161 / 217
6.元聖女は魔法都市でエルフに会いました。
159.
しおりを挟む
エドラさんの「私もついて行こう」という言葉に、私は思わず胸の前で手を組んだ。
「エドラさん、ついてきてくれるんですか! ありがとうございます!」
エルフである彼がついてきてくれるっていうのは、とっても心強く感じる。
「――どういう風の吹き回しだ、エドラヒル」
オリヴァーさんは驚いたように聞いた。
最初話したときは、ついてきてくれるなんて感じじゃなかったですもんね。
「いずれ、里には戻ろうと思っていた」
エドラさんはぶっきらぼうに答える。
「行くのを止めろと言っても、そいつは行くと言うしな。エルフと魔族の血が入った子どもが現れて、里の連中がどんな反応をするのか見てみたい」
それに、とステファンを見て頷く。
「イザベラの息子が私のところに来たのも何かの縁だろう」
***
食事を終えて屋敷に戻ると、オリヴァーさんが客間で食後のお茶を淹れてくれた。
「僕の母と、エドラヒルさんは親しかったんですか?」
「イザベラとエドラヒルは一緒に魔法植物の研究をしててな。親しかったというより――何というか、まぁ」
オリヴァーさんは言い辛そうに白髪頭をぽりぽり掻いた。
「恋人同士じゃった」
ぶっとステファンが音を立ててお茶を噴きだした。
「――は?」
「長いこと交際しておったがの、エドラヒルは年をとらんし……、色々あって、イザベラはマーゼンス殿との見合い話を受けたんじゃ」
「……」
何とも言えない顔で黙り込むのステファンの横で、ライガが「へぇ」と驚いたように呟いた。
「ステファンのお袋さんがあのエルフと……、何か変な感じだなぁ。あいつ、俺たちとそんなに年変わらなく見えるのになぁ」
ライガは「なぁ」とステファンを見るけど、ステファンは無言でお茶を一気に飲んだ。
気まずい沈黙が流れる。
オリヴァーさんが、「まぁ」と話題を変えた。
「レイラ、エドラヒルを庭から連れ出してくれて感謝するよ。あいつが自分から何かにやる気になるのは久しぶりだ。最近塞ぎこんでおったからの」
「いえ、私は特に何も……。こちらこそ、エドラさんには耳も治してもらってますし……」
私は耳のことを思い出して、身を乗り出した。
「そうなんです! 耳、耳っぽく戻ってました。エドラヒルさん凄いんですね」
「そうじゃ、もう大方戻ったという話でな。レイラ、明後日、治療院の予約をとったから、入院の準備をしておきなさい」
入院……。そうでした。耳をつけるのに、手術がいるんでしたっけね……。
私は血の気が引いて行くのを感じた。
「そんな青い顔せんでも大丈夫じゃよ。数日入院すれば、長い耳に戻れるぞ」
オリヴァーさんの励ましに、私は「頑張ります……」と答えた。
2日後、私は寝間着とかをまとめた荷物を持って、ステファンとライガに送ってもらって、
街の治療院を訪れた。
「……来たか」
緊張しながら建物の中に入ると、エドラさんが立っていた。
何だか顔が青白くて元気がなさそうだ。
エドラさんのが病人みたい。
「どうしましたか?」
聞くと、エドラさんは苦笑した。
「一昨日、肉を食い過ぎてな。昨日は寝込んでいた」
……お肉食べ過ぎると体調悪くなっちゃうんですかね。
そういえば、ぱくぱく食べてましたもんね……。
青い顔のエドラさんを見て、逆に緊張が解けた。
奥の部屋で白衣を着たお医者さんに会う。
治療師さんとは別に、手術をしてくれるのはこのお医者さんって人みたい。
エドラさんが白衣の先生に、瓶に入った私の耳を渡した。
その人は物珍し気にそれを見ながら呟いた。
「――エルフの耳をくっつけるのは初めてだな」
初めてって……。
また緊張してきた私に、白衣の先生はにっと笑って言った。
「まぁ、大丈夫。すぐ終わるよ。とりあえず着替えてきて、薬飲んでね」
言われるがまま、案内された部屋で着替えて、もらった薬を飲む。
だんだん眠くなってきて……、治療師さんたちに案内されるがまま、ベッドに横になった。
……そして、目が覚めると。
「レイラ! お疲れ様!」
ステファンの声がぐわんぐわん頭に響く。なにこれ!
