないとか久々だ。
まず、どうして聖女と第二王子がレオラムの両サイドにぴったりくっつき手を繋いでいるのか。
地下に降りた時から断末魔のような悲鳴が何度も聞こえ、異常事態だと慌てて駆けつけたら仲良く手を繋いでいるとか、困惑以外のなにものでもない。
アルフレッドの印象では、聖女はレオラムのことをよく思っていなかったはずだ。
ただでさえ聖女が熱を上げているカシュエル殿下のこともあったので、そのお相手が勇者パーティーの前ヒーラーだと知った聖女が気にしていたのは知っていた。
──というか、なんでレオラムが二人に挟まれているんだよ!!
しかも、なぜそんなにくっついているのかとか。レオラムが積極的というのも想像つかないが、まだ王子が間にいるなら構図的にはわからないでもなかった。
殺伐とした感じではないがぴったりくっついていることといい、これではレオラムを取り合っているようだ。
地上では聖女が前ヒーラーであるレオラムを連れ回しそのうえ行方がわからないと、これは大変だと非常に騒ついていた。
自分を含め、まさか仲良く手を繋いでいるなんて誰も想像もしていないだろう。
それだけでも十分驚く光景なのに、そこだけに視線を止めておくことができない異様な場所。
王城の地下にこんなところがという驚きよりも、全く想像しなかった現状とその両手を手刀で打ちたい衝動にかられながら、アルフレッドは安全確認も含め周囲に視線をやった。
レオラムたちの向こうには、黒服の黒仮面の男が墓石(なぜここに墓石?)の前に立っているし、白手袋にナイフやフォークが刺され赤い液体が散らばっており、広い部屋の両サイドにある牢屋の中には魔物がいる。
その魔物たちはなぜか隅っこに縮こまっており牢屋の鍵も閉められているようだと、どうやら異様でおかしな状況ではあるが危険はないようだと判断する。
再びレオラムとその両サイドと繋がれた手元に視線をやり、アルフレッドは視線を上げてここで一番の高貴な方へと声をかけた。
「……なんか、こっちが想像もしないことになってますけど、何があったんですか?」
「そういう君はどうしてここへ?」
「上は随分と騒ぎになってましたので、自分たちも捜索に加わりここにたどり着きました」
「それはご苦労。ミコト様も無事だ」
「そのようですね」
「騒ぎ?」
聖女がまるで他人事のようにまあいつものことよねとばかりに頷いている横で、眉間にしわを寄せるレオラム。
そういったことを気にしないタイプだと思っていたが、さすがに相手も相手だし王城という場所のこともあって気になるのだろうか。
聖女召喚のあと、18歳で冒険者をやめると決めていたと聞いてから、アルフレッドは今までと違った意味でレオラムが気になって仕方がなかった。
以前はギルドの依頼のこともありよく見ていたからこそ、今のレオラムを見ていろいろ思うことはある。
その一番の要因はレオラムの横にぴったりくっつく第二王子なのだが、ここに来て聖女が関わってきてしかも王子と同じくレオラムとの距離がずいぶん近いだとか、アルフレッドはなんだか晴れない気分に無意識に右手首をこすった。
「聖女様脱走の中で、一番盛り上がってると言う感じだな」
「盛り上がる……」
「へえー。やっぱり私がレオラムを連れ出したからじゃない? さっき噂のことも話したでしょ?」
「…………」
レオラムと親しく名前を呼ぶ聖女の言葉に、レオラムは黙り込んだ。
ますますここで何があったのか気になり、アルフレッドはそれでともう一度王子に訊ねた。
「この状況は一体?」
「そこにいるジャック・グリフィン魔物、」
「ギャアーァァ、また名を呼んだな。鬼畜王子めェェェッ」
王子が説明を始めると、黒服黒仮面が叫び出した。
地下に響いていた悲鳴はこいつかと視線を向けたが、全てが覆い尽くされているので正体不明すぎて年齢などの情報も探れず、アルフレッドは眉をしかめた。
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