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7.元聖女は辺境の地を訪れました。
192.
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翌日、私たちは騎士団の人たちがいる辺境との境の宿営地にアイザックさん、フィオナさんと戻ることになった。
「アイザック……、ステファン、フィオナ、気をつけて行ってきてください」
ヴィクトリアさんと、イザベラさんに見送られて馬車に乗る。
ここから宿営地まで1日くらい、宿営地から鬼の巣があるところまで2日くらいですか……。しばらく、お風呂も入れないですね。ジェフさんの美味しいご飯も……。
そう思っていたら、お屋敷からジェフさんが袋を持ってこっちに走ってきた。
「ライガ。これ持ってて昼に食え。若旦那様たちの分もあるからな」
「おっちゃん、ありがと」
私とエドラさんとフィオナさんが馬車に乗っているので、並走のため狼化してたライガはわっさわっさと尻尾を振っている。ジェフさんはライガにとってお父さんみたいな感じなんですかね……。
「レイラ、これ持っててくれよ」
そう言ってライガが私に預けた袋からは何だか良い匂いがした。
お肉の挟まったサンドウィッチですね!
「それじゃあ、母上、ヴィクトリア様、行って参ります」
アイザックさんはそう言って、馬車を出発させた。ステファンも馬に乗って横をついてくる。
***
「アイザック様、お疲れ様です!!」
日が暮れる頃、騎士団の宿営地に到着すると、甲冑を着た黒髪の騎士の人――副団長のジョッシュさんでしたっけ……が駆け出してきて頭を下げた。
「4日も留守にしてすまない。あれから、辺境民のテントは無事か? 鬼共に変化は?」
「巣の位置をこちらに近づけてきております。現在は馬で1日ほどの距離に移動してきております。辺境民のほとんどは領地内への非難を拒否しておりまして、念のため、より南下するように命じました。あれ以来襲撃はございません」
それからジョッシュさんは私たちを眺めて眉をひそめた。
「団長……、なぜ、ステファン様たちも一緒にお戻りなのですか?」
「――そのことで皆に話がある。――兄上からまとめて鬼共を叩く案が出た。それを実行しようと思う。班長を僕のテントに集めてくれ」
ジョッシュさんはちらっとステファンを見てから、「はい」と頷いた。
***
「まず、皆に紹介する。こちらが、5年前から行方不明なっていた僕の兄上だ」
テントに集まった班長さんたちを前にアイザックさんはステファンを紹介した。
みんなざわっとする。
「あの……ステファン様ですか……、後継ぎであられるのに、騎士団に全く顔をお見せにならなかった……」
ステファンは苦笑しながら頷いた。
「……鬼共は、屋敷の裏山に通じる道を掘っていた。僕たちを辺境付近に集中させて、そちらから領地内に入り込む気だったようだ。あいつらは、思う以上に知能が高い。道は埋めたが、また新たな策を取られる前に巣を叩き、全滅させたい」
「巣を叩くのは賛成ですが……、こちらから仕掛ければ、逃げられて終わりでは?」
ジョッシュさんが手を挙げて意見した。
「……鬼たちは、父上への恨みを全個体が持っていると考えられる。先日、辺境民を襲った鬼も兄上に異常に反応を示していた。それを利用し、誘き寄せる作戦だ」
アイザックさんは団員さんたちを見回した。
「兄上が鬼共を引き連れてくるから、それを叩いてほしい」
「アイザック……、ステファン、フィオナ、気をつけて行ってきてください」
ヴィクトリアさんと、イザベラさんに見送られて馬車に乗る。
ここから宿営地まで1日くらい、宿営地から鬼の巣があるところまで2日くらいですか……。しばらく、お風呂も入れないですね。ジェフさんの美味しいご飯も……。
そう思っていたら、お屋敷からジェフさんが袋を持ってこっちに走ってきた。
「ライガ。これ持ってて昼に食え。若旦那様たちの分もあるからな」
「おっちゃん、ありがと」
私とエドラさんとフィオナさんが馬車に乗っているので、並走のため狼化してたライガはわっさわっさと尻尾を振っている。ジェフさんはライガにとってお父さんみたいな感じなんですかね……。
「レイラ、これ持っててくれよ」
そう言ってライガが私に預けた袋からは何だか良い匂いがした。
お肉の挟まったサンドウィッチですね!
「それじゃあ、母上、ヴィクトリア様、行って参ります」
アイザックさんはそう言って、馬車を出発させた。ステファンも馬に乗って横をついてくる。
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「アイザック様、お疲れ様です!!」
日が暮れる頃、騎士団の宿営地に到着すると、甲冑を着た黒髪の騎士の人――副団長のジョッシュさんでしたっけ……が駆け出してきて頭を下げた。
「4日も留守にしてすまない。あれから、辺境民のテントは無事か? 鬼共に変化は?」
「巣の位置をこちらに近づけてきております。現在は馬で1日ほどの距離に移動してきております。辺境民のほとんどは領地内への非難を拒否しておりまして、念のため、より南下するように命じました。あれ以来襲撃はございません」
それからジョッシュさんは私たちを眺めて眉をひそめた。
「団長……、なぜ、ステファン様たちも一緒にお戻りなのですか?」
「――そのことで皆に話がある。――兄上からまとめて鬼共を叩く案が出た。それを実行しようと思う。班長を僕のテントに集めてくれ」
ジョッシュさんはちらっとステファンを見てから、「はい」と頷いた。
***
「まず、皆に紹介する。こちらが、5年前から行方不明なっていた僕の兄上だ」
テントに集まった班長さんたちを前にアイザックさんはステファンを紹介した。
みんなざわっとする。
「あの……ステファン様ですか……、後継ぎであられるのに、騎士団に全く顔をお見せにならなかった……」
ステファンは苦笑しながら頷いた。
「……鬼共は、屋敷の裏山に通じる道を掘っていた。僕たちを辺境付近に集中させて、そちらから領地内に入り込む気だったようだ。あいつらは、思う以上に知能が高い。道は埋めたが、また新たな策を取られる前に巣を叩き、全滅させたい」
「巣を叩くのは賛成ですが……、こちらから仕掛ければ、逃げられて終わりでは?」
ジョッシュさんが手を挙げて意見した。
「……鬼たちは、父上への恨みを全個体が持っていると考えられる。先日、辺境民を襲った鬼も兄上に異常に反応を示していた。それを利用し、誘き寄せる作戦だ」
アイザックさんは団員さんたちを見回した。
「兄上が鬼共を引き連れてくるから、それを叩いてほしい」
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