思わず私は耳を押さえた。――と同時に、ぱたぱたっと耳が動いた。
「おぉ、それ動くのか、すげぇな」
ライガの感心したような声がまた頭に響いた。
「レイラ、ほら、きちんとくっついてるよ」
ステファンが差し出してくれた鏡を見ると、私の髪の間から、エドラさんみたいな長い耳が生えていた。
「エドラさん、ついてきてくれるんですか! ありがとうございます!」
エルフである彼がついてきてくれるっていうのは、とっても心強く感じる。
「――どういう風の吹き回しだ、エドラヒル」
オリヴァーさんは驚いたように聞いた。
最初話したときは、ついてきてくれるなんて感じじゃなかったですもんね。
「いずれ、里には戻ろうと思っていた」
エドラさんはぶっきらぼうに答える。
「行くのを止めろと言っても、そいつは行くと言うしな。エルフと魔族の血が入った子どもが現れて、里の連中がどんな反応をするのか見てみたい」
それに、とステファンを見て頷く。
「イザベラの息子が私のところに来たのも何かの縁だろう」
***
食事を終えて屋敷に戻ると、オリヴァーさんが客間で食後のお茶を淹れてくれた。
「僕の母と、エドラヒルさんは親しかったんですか?」
「イザベラとエドラヒルは一緒に魔法植物の研究をしててな。親しかったというより――何というか、まぁ」
オリヴァーさんは言い辛そうに白髪頭をぽりぽり掻いた。
「恋人同士じゃった」
ぶっとステファンが音を立ててお茶を噴きだした。
「――は?」
「長いこと交際しておったがの、エドラヒルは年をとらんし……、色々あって、イザベラはマーゼンス殿との見合い話を受けたんじゃ」
「……」
何とも言えない顔で黙り込むのステファンの横で、ライガが「へぇ」と驚いたように呟いた。
「ステファンのお袋さんがあのエルフと……、何か変な感じだなぁ。あいつ、俺たちとそんなに年変わらなく見えるのになぁ」
ライガは「なぁ」とステファンを見るけど、ステファンは無言でお茶を一気に飲んだ。
気まずい沈黙が流れる。
オリヴァーさんが、「まぁ」と話題を変えた。
「レイラ、エドラヒルを庭から連れ出してくれて感謝するよ。あいつが自分から何かにやる気になるのは久しぶりだ。最近塞ぎこんでおったからの」
「いえ、私は特に何も……。こちらこそ、エドラさんには耳も治してもらってますし……」
私は耳のことを思い出して、身を乗り出した。
「そうなんです! 耳、耳っぽく戻ってました。エドラヒルさん凄いんですね」
「そうじゃ、もう大方戻ったという話でな。レイラ、明後日、治療院の予約をとったから、入院の準備をしておきなさい」
入院……。そうでした。耳をつけるのに、手術がいるんでしたっけね……。
私は血の気が引いて行くのを感じた。
「そんな青い顔せんでも大丈夫じゃよ。数日入院すれば、長い耳に戻れるぞ」
オリヴァーさんの励ましに、私は「頑張ります……」と答えた。
2日後、私は寝間着とかをまとめた荷物を持って、ステファンとライガに送ってもらって、
街の治療院を訪れた。
「……来たか」
緊張しながら建物の中に入ると、エドラさんが立っていた。
何だか顔が青白くて元気がなさそうだ。
エドラさんのが病人みたい。
「どうしましたか?」
聞くと、エドラさんは苦笑した。
「一昨日、肉を食い過ぎてな。昨日は寝込んでいた」
……お肉食べ過ぎると体調悪くなっちゃうんですかね。
そういえば、ぱくぱく食べてましたもんね……。
青い顔のエドラさんを見て、逆に緊張が解けた。
奥の部屋で白衣を着たお医者さんに会う。
治療師さんとは別に、手術をしてくれるのはこのお医者さんって人みたい。
エドラさんが白衣の先生に、瓶に入った私の耳を渡した。
その人は物珍し気にそれを見ながら呟いた。
「――エルフの耳をくっつけるのは初めてだな」
初めてって……。
また緊張してきた私に、白衣の先生はにっと笑って言った。
「まぁ、大丈夫。すぐ終わるよ。とりあえず着替えてきて、薬飲んでね」
言われるがまま、案内された部屋で着替えて、もらった薬を飲む。
だんだん眠くなってきて……、治療師さんたちに案内されるがまま、ベッドに横になった。
……そして、目が覚めると。
「レイラ! お疲れ様!」
ステファンの声がぐわんぐわん頭に響く。なにこれ!
思わず私は耳を押さえた。――と同時に、ぱたぱたっと耳が動いた。
「おぉ、それ動くのか、すげぇな」
ライガの感心したような声がまた頭に響いた。
「レイラ、ほら、きちんとくっついてるよ」
ステファンが差し出してくれた鏡を見ると、私の髪の間から、エドラさんみたいな長い耳が生えていた。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
3,602
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる