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第1章
53王子と勇者①
しおりを挟むギルド長との話し合いやもろもろの確認を終わらせ階下へと降りると、護衛二人はもちろんのこと、その近くで壁に背を預けて腕を組んだアルフレッドも待っていた。
レオラムの姿を見つけると、開口一番苦情が飛ぶ。
「遅い」
「すみません」
思わず反射的に謝ってしまったが、こちらが待ってほしいと言ったわけではないことを思い直し、レオラムは眉間に皺を寄せた。
もう我慢しなくてもいいと思うと、散々絡まれたせいか冒険者時代では言えなかった本音もぽろりと出る。
「先に帰ってくれてよかったのですが」
「一緒に戻ると言っただろう」
むすりとした顔で睨まれ、レオラムは苦い顔をした。
どうしてもレオラムに絡んでいたいらしい勇者の思惑は知らないが、どうせ一過性のもの、そのうち飽きたり、勝手に納得したりして関わることもなくなるだろう。
レオラムは嘆息し、仕方なく口を開く。
「……でしたら、用事も済みましたので出ましょうか」
ギルド長との絡みのせいで来た時よりもギルド内が騒がしく、レオラムはさっさと退散しようと勇者と護衛二人を促した。
スキナーとマクベインは、相変わらず付かず離れずレオラムの護衛に徹しているので、必然的にアルフレッドと会話することになる。
「おい、あそこの店寄るぞ」
「またですか」
「お前はすぐ引きこもろうとするから、ついでに教えておいてやる」
「はあ」
「嫌なのかよ? さっきの肉も美味かっただろ?」
「確かに美味しかったですが、ずっと食べ物ばかりでお腹が」
「そういうことね。なら、あっちのデザートだ」
レオラムもそこそこ食べる方だが、燃費の違いからか勇者と食べる量が違う。
もうはち切れそうなお腹を押さえていると、まだまだ入るらしいアルフレッドは妥協案を出してきた。食べることをやめるという選択肢はないらしい。
ギルド長との関係を聞かれるかと警戒していたが、意外にもそこには触れられず、あそこの店がオススメだとかあっちこっちの店に連れ回されていた。
冒険者時代はなるべく人の視界に入らないように行動していたため、パーティーで行動すること以外は人が多い場所は避けていた。
せっかく案内してくれるのならと言われるがままに、今日だけだろうとレオラムも付き合った。
いまだに冒険者時代のこともあり違和感はあるが、勇者のこのペースに少し慣れたからだろうか、行きよりも気負いなく会話ができている。
当たり障りのない会話にレオラムの今後のことを問われたくらいで、あとは護衛二人には申し訳ないがひたすら食べており、時間がかかりながらようやく城に戻った。
気が付けば、1日曇り空だったので夕方になるとあたりはうっすらと重く暗くなるのも早く、道中も子どもたちの姿が徐々に減っていった。
王城に入っても別れるタイミングを見失い、なんとなく一緒に歩きながら会話を続ける。
「レオラムは今までどこに?」
「……殿下のそばでお世話になってます」
「ふーん。近衛が付いていることで察せるが、なるほどね……」
じろじろと見下ろされ、レオラムは眉を下げた。
会話の最中に勇者たちがどこに滞在しているのかを知ったが、促したわけでもないのに反対に問われ、カシュエル殿下の私室にいるとは言えず言葉を濁すことしかできない。
──この話題は心臓に悪い!!
カシュエル殿下の話題になると胸が騒つくし、夜のことを思い浮かべると挙動不審になりそうで、レオラムは質問されないように、現在の勇者たちのことについて話題を振る。
なぜか今のアルフレッドはパーティーから離れた自分の行動が気になるようなので、小さな動揺も見透かされそうだった。
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