188 / 217
7.元聖女は辺境の地を訪れました。
186.
しおりを挟む
翌日、私はステファンとライガとお屋敷の裏山を見に行くことになりました。
「レイラにはこいつなんかちょうど良いかな。小柄だし……」
馬小屋でステファンがそう言って連れてきてくれたのは、マルコフ王国に置いてきたクロに似た黒色の小柄な馬でした。ステファンと私は馬に乗って、ライガは走りで裏山に向かいます。
ステファンは昨日まで念のため吊ってた腕の包帯は取って、普通に馬に乗っています。
「――お前、腕治ったのかよ。昨日荷物持てねぇって言ってたじゃねぇか」
「今日になったら調子良くなってたんだよ。重いものは持てないけどこれくらいは平気だ」
何となくぶすっとした言い方のライガに、ステファンは軽く笑って返した。
お屋敷の裏の原っぱを抜けて真っ直ぐ行くと、木々が茂った森が見えてきました。その上には山が広がっていて、そこから川が流れてきてます。山の上には屋根みたいな大きい木が生えてる。
そこでいったん馬を降りて、馬を川沿いにある小さい馬小屋につないで、少し早めのお昼を食べることにしました。ジェフさんがお肉を挟んだサンドウィッチを作ってくれたんですよね!
「ここからは歩いて登るよ」
もしゃもしゃパンを食べながらステファンが言います。
「鬼がこっちの山の方から来るとして……どこが怪しいかね」
「やっぱり川沿いかな……。洞窟とかもあるし……」
そうでした。鬼が山側から来るかもしれないから、怪しそうな場所を捜しに来たんでしたね。パンを飲み込むと、「行きましょう」と杖を握って歩き出します。
元気よく出発したものの……草を掻き分けて、傾斜のある道を登って行くに連れて息が切れてくる。そういえば、魔法都市を出てから馬車移動が多かったので、歩いて山登りは久しぶり……。
立ち止まって水を飲んで「はぁ」と息を吐いて立ち止まると、ステファンが「大丈夫?」と振り返った。先を行っていたライガが戻ってきて、呆れたような声で言う。
「屋敷にいて良かったのによ……」
「まだまだ大丈夫ですよ!」
そう言って立ち上がると、ライガがポケットから何かを出した。
「そうだ、これやるからやる気出せよ」
それは、手のひらくらいの大きさの黒っぽい甲冑を着てるような見た目の虫だった。かっこいい鹿の角みたいなのが生えてる。よく森で見かける甲虫に似ているけど、こんな大きいの見たことがない。
「何ですかそれ! 角が恰好良いですね……」
「小鬼兜だよ。このへんの森でしか見たことない。でかくて恰好良いだろ」
「お前……道中そんなの獲ってたのか。子どもじゃないんだから」
ステファンが呆れたように言った。
「いや、だって、いたから……」
耳を掻いて、ライガは私に言った。
「上の方には、もっとでかい鬼兜もいるぜ!」
「もっと大きいのもいるんですか!」
私はライガからもらった小鬼兜をローブのポケットに入れて、立ち上がった。
「レイラにはこいつなんかちょうど良いかな。小柄だし……」
馬小屋でステファンがそう言って連れてきてくれたのは、マルコフ王国に置いてきたクロに似た黒色の小柄な馬でした。ステファンと私は馬に乗って、ライガは走りで裏山に向かいます。
ステファンは昨日まで念のため吊ってた腕の包帯は取って、普通に馬に乗っています。
「――お前、腕治ったのかよ。昨日荷物持てねぇって言ってたじゃねぇか」
「今日になったら調子良くなってたんだよ。重いものは持てないけどこれくらいは平気だ」
何となくぶすっとした言い方のライガに、ステファンは軽く笑って返した。
お屋敷の裏の原っぱを抜けて真っ直ぐ行くと、木々が茂った森が見えてきました。その上には山が広がっていて、そこから川が流れてきてます。山の上には屋根みたいな大きい木が生えてる。
そこでいったん馬を降りて、馬を川沿いにある小さい馬小屋につないで、少し早めのお昼を食べることにしました。ジェフさんがお肉を挟んだサンドウィッチを作ってくれたんですよね!
「ここからは歩いて登るよ」
もしゃもしゃパンを食べながらステファンが言います。
「鬼がこっちの山の方から来るとして……どこが怪しいかね」
「やっぱり川沿いかな……。洞窟とかもあるし……」
そうでした。鬼が山側から来るかもしれないから、怪しそうな場所を捜しに来たんでしたね。パンを飲み込むと、「行きましょう」と杖を握って歩き出します。
元気よく出発したものの……草を掻き分けて、傾斜のある道を登って行くに連れて息が切れてくる。そういえば、魔法都市を出てから馬車移動が多かったので、歩いて山登りは久しぶり……。
立ち止まって水を飲んで「はぁ」と息を吐いて立ち止まると、ステファンが「大丈夫?」と振り返った。先を行っていたライガが戻ってきて、呆れたような声で言う。
「屋敷にいて良かったのによ……」
「まだまだ大丈夫ですよ!」
そう言って立ち上がると、ライガがポケットから何かを出した。
「そうだ、これやるからやる気出せよ」
それは、手のひらくらいの大きさの黒っぽい甲冑を着てるような見た目の虫だった。かっこいい鹿の角みたいなのが生えてる。よく森で見かける甲虫に似ているけど、こんな大きいの見たことがない。
「何ですかそれ! 角が恰好良いですね……」
「小鬼兜だよ。このへんの森でしか見たことない。でかくて恰好良いだろ」
「お前……道中そんなの獲ってたのか。子どもじゃないんだから」
ステファンが呆れたように言った。
「いや、だって、いたから……」
耳を掻いて、ライガは私に言った。
「上の方には、もっとでかい鬼兜もいるぜ!」
「もっと大きいのもいるんですか!」
私はライガからもらった小鬼兜をローブのポケットに入れて、立ち上がった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
3,603
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる