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【6】聖女 服を買う

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「ルチルさん、魔術文様とやらを良く見せていただいても?」

 肩に乗ったゴーシェが言う。

「うん。えーっと――……」
「服の裏に同色の糸で縫い付けてあるのがそうだよ。昔はわざと目立たせる色で表に付けてたけど、今は隠してあるのが主流かな」

 ジェイドが指さして教えてくれる。
 ゴーシェに言われるまま、服を裏返しては魔術文様を探す。店内を移動し、レディースからメンズまで。
 十枚ほど見たところで、

「ふむ。大体わかりました」

 満足したのか彼は大きく頷いた。
 洋服を畳んで元の場所に戻しているわたしに言う。

「ルチルさん。魔術文様がついていない物を買って下さい」
「え、なんで……?」

 眉をひそめれば、ゴーシェはわたしにだけ聞こえるように小声になった。

「ここにある物はあまりに質が良くない。魔術式が間違っている物や、途中で途切れて意味を成していない物もあります。おおかた魔術の基礎知識もないお針子に作業させているのでしょう。
 使っている糸も銅ならまだ良い方で、絹糸を使っている物もありました。これも、魔術の基礎が出来ていないデザイナーの仕事ですかね」

 魔力の伝導率が良いのは魔法銀ミスリルがダントツで、次が銀と銅。
 絹は蚕の思念が残っている場合があるから、魔導士が避ける素材の一つだ。

 ゴーシェはさらに続ける。

「ざっと見て理屈は大体分かりました」
「うっそ……!」
「これなら僕が上位互換品をデザインできます」

 うわー……。さすが史上最年少で宮廷付きになっただけのことはある。

「僕が制作しても構いませんし、図案を起こすのでルチルさんが作っても良いですよ」

 そっかぁ~……。

「――魔法銀ミスリルで、自分で刺繍するかぁ」

 その方が何かと応用も利くだろう。
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