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【6】聖女 服を買う

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「服自体は可もなく不可もなくといったところですし、目立たずに生活していきたいのならちょうど良いクオリティじゃないですかね」

 二人でぼそぼそと話していると、モルガナさんが腕にいっぱい服を抱えてやって来た。さらに後ろのジェイドには、靴だのバックだのを持たせている。

「ルチルちゃーん! ちょっとこれ試着してみて~!」
「あ、はーい!」

 返事をするわたしの肩でゴーシェが呟く。

「粗悪でも安くて簡単に手に入る物が選ばれて、手間と時間とお金のかかる物は捨てられた世になったんですねぇ。好みの問題ですけれど、少し寂しい気もしますね……」

 モルガナさんが選んでくれたのは、ずいぶんと可愛らしい服だった。

 茶のベストに白いシャツ。赤いスカートと金ボタンの付いたドロワーズ。ベストと同色の編み上げロングブーツ。
 でも何より可愛かったのは、フード付きの白いケープだ。お尻まで隠れるバックロングのシルエットで、ウサギの耳と尻尾が付いていた。

 ほあぁぁ……! 可愛い……! こんなに可愛い服をわたしなんぞが着てもよろしいのでしょうか……!?

 試着してみてデザインの愛らしさにちょっと照れる。

「すっごく良い! すっっごく似合ってるわよ! ルチルちゃん!」

 フィッティング・ルームから出ると、モルガナさんが胸の前で手を組んで目をキラキラさせた。
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